深愛〜今でも大好きだよ〜

卯月真珠

プロローグ・懐かしい残り香

あの日逢ったのは初めてだけど懐かしい感覚に襲われた。

まだ雪降る1月。今年は暖冬とか巷で話題になっていたが、シベリアの冬将軍がシベリアで暴れるのを飽きたのか、北からの痛い空気がまるで何かの罰ゲームに感じる。

そんなある日曜の昼下がり、わたしの人生が変わった。

中学生の娘を持つ37歳主人とは死別したシングルマザーのわたしは毎日仕事と育児時間に急かされる。

しかし唯一の楽しみが【マイブック】自分の1日を書いてヒト様に見てもらう一種の自虐なSNSだ。

今日も上司の事を書いた。

大切な子どもの成長も書いた。

そんな代わり映えない投稿に反応してくれるユーザーはざっと300人くらいだろう。

『頑張れサヨちゃん!』

『風邪ひくなよ!』

いたって普通なコメントだけどシンママのわたしにしたら唯一のカンフル剤。

その中の1人にトモキと言う男性が感想を述べてくる。

ものすごく懐くコメントにわたしの腹の中では

《どうせ顔が分からないんだろうから誉め殺しだろ?》と思いつつ返事に死語まで出すあり様。

もう少し素直になれよサヨ。

強がる自分が腹立たしい。。

そんなやり取りが3年くらい続いたある日のこと、ダイレクトコールという個人間でやり取りするメッセに1通のメールが届いていた。

相手はトモキだ。

ー会社を辞めようと思います。

辞表書きました。ー

わたし……苦笑。。

おいお何だよいきなり。

見ず知らずの知らない人間から『お願い辞めないで』と言われたいM野郎か?

まるでわたしは歌舞伎町の風俗街の女王様みたいな気分になってしまった自分。

しかし会社を辞めるとは穏やかではない、そこでわたしは即レスする。

《何かありましたか?相談のりますよ?》…とEnterボタンをポチリと押す。

おーーー‼︎

予想に反して可愛い返事じゃないか!

もう少し切り込んで聞いたら良かったかな?

いやいや根掘り葉掘り聞いてもつまらんな…ブツブツ言っていたらトモキからも即レス。

【サヨさん…良かったら会ってお話したいですが…ダメですか?】

なんですとー‼︎

メールじゃ話せないのか?

急に挙動不審になる三十路オンナ。

まさかの辞める辞める詐欺か?それが口実か?勘繰る自分…サヨお前可哀想だな…自分で自分を悲哀の目で見る。

しかし、よほど相談する相手がいないのだろう。話を聞く分は嫌いではないから週末の日曜日に会う約束を作った。


…そして日曜の昼下がりトモキは不意な場所から現れたのです…。


サヨは驚き目が点となる。

しかしトモキから漂う匂いは一瞬にして

サヨのある日を思い出してしまったのである。


まさかこの人を好きになるとは予想もつかず、わたしがこんなに愛する人とは想いもせず、トモキの全てを受け入れ、そしてトモキもわたしの全てを受け入れることになるとは2人には知る由もなく出逢ったのでした。


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深愛〜今でも大好きだよ〜 卯月真珠 @fukko0425

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