2章
迷宮大陸編…白黒兎親子との出会い
2章ー①:港町【クーリィ】…酒場で出るのは酒だよね…えっ?”コレ”人の飲めるものじゃない?
潮の香りのする場所。目の前に広がるは青い海。
俺はエルドラの町から二日でこの港町『クーリィ』に辿り着いた。
この港から出ている船に乗ってこの大陸とは別の大陸に渡る。
冒険を実感出来てきた事もあり、思った以上の高揚感があった。
そんな俺に、小さい同行者の女の子のマナがキラキラとした瞳で尋ねてきた。
「ねえねえ、オウマ!早く船に乗ろぉ!私楽しみだよ!」
「おいおい落ち着けよ。いきなりは無理だぞ。まず船があるかを確認しなきゃなんないからな」
まずは迷宮大陸まで運んでくれる船を探さないといけないからな。
見た目的に子供の様に燥ぐマナに苦笑していると、俺はもう1人の同行者の女の子であるカナに視線を向けた。
「カナは、楽しみじゃないのか?」
「えっ?ううん、楽しみなの。でも…」
何やら浮かなそうな表情を浮かべているカナに、どうしたと聞いた。
「船なんて初めてだから、緊張してるだけなの」
「そうなのか?まあ、安心しろ。ここにいるのは、そういった経験のない初心者だ。だから気にし過ぎるな。今からだと、ばてるぞ」
繊細な子だなカナは、少しはマナを見習えばいいのに。
「むぅ!オウマ、何か失礼な事を考えてたでしょ!」
意外と感がいいな。まあ、無視するけど。
+
俺達は船場へとやってきた。
乗れる船があるか確認しに来たのだ
俺達が入ってきた瞬間、怪訝そうな視線が俺達に向いた。
中には、鎧を着た者達が何人かいた。
おそらく冒険者と思われる人達だろう。
「おいおい、ガキと子供だけとか、海を舐めてやがんなァ」
「あんな子供だけでかぁ。どこかに親がいるんじゃねえ?」
「…なかなか綺麗な顔をしてるし、綺麗な服だ。冒険者ではないだろ」
「…オウマ?」
「気にするな。無視してろ」
不安そうなマナとカナにそう言うと受付の順番が来たので受け付けてもらう。
受付の人は如何にも海の男と言う風貌な人だ。
「次は坊主達か、何処に向かう船を望でい?」
「俺達は、迷宮大陸って所に行く船を望んでいる」
俺がそう言うと周囲が騒がしくなった。特に先程の冒険者の男達がだ。
「ほお、何しに行くんだい?坊主、冒険者か何かか?」
俺は、受付の男に自分のクロノカードを見せた。これがあれば一発だろう。
「ふむ、確かに冒険者の様だな。ランクは…まだ、取ったばっかりか」
「ああ、数日前に取ったばかりだ。実力を上げる為、迷宮大陸に向かうつもりだ」
能力はチートだが、戦い方については素人の様なものだからな。
受付の男は俺から傍にいる、明らかに冒険者とは言えない子供の2人に視線を向けた。
「……そっちのお嬢ちゃん達は?一緒の連れかい?」
「ああ。冒険者じゃないが、それなりに戦えるはずだから、気にしないでくれ」
俺がそう言うと受付の男は「ほお、こんな子供がかぁ」と驚いた表情を浮かべ、マナとカナを見た。
その視線に2人は、ビクッとすると俺の後ろに隠れようとする。
その様子に男はこう思っているんだろう、疑わしいと。
俺は、気にせず、寧ろ、俺の後ろに隠れた2人に冷たい視線を送った。「お前等、何しに行くか分かってんのか?守るつもりねえぞ!」と。
「「!!」」
その俺の視線に、マナとカナは、おずおずと俺の後ろから出てきた。
御互いに目を合わせ頷いた。
「…うん。もう大丈夫!頑張るよ!」
「…はい。もういけるの!頑張るの!」
「ふっ、それでいい。…それで、乗れる船はあるのか?」
俺は2人のやる気の確認を終えた後、改めて受付の男に聞いた。
「…まあいいか。あと、1時間程したら、迷宮大陸への船が出るぜ」
「なら、それに乗る手続きを頼む」
「お願いしまぁすぅ!」
「お願いしますなの!」
