初めに戻って繰り返す

光山都

episode・0

初めの創世記

これは、始まり物語。

歴史から失われた”真”の歴史。

そして、最後に産まれた神の少年の物語。


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ネタバレになる可能性あり。

本編参照後読むことを推奨します。

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とある宇宙と言う名の平行世界に一つの世界が生まれた。

その世界の名は【パルティス】と名付けられた。


その世界パルティス二柱ふたはしらの男女の神が産まれた。

”創造”を司る神【アトラディーネ・ノア】。

”破壊”を司る神【ネクロディーネ・ノア】。


創造神と破壊神。

この二柱の神が産まれ出でて暫くして、二柱の神はこう考えた。


”何もないこの世界に一つの星を創ろう”と……


”創造”と”破壊”

この二つの力を用い星を産み出す爆発ビックバンを起こした。

強大な神力による爆発によって何もない世界に一つの鼓動が成った。

強大な力の本流が一つに収束した。

生まれた一つの鼓動を核にし、その核を中心に爆発によって生まれた複数の存在の源が収束した。

収束したその源の集合体は球体の形となった。

一つの星が生まれた瞬間であった。

生まれた星に”創造”と”破壊”の神は生まれた世界の名である【パルティス】と名付けた。


生まれたばかりで不安定な状態のパルティスを安定した星にする為、2人の神は生まれた自然の源である”自然力エナジー”と魔力の源である”魔素マナを用いた。

平らな大地を盛り山を創り、雨を利用する事で大地を盛る事で削れた部分に水を溜めて海を創った。そして自然エネルギーを活性化させる事で大地の各所に森林と言う植物を生み出した。

