2章ー迷宮【ガルダ】⑥…『恩恵』昇天の力
「聞けマナ、お前だけがこの状況を打破出来る可能性があると分かった!」
「えっ!私!?」
驚くマナに惶真は先程の『剣が教えてくれた事を告げた。
それはマナの持つ固有魔法を使う事だった。
「それって【恩恵・昇天】を使うって事、オウマ」
「ああ、それしかゾンビ共を消せないらしい」
確かにマナも自分の”昇天”ならどうにかできるかもと思った。
でもなぜだろうか?
マナは不思議となんだか嫌な予感がしていた。
とりあえずどうすればいいのか聞く。
「それってどうするの?」
「『剣』によればあいつらゾンビは不死の属性を持っており、魂が身体に憑いている限り身体を損傷しても倒せないらしい。しかもある一定の損害が出ると別のゾンビと融合するとも言ってる。だからアレを倒すには魂を浄化させ”昇天”させるしかないみたいだ」
「昇天……つまり私の”恩恵”を使うって事だよね?」
「そうだ。マナにしか出来ないって事だ。さあ、やってくれ!今直ぐに、さあ早く!」
惶真に肩を掴まれ自分の”恩恵・昇天”を使うように急かされる。
必死さのある焦りが籠っている。
確かに今はフェンリルがゾンビを牽制しブロックしてくれている。
どうやらゾンビは一番近くの存在に寄るようだ。
(私にしかできない事、なんだ……しかもオウマが私を頼ってる。ならっ!)
惶真に頼られている!そう思い覚悟を決めるマナは初めての【恩恵・昇天】の行使に挑む。
「わかった!私頑張る!けど、そのね…」
やると決めたがマナはどこか上目遣いで惶真にお願いをする。
「…どうした?」
「私ね、自分の恩恵を使うの殆ど初めてだからね。そのね…あの時にカナにしたみたいに”共鳴”してほしいなぁ」
マナが言う”共鳴”とは村で行ったカナによる”再生”魔法の事だ。
あの時は魔力量がまだ不十分で魔法の扱いも不足分があった。
その為魔法行使のサポートと惶真の魔力をカナの魔力に転換する事だった。
あの時にマナはいいなぁと思っていたので、この絶好の機会を活かそうと思ったのだ。
「そうだな。いいだろう。それじゃ早速やるぞ」
「やった♪」
惶真はマナの後ろに回るとその背に右手を当てる。
マナはその背から惶真の手の温もりを感じる。
そして共鳴による惶真の黒い魔力が光となってマナの身体から発せられる赤みのある黒い光と交わる。
マナははっきりと惶真の魔力の光を感じ取った。
今なら自分の”恩恵”をうまく使える!
はっきりとどうすればいいのか。効果が理解できた。
間違いなくこのゾンビ群を倒す事が出来る。そう感じ取った。
マナはクロスレイピアを前に翳す。そしてを目を閉じる。
マナは己の魔力と共鳴によって流れてくる惶真の魔力を混ぜ合わせる様に開放する。その魔力の光はまるで螺旋の様だ。
解放と伴いマナの前に、まるで光の天使が現れた。
光の天使は何処か女性を象っている。
「綺麗なのぉ」
その天使の姿にカナがその美しさを零す。
光の天使はその両手を祈るように天に捧げる。
ブロックしていたフェンリルもゾンビから距離を開ける。
「よぉし!気味の悪いゾンビ達、この力で成仏しなさい!”昇天”解放!!」
キリッとした目を開けると発動の宣言を上げる。そして、天使の祈りの手から”昇天”の光をゾンビ群に放射する。
マナの放った”昇天”の光がゾンビ群に命中する。その光に触れたゾンビ達はあっと言う間にまるで砂のように消えて行く。
「凄いな…」
思わずと言ったようにマナに魔力を流し込みつつそう感想を零す惶真。
その惶真だが額に汗が浮かんでいた。
いま惶真は殆どの魔力を消費していた。
魔法の発動でも大量の魔力を消費した上に、今の一撃でも多くの魔力を持っていかれていたのだ。
気力で何とか持たせる。
だが、
「くっ!?」
「えっ、オウマ!?」
完全に魔力が枯渇し膝を付く惶真。
それに伴い”昇天の光”が放射を終えた。
光の天使も消失する。
