2章ー⑪:【獣氣】と【自然力《エナジー》】について…

惶真の”獣氣”に対する問いにヴァニラに代わりリムルが答える。

ヴァニラはいじけた様にブツブツ呟いていた。

惶真は気にせずリムルの話に耳を傾ける。


「それですね。まず”獣氣”とは私達獣人族の者が会得出する事が特別な技能スキルなのです」

「ふむ、特別、か……つまり、人間では会得できない技能なのか?」

「いえ。人間の人にも習得は可能と言えますわ。ただ、“獣氣”を操るには“自然力エナジー”を身にしていることが条件となります」

「「「“自然力エナジー”?」」」


初めて聞いた言葉に惶真、マナ、カナの3人が聞き返す。

リムルは“自然力エナジー”について話した。


自然力エナジー”とはこの世界にある純粋な自然界に存在する4つの属性の精霊の加護を用いる事で超常的な能力を発揮することができるようになる元素力のことであるらしい。

言うなれば、この力は精霊の力の行使と同義なのである。

リムルやヴァニラの種族である獣人族は”地”の”自然力エナジー”の源を保有している。

”地”の力は大地の加護をその身に纏うもので身体機能を爆発的に高めることができるようになるのである。

契約した精霊の源によって発現できる力も異なるのである。

契約して得られる源は通常一つなのだ。

最も例外はいるらしい。

例えば…【エルドラ】の街のギルドにいたエルフと呼ばれる人間の女性。

彼女は、エルフのみが所有している”精霊回廊”の力によって直接、精霊そのものから源力を引き出すことができる。故に複数の属性の精霊魔法を扱うこともできるのだ。


あと、精霊は自然を愛する存在が故に、魔力の源である”魔素”を嫌っているらしく、自然力エナジーの行使には魔力でなく生命力たる体力を消費するのである。

莫大な能力の代償に、能力の行使後、体の負荷が大きく生じる。

魔力を用いる技能は精神を削る。

中には己の限界を超えた力を引き出す際などは精神だけでなく体力も消費する。


「なるほど……」

「私達獣人の民は生まれつき魔力を持たず生まれるのです。だから魔力による魔法行使を行う事はできないのです。嘗ての民は己が身を守る手段として自然力エナジーを用いる事にしたそうです。それこそが”獣氣”なのです」

「……あれ?でも、ヴァニラからは魔力を感じるよ?」

「…そうなの。ヴァニラから感じるの。どうしてヴァニラはあるの?」


獣人族は魔力を持たない。持っていても微々たるもの、そう教えられたマナとカナだったが、同じ獣人族であるヴァニラからは魔力を感じ取っていたのだ。元々魔力の源である魔素をその身に取り込む事ができる魔人族の2人は魔力感知の能力に秀でている。それ故にどうして?と不思議そうである。

その質問はヴァニラやリムルでなく惶真が答えた。


「おそらく、それはコイツが人間と獣人族のハーフだからだろうな。そうだろ?」

「(名前…うぅ……)」

「ええ、この子が魔力を持っているのは異種族間で生まれた子供だからでしょうね。実際、私は魔力をほとんど持っていませんから。この子は自然力エナジーによる”獣氣”だけでなく魔力行使の可能性も持っているのです。それからこの子には獣人族特有の”地”の自然力エナジーだけでなく”風”の自然力エナジーも持っていますの」

「”獣氣”そのものは自然力エナジーさえあれば行使可能という事か……エルフのような”精霊回廊”なんて条件もないのであれば会得可能だな……」


特別な条件もないのであれば会得しておくのに支障はないと、惶真は”恩恵:変性”を発動した。そしてヴァニラから”自然力エナジー【風・地】”と”獣氣”をコピーした。

どの程度体力を消費するかは分からないが今の惶真は怪物化したチートステータスを持っているので問題ないだろう。それに惶真の”恩恵”は魔力を多大に消費する故に魔力以外の消費法があるのはありがたいと言えた。


試しにと惶真はテーブルに置いてあったリンゴに似た果物を手にすると軽く摘まむ様に手にする。

突然の行動をした惶真に不思議そうな表情のマナ、カナ、ヴァニラ、リムルの4人。

惶真は手に”獣氣”を展開する。青白いオーラが果物を摘まんでいる右手から溢れる。

惶真が”獣氣”を使っていると気付いたヴァニラとリムルは「なんで!?」「どうして!?」と有り得ないと困惑した表情を浮かべる。

そんな二人を気にせず惶真は「フッ!」と一呼吸したと同時に摘まんでいた果物が圧迫した様に消えた。

握りつぶしたのでなく圧縮して消えたのである。


唖然とするヴァニラ、リムルの親子。

凄いと目を輝かせるマナ、カナの双子姉妹。

今の”獣氣”の感覚に「フム」と納得した惶真。体力もソコソコの減りである事も確認できた。

あとは実戦で試せばいいか。明日から挑む迷宮でと考える惶真。


呆然としていたヴァニラが「はっ!」と惶真に問う。


「どうして!?どうしてお兄さんが”獣氣”を使えるの!?」

「どうしてって…使えるからだろ?」


何を当たり前のことを聞くんだという風の惶真。


「オ、オウマさんは自然力エナジーを持っていらっしゃったのですか?今までそのような感じはしませでしたが?」

「ああ、今、習得した。リムルの説明が分かり易かったからな。扱いやすかったぜ。まあ今の感覚をさらに極めるだけだな」

「ありえませんわ……」


ありえないもので目の当たりにした眼を惶真に向ける獣人親子。

自然力エナジー”による”獣氣”は獣人の血を持つものでも扱うのに数週間は掛かるはずなのだ。ヴァニラも”獣氣”の扱いには1週間は必要だった。

それを会得して直ぐに、しかも本人は至極簡単だったと言う。

技能習得速度に加え、技能の扱いに震えが走る。

そんな獣人親子の様子を不思議がる惶真と、「さすがオウマ!化け物じみてるわ!」「さすが御主人様なの!」と声にするマナ、カナ。

マナとカナも普段から惶真のチートぶりを間地かで見続けてそれが普通という感覚になっていた。


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おまけ~

【クロノカード】

所有者:此花惶真コノハナオウマ

種族:人間(異世界人) 年齢:17歳 性別:男

職業:冒険者【ランク『赤』】 レベル:4

体力:2000

魔力:3400

筋力:1480

耐性:1780

俊敏:1720

魔防:2520

≪固有技能≫

『恩恵』【変性…周囲の人間のステータスや技能を自分のものに変換できる。ステータスは一人1回のみ。また自身や、自身が触れたモノの情報を改竄できる】【変成…魔物の存在構造を変化させることができる。魔力消費が高い】

≪特殊技能≫

『戦闘技能』:剣術:金剛(防御上昇技能〉:剛力(筋力上昇技能):瞬歩(俊敏上昇技能):獣氣(身体機能上昇技能『体力消費』):威圧

『魔法技能』:魔法適正【黒】:耐魔力【全属性】:詠唱破棄:魔力放出:魔力付加:精霊魔法(”精霊回廊”がない為使用不可):空間魔法:魔力回復:封印魔法

『補助系技能』:言語理解(古代語理解不可):気配感知:気配遮断:心眼(相手の心を覗きステータスを確認できる):能力付加:能力拡張:念話:感覚共有(対象者【マナ・リア、カナ・リア】):自然力エナジー【風・地】

『天職系技能』:鑑定【魔物鑑定/魔石鑑定/食糧鑑定/武器鑑定】:料理:細工

『所有武器』…魔剣インテリジェント・ソード(能力:意思疎通/周辺索敵/情報収集)


ヴァニラ・ノーム

種族:獣人(?) 年齢:13歳 性別:女

職業:?  レベル:2

体力:40

魔力:60

筋力:80→”獣氣”解放時:160

耐性:30→”獣氣”解放時:60

俊敏:80→”獣氣”解放時:200

魔防:20

≪固有技能≫

『―』

≪特殊技能≫

『戦闘技能』:獣氣(身体機能上昇技能『体力消費』):剛脚:駿脚:飛空脚

『魔法技能』:―

『補助系技能』:自然力エナジー【風・地】:擬装:言語理解

『天職系技能』:―



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