そして、最後にこの星に暮らす存在に搾取した。

自然と共に生まれた”精霊”や、魔素を保有した”魔物”と言ったモノ達を利用し多くの生きる者を生み出していった。

その過程の中で、”創造”と”破壊”の神は一つの種を作り出した。

その種は自分達、つまり”創造神”と”破壊神”に最も似通った姿をしていた。

生み出せれた種に二柱の神は【人間】と名付けた。


”創造神”と”破壊神”に似通った人間と言う名の種である12人が生まれた。


そして全ての創世を終えた”創造神”と”破壊神”は疲れた。

最高位に位置する神であっても一つの星を産み出すのに多大に疲弊するに至っていた。


疲れ果てた二柱の神は眠りに就く事にした。

眠りに就く前に、”創造神”と”破壊神”は創世後のパルティスを任せる事にした。

数多く創った種の中から、最も知性ある種であり、自分達に最も似通った存在である人間を選びました。

そして選んだ者達と対話を行い力を与えこの星を任せる事を告げたのち”創造神”と”破壊神”の2人は、2人だけの異空間【神威】を創造しその場所に眠りに就いた。

”自分達が眠りから醒める事のない”事を願いながら………


~~~


この世界の産みの親である二柱の神に、今後のこの世界の行く先を任された12人の始まりの人達は、変わらず仲良く暮らしていた。

12人の人間達は御互いに協力しながら智者として成長を果たしました。

産みの親である創造神と破壊神から与えられた特別な力、“恩恵”と“加護”の力を授かりそれぞれ昇華していった。


ある時、12人の智者達は一つの果実を手にした。

まるで血の様に真っ赤な宝石の様な果物だった。

それは【エリクシル】と言う名の果実だった。

12人は好奇心から、この変わった果実を分けて食す事にした。


【エリクシル】を口にした12人は自分達の力が飛躍的に上昇した事に気付いた。

身体機能の上昇。魔力や自然力エナジーが膨張する様に増えた。ちょっとした傷くらいなら瞬時に完治する回復力を得ていた。


12人はもっとないのかとこの【エリクシル】の成っていた樹を探そうとした。

そんな時だった。


”人の身に過ぎし力、故に滅びの光と共に滅する…”


馴染みある一つの声と共に【エリクシル】の成っていた樹に向かって全てのモノを破壊してしまう程の威力が籠った光の雷が降り注いだ。

慌てて逃げ延びた12人は破壊による焦げた様な跡に目を向け戦慄した。

そこにあった樹は跡形もなく消失していた。

12人の脳裏に浮かぶのは一つの言葉だった。


”神罰”


産みの親でもある”創造神”と”破壊神”が、自分達12人に向け告げたのだ。


『”…我らは、眠りの中で、汝らを見つめている。清浄なる世界の均衡。…これ破りし時、神罰を下すであろう”』


と……

つまりこの【エリクシル】の実は世界の均衡を脅かすものであったという事だった。

実際【エリクシル】を分けて口にしただけで圧倒的と言える程の能力を得ていたのだから。




その出来事から数十年の月日が経過した。

その中で12人は不思議さを感じていた。

月日を経過しているはずなのだが、なぜか、自分たちの身体が変化していないと言う事に。

あの時までは緩やかではあるが少しづつ成長していたはずだった。

12人は「まるで不老にでもなったのでは?」と考えた。

考えた12人は【エリクシル】が不老化した要因に至った。

もしかした”不老”だけでなく”不死”まで得ているのでは?とすら考えていた。


ある日、”神託”の力をもつ少女が11人の同胞に告げた。


『”…我等より生まれし愛する子供達よ。…汝等の成した罪を清算すべし。…汝等の罪をもって後継を作り出すのだ…”』


二柱の神より告げられた”神託”。

自分達の”罪”と告げられた事柄。…【エリクシル】だとみなが思い浮かべた。それ以外に罪となるものが思いつかなかった。

そして”罪”をもって”後継”を作れと。

12人で考えに考えてこう至った。


『【エリクシル】によって増した”神の恩恵”と”神の加護”を用いて、かつて生みの親である”創造神”と”破壊神”の行った自分達と同じ種を生み出し見守る事…と』


そう考えに至った12人は、12の”神の加護と恩恵”を集結させ”人類創製”に取り掛かった。

何度かの失敗の果てにいくつかの種族の人間を生み出す事に成功した。

生まれた人間がある程度の数に至った後、12人の……生み出された人々から【神】、【女神】と呼ばれた12の神人達は干渉を最低限とする為に嘗ての産みの親である”創造神”と”破壊神”の様に異空間世界の着手に入った。

