第14話

「……ここ、だよね……?」

 きょろきょろと辺りを見渡しながら、ティグは呟きました。見渡したところで辺り一面真っ暗なのですが、それでもそこには昔村があったという事がわかりました。屋根や壁の崩れた家が点々としています。壊れた柵の中には、きっと豚か鶏を飼っていたのでしょう。煉瓦を積んで造られた井戸の奥底からは、ひんやりと冷気が漂ってきます。人の気配は全くありませんが、それらの建物が、そこが村である事を教えてくれました。

「パルー? どこにいるの?」

 ティグは、ためしにパルの名を呼んでみました。これで返事があれば、楽なものです。ですが、当然の如く返事はありませんでした。

 ティグは肩をすくめて、村の奥へと足を踏み入れました。歩きながら、村の中を見て回ります。どの建物も、どこかしら崩れています。無事な建物は一つもありません。中には、跡形も無く崩れてしまっている家もありました。剥き出しの壊れた暖炉が、辛うじてそこに家があった事を示しています。

「この村に、一体何が起きたんだろう……」

 思わず独り言を呟きながらも歩き続けます。そして、村の中央部にあたるらしい広場に出たところで、ティグは足を止めました。広場の向こうに見える少々大きめの建物から、明かりが漏れています。その明りに向かって、ティグは迷わず歩き始めました。そして建物の出入り口まで辿り着くと、まずは何と言おうか……と考えながら扉に手をかけました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る