僕達の関係
maro
第1話
僕は『私立芙彈(ふだん)高校』へ通う高校二年生。名前は『宮間悟』(みやまさとる)
学校の女の子達には、何故だか人気があるみたいで、
これまで、何度も告白をされたことがあるけれど、その度に、丁寧にお断りしている。
僕個人は、これといって特徴もない地味な高校生だと、自分ではそう思っている。
――但し、一つのことを除いては。
「さとくん、おはよー」
振り向くとそこに、幼馴染の女の子『桐野彩芽』(きりのあやめ)がいた。
「めーちゃん、おはよ」
彼女は僕のことを、悟(さとる)の『さ』から『さとくん』と呼ぶ。
僕も同じように彩芽(あやめ)の『め』から『めーちゃん』と呼んでいる。
「聞いたよ。また下駄箱にラブレター入ってたんだって?
本当に昔からモテるよね。さとくんは」
「モテるって言われても、ピンと来ないよ。
好きな人以外には、恋愛感情なんて湧かないんだから」
「ということは、さとくん好きな人いるんだ?
さとくんなら、その子に告白したらOKしてもらえるんじゃない?」
「そ、そんな簡単じゃないよ。だって……」
「だって、何? アタシなら話聞くけど?
幼稚園からの仲じゃない。遠慮しないで相談してよ」
「い、いや、いいよ別に。そんなに悩んでいるってことじゃないから……」
「ふうん。つまんないの」
こういう時のめーちゃんは苦手だ。
付き合いが長いから、僕のちょっとした態度や表情だけで、
心が読まれてしまいそうな気がして、緊張する。
「おう、悟! 今日も桐野と二人一緒か? お熱いねえ、まったく!」
「あ、隆……おはよう……」
突然、真後ろから大きな声がしたので、驚いてビクッと震えながらも、
声の主が誰なのか分かったので、僕はぎこちなく挨拶を返した。
「うるさいわねー。声がデカいのよ、秋本は!
あんたと違って、さとくんは繊細なんだから、朝っぱらから大声で呼ばないでよ」
「言っとくけどな、桐野。俺はお前達を応援してるんだぜ?
幼馴染同士ってのは、意識しすぎて素直になれないもんだろうからな」
「何決めつけてるの? 余計なお世話よ。誰も頼んでないでしょ!」
「なんだよ。悟だって、キッカケが欲しいに決まってるんだよ。なぁ、悟??」
「え……あ、僕はその……えっと」
彼の名前は『秋本隆』(あきもとたかし)
中学からの同級生で、同じクラスの男子。
めーちゃんとは、いつも馬が合わなくて、毎朝のやり取りはお約束だ。
「はっきりしねえなあ。そんなんじゃ、また勘違いされて、
好きでもねえ女子に告白されちまうぜ?」
「ちょっと、もういいでしょ! さとくん困ってるじゃん! さっさと行きなさいよ!」
「おー、怖っ! 悟、行こうぜ!」
不意に隆が僕の手を握った。
「あっ……!」
そのまま昇降口まで、引きずられるように引っ張られていく。
「ち、ちょっと、行くのはアンタだけでしょ! なんで、さとくんを巻き添えにするのよ!」
「はっはっは、悔しかったら奪い返してみろ!
お前の愛しの王子様をな! 勇ましいお姫様!」
「こ、このー! 待ちなさい!」
二人のいつものやり取りに巻き込まれ、下駄箱の前まで来た僕は、上履きに履き替えようとする。
だけど今日は、上履きを持つ手が微かに震えてしまう。
――強く握られたから……。
「ん? どうした悟? なんか顔が真っ赤だぜ?
俺、ちょっと強く引っ張り過ぎたかな?」
「え!? いや、な、なんでもないよ。大丈夫だから……」
僕は誤魔化すように、さっさと上履きに履き替えると、急いで教室へ向かって歩いた。
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