そして完成した世界、自分達”神格”を持つ者のみが干渉できる世界【天域】に12人は移った。


それぞれの種族に惜しまれながら……

生まれし種族。

最も基本形で多い人間族。

”精霊回廊”と言う精霊との干渉能力を有する異人族であるエルフ。

獣の特徴を持つ魔力を持たず自然力エナジーを有する異人族の獣人。

魔物の血を持ち最も多くの魔力を有していると言われ、最も長寿である異人族である魔人。


4つの種族には問題があり、数1000年後、お互いの存在を掛けた戦争を起こす結果となったのです。



それからの12神人達は【天域】から下界の様子を見守り、必要と判断した時のみ干渉するようになった。


天域に移った者達は、寿命の概念を失い、ほぼ不老不死の状態となっていました。

12の智者達は、時に、下界に干渉しました。正しい世界である為に、自分達の力を利用し導いたのです。

そうして下界の発展を促した彼らを、下界の者達からは、神、又は女神と呼び敬われた。



彼らが神と呼ばれるようになってから幾年の時が経過した頃、事件の予兆が見え始めていた。

それは神と呼ばれた少年少女による憎愛によるものだった。


ある神が、とある女神を唆したのでした。

その神は、女神に「君の望みを叶えてやろうか?」と。

その神は、唆した女神を愛していたのです。

ですが、その女神には既に愛する者がいたのです。

ですが、その女神が愛する者も別に愛する者がいたのです。


唆されたその女神の名は【アテネ】。

愛した女神を唆し、他の神を消し、その力を奪おうとした神の名を【ゴレイヌ】。

女神の愛していた神の名は【オコノウハナマ】と言う。

この愛憎が後の神と呼ばれた者同士による戦いの引き金となるのはまだ誰も知らなかった……



天域に住まいし人々に崇められし12人の神、そして女神。

●正義の神と呼ばれる、ジュノー。

紫の後ろ髪が長い、何より正義感を有している神。下界で起きる不当な争いに介入し光り輝く剣で争いを鎮静化させる武神。


●創藏の神と呼ばれる、クロノ。

金のショートの髪をしており、人々に自身の作りしアーティファクトを贈った。物を作り世界を豊かにすることを教えた神。


●万物の神と呼ばれる、ゴレイヌ。

禿頭の巨漢で、神の中で最も力と色欲を有し求める神。命を生み出し支配する事が出来る神。


●融解の神と呼ばれる、ユウゴ。

青い前髪の長い少年の姿をした神。あらゆるものを分解する力を有している。よく呼び名を間違え、その癖、自身の呼び名を間違われるとキレる神。


●神託の女神と呼ばれる、アテネ。

白く長い髪に、人々を惹きつける魅力を備えた女神。人々が真に望を得たい時、その望みを神託として伝える事が出来る。


●博識の女神と呼ばれる、ウテナ。

薄い水色の長い髪をしている女神。アテネとは、創造された時、一緒に作られた為、姉と慕っている。人々に世界の知識を与えた女神。


●自然の女神と呼ばれる、レクリス。

緑のショートの髪に、長い耳をしている女神。精霊に干渉する術を持ち、その力で大地を豊かにした女神。エルフの始祖でもある。再生の力を有する。


●愛の女神と呼ばれる、シュトレー。

真っ赤に燃える様な朱色の長い髪をしており、サイドで髪を括っている。世界には愛が満ちていると人々に諭した女神。情熱な性格をしており演舞を得意とする女神。


●浄化の女神と呼ばれる、ネクロバレー。

栗色の髪をした半獣の女神。この世の不浄を清める力を有しており、呪われし者を解き放つ女神。病気などになった際にはある土地に作った神殿に祈りを人々は捧げるようになった。


●法の女神と呼ばれる、フレイ。

橙色の髪をしており帽子をかぶっている女神。神々の中で最も秩序の乱れを赦さない為、他の者も、人々も機嫌を損なうのを避ける程の女神。


●災禍の女神と呼ばれる、エーテリアヌス。

灰色の長い髪を三つ編みにしている女神。なにか悪さをしたら、かの女神に呪われると人々に恐れられている女神。人々から悪神扱いされているが本人も自分の役割と割り切っている。冷めた性格をしている。


そして、12人の中で最後に創造されたのが、魔の神である、オコノウハナマである。

神秘的な黒髪に黒い瞳の肌白い少年の姿をした神。

最後に産み出された事と、知識を与える時間が無かった為、魔神の感情が機微であった。他の神々の教えを誠実に取り入れ、初めての事に興味を示す。

魔人族の始祖であり、変化を司る神。


~~~


魔の神である【オコノウハナマ】はある時、下界へと降りた。

天域に住まう神達は、制限はあるが下界に降りる事が出来るのである。


【オコノウハナマ】が降りたのは自身に最も近い存在である、魔人族の領域に降り立った。

当然、敬服すべき相手である魔神の到来に、魔人族の者達は心振るえ歓迎したのです。


歓迎された【オコノウハナマ】は近況等を代表の者に確認したのち宴に招待された。

その時、【オコノウハナマ】は宴の席で自分の世話をしてくれる1人の女性と出会った。

その女性は首元くらいの長さの赤く綺麗な髪をしていた。毛先は紫だった。

体型は、身長は【オコノウハナマ】より10㎝程低い。胸は小さめであるが手足は長めで美人と言えた。目元もおっとりとした雰囲気もあり優し気な印象を得られた。

【オコノウハナマ】はその女性と出逢い、生まれ出でて初めて感じた。

人に恋をし、愛するという感情に。

滞在の間、2人はお互いに惹かれ愛し合った。その間、【オコノウハナマ】は幸福感で一杯になっていた。


だが、時間ときが訪れたのでした。


神存在となった【オコノウハナマ】は、下界に滞在できるのは1か月程であった。

【オコノウハナマ】は初めて悲しんだ。

なぜ、自分はこの様な存在になったのかと。

何故、愛する者と一緒にいられないのか?と。

【オコノウハナマ】は何とか此処に残れないか?と考える程であった。


しかし、天域で定めた戒律に逆らうという事は、他の慕う兄や姉である神達を裏切ることになる。

それだけは許されない。


結果として、【オコノウハナマ】は愛した女性に事実を伝えた後、涙ながらに自身の事を忘れさせた後、天域へと戻った。


~~~~


天域に戻った【オコノウハナマ】は、その出来事を、他の神と女神に話した。


『そうかオコノにも人を愛する気持ちを持てたのだな。それはよい経験だったはずだ』

『オコノ、その気持ちを忘れてはいけませんよ。その気持ちは何より大事なのですから』

『辛い決断をしたな。…泣きたいときは泣くといい』

『素晴らしいわ。オコノ、あなたは愛する気持ちをその思いを忘れず燃える様にするのよ!』

『……』


【オコノウハナマ】は涙を流しつつ初めて得た愛する気持ちを大切にしようと心に刻む様に抱いたのだった。


その出来事の後、【オコノウハナマ】は特に魔人族に加護を与え続けた。

勿論、人間や、獣人、エルフと言った者達にも分け与えた。


だが、想いと言うものは強ければ強い程、悪性に囚われていくものだった……


****


ある時、魔人族の領域内にある集落が、人間族の武装した集団に襲撃された。


その様子を天域から見ていた神々の中で最も動揺したものがいた。

【オコノウハナマ】だった。

魔の神である彼は、この事態を無視する事は出来なかった。

何故なら、その集落にはかつて恋した女性もいたからでした。

【オコノウハナマ】は他の神々の静止を振り抜き、その場に降り立った。炎で覆いつくされている崩れ去った集落に。

【オコノウハナマ】は探した。恋した女性を。

必死に愛した女性の名を叫び探す。

そして、最悪の形で【オコノウハナマ】は見つけた。炎に焼かれ息絶えた愛した女性を。

その瞬間、【オコノウハナマ】は、初めて怒りを覚えた。


『なぜ?…なぜ、彼女がこんな目に…こんな酷い死を迎えなければならなかったんだっ!?…我がもっと早くに駆け付けていればっ…気付けさえいればっ…おのれ…おのれぇえええぇっ!!…許さん…許さないぞぉ、人間がぁあああぁ!!』


そして【オコノウハナマ】の怒りは襲った元凶への殺意へと変わった。

そして、その原因となった者達に、殺意のまま滅びへと昇華させた。


突如降臨した存在に人間達は恐怖から慄いた。

圧倒的な存在感。そして、その者から発せられし、壮絶な怒りを籠めた威圧感。

それを見たものはこう言った。

「あれは、魔神だ!?」

「あれは、破壊の神だ!?」

と。


【オコノウハナマ】は抱いた怒り、殺意、滅びの感情を、襲っていた人間の集団にぶつけた。

怒りにより普段の優しい【オコノウハナマ】の成りはなく容赦も躊躇いもなく殲滅していった。

命乞いする者もいたが怒りの化身となった【オコノウハナマ】は無慈悲にその命を刈り取った。

そしてたった1日で、その場にいた1万はいた人間が【オコノウハナマ】によって大地が廃土となる程に殲滅されたのでした。