「元気な嬢ちゃん達だ。OK、変わった子供達だが受付しておくぜ。まあ、気を付けてな」
こうして、俺達は船に乗る受付を済ませた。
何だか鬱陶しい視線を向けてくる輩もいたが…
まあ、一応覚えておくか…
++
受付後、出港までまだ1時間あるので、今のうちに食事をしようという事になった。
この港町には酒場のような場所しかない。
取り敢えず一番良さそうな所を“剣”に探ってもらいそこに入った。
この“剣”には、意思疎通能力の他、探知能力も得たようだ。
本当に便利な剣だな。
“キョウシュクデス”
店に入ると、やはり視線を集める。
ガキが何しに酒場に来やがった、という所だろうか。
その視線が鬱陶しい事極まりないがスルーしてカウンターに向かった。
丸いテーブルがいくつか空いていたが迷わずカウンターに向かう。絡まれるのが面倒だからだ。まあ、絡んできたら遠慮なく叩き潰す気だけど。そんな事より、そこには俺の興味を刺激する対象がいたからだ。
カウンターにいる男は如何にもなテンプレ的なバーの人物だった。
惶真は内心「テンプレ、サイコ-!」と思いつつ席に着いた。ちょっとオタクな面が出ていたが気にしない。
マナとカナもそれぞれ、惶真の横に腰掛けた。
「…何にするんだ?」
渋い声で聞いてきた。益々気に入った、この人。カクテルをシャカシャカしてくれるとなおの事だなと思った。
「取り敢えず、つまめそうなものを。あと…」
飲み物を注文しようとしたがさすが酒場、お酒しか置いてないようだ。
俺はマナとカナ用に甘めの酒と、名が面白そうという理由でレッドドラゴンと言う名の酒を頼んだ。
頼んだ瞬間周囲に動揺が走った。
バーの男も目を見開いて驚いていた。
なんだ?どれが良いかわからんから適当に名前で選んだんだが?
因みにマナとカナは一応年齢は100越えしてるし問題ないだろう。
「…ほ、本当に、それでいいのか?」
「?…ああ、それで」
「「?どうしたんだろ?」」
「分かった、後悔するなよ」
後悔するなよって、後悔する程の味なのか?多分俺に注目が来てるから、俺の注文したレッドドラゴンだと思うんだが。
そして、数分後、この酒場全体がざわつく。つまみと出て来た酒、マナ、カナのは、フルーティーな香りのする酒の様だが、問題は俺の注文した奴だった。
酒の色はその名の通り真っ赤だ。そこは問題ない。問題は、その酒から漂う匂いだ。
これ、完全に唯のアルコールだろ!と言う程のもので、刺激臭が漂う。マナとカナも鼻を抑え、自分の分を取ると少し離れた。周囲の客も何人か離れ青ざめてすらいた。
そんな周囲を気にする事無く、惶真はその酒を手にすると、一気に豪快にゴクゴクと飲み干していった。
その瞬間、周囲の者達は驚愕した。
飲み干した惶真は特に変わった様子もなく、なんともう一杯頼んだ。
その瞬間、周囲の、バーの男も信じられないといった様子だった。
マナとカナは、惶真の傍に寄ると、追加で運ばれて来た酒に鼻を近づけた。
「…!?…げほっ、何っ、これぇ!…げほっ…」
「…!?…きゅぅ~なの…きつい、の…う~…」
「ははは、まだまだ子供だな」
マナとカナの様子に笑みを浮かべた惶真は平然と追加の分もきっちり飲み干した。
因みに、惶真が注文した“レッドドラゴン”はアルコール度99パーセントの代物で、普通の人が口に含んだだけで喉が焼ける程のものだ。惶真が平然としていたのは異常耐性が異常に高く、このくらいでも毒ったり火傷したりすることもないのである。
そんな風にちょっとした騒動を起こしつつ食事を終えると船の出る場所に向かうのだった。
無論、マナ、カナを含めたその場にいた客たちは、惶真を化物のように見つめていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます