1章-⑫-過伝:出逢い…マナとカナ

私達は魔人族領にある小さな村に生まれた。

私の名前はマナ・リア。

私はカナ・リアっていうの。

私達は双子として生を受けた魔人族では珍しい子供でした。

始めは新たな生命に両親や村の皆は祝福してくれました。

理由としては、魔人族は長寿故にあまり子供が出来難いからでした。

実際、私達の暮らす村では数十年ぶりの誕生だった。

久方ぶりの子供と言う事もあり、私達は両親から、村の人達から可愛がってもらえました。

あの時が、いや、あの男が現れるまでは………



ある時を境に私達の扱いは酷いものとなりました。

それは、私達が呪われし子供だったからでした。

私達が生まれて50年程(人間の年として見ると5歳くらいの時)に、ある呪術に詳しい事で有名な魔人族の男が私達の暮らす村に訪れた。

訪れた男は私達を見て、


「この双子は呪われし子供。いずれ災いを齎すでしょう…」


と、告げたのだった。

それから私達は村の人達から“呪い持ち”として蔑まれるように扱われるようになった。

それは私達の両親に対してもでした。

そして、そんな村の者達からの扱いに耐えられなかった両親は、ついに私達が100歳(人間換算で8歳くらいの時)に私達を村から追い出したの。


「お前達は忌子だ!ここから出て行けっ!」

「お前達はもう私達の子ではないわっ!」


と、ひどい言葉で私達は両親にも見捨てられ村を追い出された。


幸いだったのは、私達の見た目はまだまだ子供だが、追い出される頃には精神年齢100歳を超えていたので、生きるにあたってそれなりの知識は得る事が出来ていた。

そして、それは1人でなく2人だった事だと思う。


(カナがいなかったら耐えられなかった…)

(マナと一緒だからここまで生きて来られたの…)



村から追い出された私達に、行くあてもなく、色んな土地を転々とした。

私達、魔人族は、魔素をその身に取り込むことで最低限の食事や睡眠をとる事で生きながらえる事が出来た。だからなんとか幼い二人でも生きてこられた。

だけど、転々と訪れたそこでも私達の事が知られると忌子として追い出された。

仕舞いにはその土地の魔人族の戦士達が出てきたこともあった。


私達は追い立てられ魔人領に居場所はないと、人間の領域に行くことにした。

つまりは別の大陸に渡ると言う事だった。

正直恐怖しかなかった。人間と魔人はもう何百年も険悪な関係なのだ。

私達の正体が知られれば、直ぐに討伐対象にされるだろう。

でも、どちらにしてもこの魔人族大陸に、私達に居場所はないのだから、いまさらと思い直し旅を続けた。


そして私達は何とか船に乗り込んで別の大陸に着く事が出来た。

たどり着いた後は、人の少なさそうな場所を求め彷徨う。

そして私達が見つけた場所は古びた人の誰もいない教会だった。

取り敢えず寝泊まりできればいいとここでしばらく過ごそうと決めた。


私達はここで何年も過ごした。

魔人は長寿故に時間間隔が人間と違い早く感じているのでした。

服などは教会に子供用のシスターの服が何着かあったのでそれを着ていた。

お金も少なからずあったので近くの村で、フードで顔を見られないように隠しながら保存のきくものを買って食べ繋いだ。この時は怖かった。



そんなこんなで十数年の時が流れた。

教会での2人暮らしに慣れてきた頃、私達を訪ねに1人の白いローブを身に纏った人間が現れた。


突如現れたフードで顔を隠している怪しい人間。

深々と被っているフードから見える口元、そしてその口から発せられる綺麗な声、それに薄めの金の長い髪、コートと服で隠されているが凹凸のある体型から女性だと思う。

その女の人に警戒している私達に、その人は笑みを浮かべつつ、私達にとって今後に関わる事を告げてきた。


「ふむ、やはり…どうやら君たち二人には“女神の呪い”が宿っているわ。これを持っている限りあなた達は“恩恵”と呼ばれる固有能力以外を上手く使えないわ。そしてその呪いは災いの象徴として周囲から忌み嫌われるの。2人共覚えがあると思うわ。……大丈夫よ、この“呪い”は【ネクロバレー】と呼ばれる聖殿でのみ解呪する事が出来るわ。…まあ、失われた“恩恵”があれば話は別なのでしょうけどね…」


“呪い” 


2人はドキッとした。ここで再びその言葉を聞くとは思っていなかったから。さらに、なぜ女神が私達に呪いを?と疑問に思った。

そんな2人は、


(どうして…)

(どうしてなの?)