この時、この時の様子に笑みを浮かべたものがいたがこの時は誰も知る事はなかった…


破壊の権化となった【オコノウハナマ】は怒り狂い続けた。

自分自身でも止める事が出来ない程だった。

他の神々はどうにかして【オコノウハナマ】の暴走を止めたいと思っていた。しかし、他の者は天域から見ている事しかできなかった。

それは下界には、神そのままの能力を維持した状態で降りられるのは1人のみと言う制約があったからだ。制限を掛ければ降りられるのだが、今の【オコノウハナマ】を止めるには間違いなく戦いになる。制限のある状態ではまともに対することも出来ないのだった。

神人達は歯がゆい気持ちの中ただ成り行きを、【オコノウハナマ】の怒りが収まるのを見ているしかなかった。


魔の神の怒りは治まる事無く次第に広がり、世界に歪を開けかけた。

怒りの元凶たる人間に対する気持ちが抑えることが出来なかった。

自分でも止められない怒りによる破壊行為。

そんな時だった。

暴走する魔の神の上空に一つの門が出現した。

その門はゆっくりと開き始めた。

魔の神は怒りの眼をその門に上げた。

見上げたその眼には若干の恐怖が宿った。


そして、門が完全に開いた時、一条の神の威光が、魔の神に降り注いだ。

魔の神は、絶叫した。

初めて感じる痛み。その身を焼き滅ぼす恐怖を。そして…魔の神は安堵した。


そして、威光が静まった後、魔の神はそこには存在していなかった。

あるのは、廃土とかし威光によって一つだった大地が割れいくつもの大陸となった。


****


【オコノウハナマ】は気付くと何もない暗闇の空間に漂っていた。

自分は何をしていたのか?

自分は何を失ったのか?

自分は何の感情を得たのか?

そんな問答をしても誰も答えはしない。

何故なら、もはやその答えを知る者はいないのだから。


そして暗闇の世界に漂い続けて幾年が経ったか判らないと思うほどの時間が流れた。

その身を浄化された【オコノウハナマ】は心を失った。

茫然と見つめていたその眼に一寸の光は見えた。

【オコノウハナマ】は、その手を伸ばした。

光の先に。

そして、その光に触れた時、【オコノウハナマ】はその空間から消えたのでした。


“セワノカカルコドモダ”

“ホントウニネ”


空間から消える前にそんな言葉を聞いた気がしたのだった。


・・・・・・・


目覚めた【オコノウハナマ】は天域にある自分の神殿にあるベッドに横になっていた。

何故自分は寝ていたのだろうか?

【オコノウハナマ】はふと疑問に思った。

疑問に思いつつ【オコノウハナマ】は身体を起す。この疑問に慕っている他の者に尋ねようと捜し歩き始めた。

尋ね人である他の11人の者達が立ち塞がった。

それぞれの瞳には心配が含まれているが大部分が【オコノウハナマ】に対する怒りであった。


「オコノ、目覚めたのだな?」

「うん……ねえ、ジュノー?どうして怒ってるの?」

「オコノ!アナタは自分が何をしたのか憶えていないのか!」

「?…うん。何かあったの?我が何かしたの?何も覚えていないんだ…」

「……うそ、ついてない、みたいだわ…」

「おいおい、あれだけのことしでかしておいて何も覚えてねえだとぉ、ふざけてんのかよ!」


【オコノウハナマ】は理解できなかった。何故皆そんなに憤っているのか?と。


「あの様な事をしておいて良く言うな、貴様は!」

「そうです。数千年の間、保たれていた均衡を、“神罰”の到来を避けてきた私達の努力を、貴方は!」

「……神罰…」


【オコノウハナマ】はますます理解できなかった。なぜこんなに怒られるのかと。

そんな【オコノウハナマ】に、神託の女神、【アテネ】が経緯について話し始めた。

【オコノウハナマ】は驚きに言葉を忘れた様に只々アテネの告げた真実を聞く。


「―これが起きた全てのことよ。そしてなぜ皆が怒っているのかもね」

「……本当に…我が…そんなことを?」


自分が怒りの飲まれ破壊の権化と化していたこと。

人々を虐殺してしまった真実。

そして”神の裁き”である神罰が起きた事を。

そしてその影響で大地が割れ複数の大地になったことを知るのだった。

信じられない気持ちだが、それが真実ならば他の者が自分に怒るのも無理はないと反省するのだった。


あと、ほかの皆から聞いた話では下界では人間と魔人とのいざこざが絶えなくなっていた事を聞いた。