惶真の魔力の殆どを持っていくほどの発動コスト。
惶真は、マナだけでこれを発動するには魔力が足りなさ過ぎだと思う。
膝を付き息が乱れながら”空間魔法”で自分の時空間に接続し、その中から精神回復薬と魔晶水を急ぎ取り出すと震える手で蓋を開けようとする。
そんな二つの瓶をマナとカナがそれぞれ震える惶真の手から取ると蓋を開ける。そして惶真の口元に運ぶ。声に出すのも億劫だったので心の中でサンキュと言い差し出された二つを飲み干す。
精神回復薬と魔晶水を服用した事で活力と魔力が回復した。
「あっ、はぁ、マシになったな。サンキュなマナ、カナ」
「はぁ~良かったぁ。もう心配させないでって言ったのに、もう」
「よかったのです。本当にビックリしたの」
「すまんな。まさか俺の持ってる魔力を根こそぎ持っていかれるとは思ってなかったからな。想定外だなまったく」
「うぅ、なんだかゴメンねオウマ。私のせいだもんね」
「気にするな。必要な事だったんだ。それよりどうなった?」
”昇天の光”によってゾンビの数は半分以上減っていた。
しかしそれでもまだ半分存在している。
惶真はどうするか考える。
流石に回復したとは言え、共鳴し魔力提供させるほど回復出来ていない。
”昇天の光”をもう一度撃つことは難しいだろう。
マナ個人の魔力では足りないと”心眼”で確認する。
「どうしよう…」
「大丈夫だ、マナ。マナならいける。多分”昇天の光”を武器に纏わせることも出来るんじゃないか?」
「えっと…うん、できるけど?」
まさかと思いつつ確認をするマナ。
「よしっ、あとはマナに任せる。大規模発動させないならマナの魔力残量でも行けるさ」
えぇ~と嫌そうにする。しかしゾンビはマナにしか倒せないのだ。マナに頑張ってもらうしかないだろう。
うぅ、と唸るマナ。
先程は後方からの砲撃だったが。剣に”昇天の光”を纏わせるとしたら攻撃手段は自ずと接近戦になる。つまりゾンビに近付く事になる。やはりそれは躊躇してしまうのだった。
「ね、ねぇ、オウマ?惶真は共鳴した力を使えるんでしょ?なら……ってあれ?」
マナは1人は心細いから惶真にも一緒にと声を掛けようとした。しかしその場に惶真の姿はなかった。カナの姿もである。
何処にと探すとフェンリルン背に乗りながら惶真とカナの2人が閉じている入口の所まで移動していた。
「たのむぞ~マナ、がんば~」
「えぇー!カナも!」
「アハハ、頑張ってマナ」
そんな~と言いつつ涙目になりつつマナは剣に”昇天の光”を付加させる。
そして「うわぁ~ん!」と叫びつつゾンビ群に挑んでいく。
一振り剣が当たるだけでゾンビ達は”昇天の光”によって浄化され砂になり消えて行く。
「がんばれー!カッコいいぞぉマナぁ!」
「ファイトなのぉマナぁ!」
「応援なんて良いから手伝ってよー!!」
安全圏に下がっている惶真達の応援の声に対して叫ぶマナ。しかし惶真とカナ、フェンリルは動かない。
ゾンビの相手が出来るのはマナの”昇天”の力だけだから。
そう理由で手を出さない。
決して近寄りたくないからではない…断じて…。
「薄情者ぉ~!!」
叫びながら次々と浄化し消滅させていくマナ。
そして数分の後、全てのゾンビを撃破に成功した。
気持ち悪いゾンビの相手と恩恵の行使に消費し魔力が枯渇しかけた事によりマナはグロッキーの状態になったが。
ゾンビが全滅した事で、この階の入り口と出口の扉が開いた。
「ぐてー…」
「だ、だいじょう、ぶ…なの、マナ?」
「ぐてー…もう無理ィ…」
グロッキーの幼女に戻っているマナ。
惶真は、あはは、と苦笑した後、マナはフェンリルの背に預けた。
流石にこれ以上は負荷を掛けられないだろうと。
残りは10階層。
惶真とカナだけでも十分行けると履んで進む。
そして4日にて迷宮ガルダの最下層に到着した。
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