と、いつまでも付き纏う、逃れられない事実。だけど、気になる事があった。それについてまずマナが尋ねた。


「ネクロバレーって?それに、どうして教えてくれるの?人間のあなたが魔人である私達に?」

「…あらゆる呪いを浄化する場所よ。そしてどうして教えるのか?それは、私もあなた達と同じ“恩恵”を持っているからよ。そして、私も“呪い”持ちだったからよ」


驚く2人は目の前の女性に一筋の光に見えた。自分と同じ存在がいた。それだけでも心が軽くなるのだった。

そんな風に思っている2人に目の前の女性は自己紹介をしてきた。あらためて自分が敵ではないことを示すためと、今後について示すために。


「私の名前はルカ・レヴェリーよ。ちょっとした事情で顔を見せてあげられないのは許してね。まあ、これも何かの縁、宜しくね。…えっと」

「私はマナ。こっちがカナよ。見ての通り魔人の双子よ」

「そう、宜しくねマナ、それにカナ。…さてっと、それじゃ気になっている事を教えてあげましょ」


ルカは、マナとカナに、自分も“恩恵”と呼ばれる固有魔法を所持している事を教えた。

ルカには“真言”という名の“恩恵・固有魔法”を持っておりその能力を何年もかけて使いこなせる様になり、自身の呪いの解除法や私達(マナとカナ)の事を知る事が出来たという。ルカは“真言”の導きに従い、ネクロバレーに赴く事で呪いの解除を成した。そして自分の他に、自分のも含めて7つの“恩恵”と呼ばれる固有魔法がある事、そしてそのルーツに辿り着いた。


「”恩恵”に関しては貴方達も薄々感じ得ていたと思うけど?」


そうなのだ。マナもカナも物心ついた頃から“恩恵”の存在に気付いていた。

マナは“昇天”という“恩恵”を持っていた。

カナは“再生”という“恩恵”を持っていた。

と言っても魔力消費が多大に掛かりうまく使いこなす事が出来ないが。


その後も、色々とルカから教わった。

ネクロバレーがどこにあるのかという事を。

この後、自分達と同じ“恩恵”を持った黒髪に黒い瞳をした少年と出会う事を。


そう教えた後ルカは「この後私にもすることがあるの。だからここで一旦お別れよ。…でもいずれまた会えるわ。その時にまた会いましょ」と旅立っていった。


私達は、ルカの言っていたネクロバレーを目指して、今まで過ごした教会に別れを告げ、ルカに貰った“隠蔽”の効果のあるフード付きのローブを纏い旅立った。


そうして旅立った後、ネクロバレーを目指して2人で旅を続けた。

そんな中、アルテシア王国の近隣にある森を通る際に2人はダイノボッドと言う名の強い魔物に出くわした。

ダイノボッドには“隠蔽”の効果が薄くうまく撒く事が出来ず、次第に追いつめられた。

そして、追い詰められた2人は、


「こんなところで…」

「ここまでなの…」


と、圧倒的な絶望の果てに諦めかけたその時だった。

今まさに二人を襲おうとしていたダイノボッドが吹き飛んでいった。


「「なにっ!?」」


2人は吹き飛ばしてくれたと思われる、剣を持った不思議な感じがする人間の少年の姿が映った。

その瞬間2人の心は絶望から疑心、そして後に歓喜へと変わった。

何故ならその少年こそルカが言っていた自分達と同じ“恩恵”を持つ黒髪に黒い瞳をした見た事もない服を纏った少年だった。


こうしてマナとカナは、此花(このはな)惶真(おうま)と運命の出会いを果たし、共に旅をする事になるのだった。

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