先の事が原因は明白だった。

だが、神々はこれに介入する事はなかった。

そんな粗末なものに気にする事もなくなっていたからだ。



感情がリセットされた【オコノウハナマ】は、他の神の監視下にありつつまた初めから感情を得る事から始まった。

先の出来事を気にしながらも兄弟でもある彼を他の神達は【オコノウハナマ】を支えた。

特に、女神達は献身的に彼を支えた。その中でも、神託の女神、【アテネ】が最も彼に寄り添い支えた。


その事実に面白くない者がいたが…


それから数十年で彼は以前と同じくらいまで回復した。


魔の神、【オコノウハナマ】は心優しい青年だった。黒い髪に、黒く綺麗な瞳をしていた。容姿も整っている。誰に優しい彼を誰もが慕っていた。

だが、先の事で【オコノウハナマ】には負の感情が大きくなった時、破壊の力を振るう存在として暴走する可能性を秘めていた。他の者達により【オコノウハナマ】は下界に干渉する事を禁じられるのだった。すべては【オコノウハナマ】が穏やかな状態でいられるようにと言う配慮であった。



【オコノウハナマ】はある時、神託の女神、【アテネ】と、万物の神、【ゴレイヌ】の会話を偶然聞いてしまった。

その内容を聞いた瞬間、彼の記憶に浄化されリセットされたはずの記憶が甦った。


記憶と取り戻した【オコノウハナマ】は憤怒しそうになった。だが、怒りに呑まれることはなかった。

それは以前の怒り暴走した時のを記憶していたが故に。

まず【オコノウハナマ】は聞いた内容を、自分をよく支えてくれた女神達に相談した。勿論、【アテネ】を除いた者達に。

それを聞いた女神達は半信半疑だった。

だがそれは事実と理解するのは時間の問題となった。


ある時、災禍の女神、【エーテリアヌス】が、何者かに襲撃を受けた。

その襲撃にて、【エーテリアヌス】はその身にあった“加護”を失った。

さらには、愛の女神、【シュトレー】も、何者かに襲撃を受けた。

やはり、【シュトレー】もその身にあった“加護”を失っていた。

そして両名とも襲撃時の記憶が不鮮明だった。


女神が襲撃されるという事態に、【オコノウハナマ】は確信を得た。

神託の女神、【アテネ】と、万物の神、【ゴレイヌ】がした事だと。

何故なら天域にいるのは12の同志のみだからだ。


2人の計画は、他の者から“加護”を奪い、神覚者で無くす事だった。

12人の人間達が、神存在となったのは“恩恵”と“加護”を持っていたが故だった。そのどちらかを失えば、神格が薄れ、いずれ人間に戻ってしまう。


【ゴレイヌ】が願ったのは、この天域に【アテネ】のみが存在する事。そして、いずれ自分のものにするという事だった。

【アテネ】はその思惑を、逆に利用していたが…


【オコノウハナマ】は神の中で最も力を有しており仲の良かった正義の神、【ジュノー】に相談しようとした。

しかし、相談しに行った【ジュノー】は無機質な瞳で、【オコノウハナマ】に斬りかかった。

なぜ!?と動揺した【オコノウハナマ】は何とかその場を逃れる事が出来た。

【オコノウハナマ】はその時悟った。

最早、味方は誰か分からない状態になっていたと。


【オコノウハナマ】は下界に降りて身を隠すことにした。

【ゴレイヌ】の目的は不明だが、【アテネ】の目的が自分の可能性が高いと知った故であった。

【オコノウハナマ】は”神罰”の影響で既に“加護”の殆どを失い“恩恵”のみの状態だったこともあり、少しずつ神格が減っていた。

自分の格を人間まで下げる事で他の者の眼を誤魔化す事が出来た。


【オコノウハナマ】は人間としてとある教会に身を潜めた。

そして身を潜めて1年後、【オコノウハナマ】の元に、かつての同志である6人の女神だった者達が訪れた。

突然の訪問に初めは警戒した【オコノウハナマ】は直ぐに驚気に変わった。

6人共、神の“加護”を失い神格を失いかけの状態になっていたのだ。

事情を聞くと、やはりと言うべき状態になっていた。


天域には既に“恩恵“と”加護“を奪われ、残った神託の女神【アテネ】の支配下になっているようだった。

聞いた話では、万物の神、【ゴレイヌ】も奪われ、傀儡のような存在となっている様だった。


6人の女神達は、【オコノウハナマ】の話を聞いており、続けて奪われていく状態が続き、さらに、自分達に警戒を促した【オコノウハナマ】の神格が薄れた事で何とか“恩恵”を失うまでに、天域を出る事が出来たのだった。

そして、微かな痕跡を頼りに、【オコノウハナマ】の場所に辿り着いたのだった。


合流した【オコノウハナマ】達は今後について考えていた。

だが、それは、人間達による襲撃で考えが固まった。

襲撃して来た人間達はやはり、神託の女神・アテネの計略でやって来たのでした。


【オコノウハナマ】はもはや猶予はないと考えた。

彼は2つの可能性を、彼女達に提示した。

1つは、天域に赴き、我々を謀った【アテネ】を討滅すること。

そして、もう1つは、かつて起こした“神罰”を起こすこと。

この2つだった。


相談の結果、一つ目の案で行く事になった。


そして天域に赴くため、そして、【オコノウハナマ】は、【レクリス】、【シュトレー】、【ネクロバレー】、【フレイ】、【ウテナ】と、それぞれ1日ずつ愛し合った。それぞれの残された“恩恵”を共有する為に。


そして、後のネクロバレーと呼ばれる場所にて、天域を開く儀式を行った。

そして、7人の、神と女神だった者達は、天域にいる【アテネ】と、【アテネ】の操り人形と化している残りの【ジュノー】、【クロノ】、【ゴレイヌ】、【ユウゴ】に、挑みに向かった。


その先で、【オコノウハナマ】は、【アテネ】と直接対峙した際に全ての真実を知る事となった。全ての出来事は【アテネ】が裏で暗躍していた事を。


【オコノウハナマ】は他の女神達の“恩恵”を自身の”恩恵“を使い一つにした。そして反対し止めようとした女神達を”転移“させた【オコノウハナマ】は、他の者達から奪った”加護”と“恩恵”で“超越者”となった【アテネ】と対峙した。

その結末は、一振りの聖剣によってその身を砕かれた魔の神が、最後の力を振り絞り、天域においての干渉力を、【アテネ】から奪う事で終結した。



聖剣の刺さった状態の【オコノウハナマ】は、とある下界の大陸に降り立つと、その場に居合わせた1人の驚いた表情の人間の男に自身に刺さりし聖剣を抜かせた。

その身に刺さりし聖剣が抜けた事で、【オコノウハナマ】はその身を世界に融けるように消えた。自身が受け取っていた6つの“恩恵”を転移させて…



突然現れた不思議な男に摩訶不思議な表情を浮かべた青年は、その男の胸に突き刺さっていた聖なる力を宿した剣をその男に頼まれ抜いた。抜いた後、根の前の男はまるで霧のようにその姿を消した。

青年はその手にした聖剣を持って魔人族との戦争に参加し、青年は【魔王】と対峙した。

青年は魔殺しであり神殺しの力を有する聖剣を用いて魔人族の王である【魔王】を討滅しました。

【魔王】が討たれたことで魔人族の勢いは低下し戦争は一旦静止となった。

当然【魔王】を倒した青年は英雄として称賛された。

青年は魔王討滅後、その手にしていた聖剣が青年の手からいきなり離れ何処となく転移しました。青年は無論捜索した。

そして見つけた。聖剣は何もない真っ新な土地にあった台座に突き刺さっていた。

青年は、再び抜こうと聖剣に挑戦しましたが何故か抜く事が出来ませんでした。

それは他の者も同様でした。

青年は仕方なくその名にもない地に、聖剣を奉り新たな担い手が現れても良いようにと1つの国を作りました。

青年を王とする王国の名は、青年のファミリーネームから『アルテシア王国』と呼ばれた。


****


これが、真なる創世の歴史。1人の神が辿り、いつか再び辿り着く真の記憶。

だが、人間達は真なる歴史を知らない。

女神の支配故の力にて歪んだ歴史が語り継がれた故に。


「……けど、私は知っている。この後、起きる事も、この世界の真実を」


白いフードで顔を隠していた女性はそう声にしたあとその身を翻す。

真なる歴史に刻まれ者が再びこの世界に戻るその日を求めて―――


================


………まったく…こうして…我らの領域へ至るなど……

……本当ですね…困った子ですね……

”……?”

……フフ…何も覚えてはおるまい……

……もう…必要もないものね……

”…?…”

…汝は今より…この世界とは…別の世界に…新たな命として…生まれ変わる…

……生まれ変わったアナタ…アナタを必要とする…その時まで…安らかに暮らすといいわ…

”………”

『…さあ行きなさい…君が…この我らの元に戻るその時まで…そして…君はきっと――』

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