神話伝説のギルマス~異世界召喚されたけど才能がないからギルド経営始めました。

黄金の歯車

第1話 プロローグ

「今日からお前にはここを経営してもらう」


薄汚い木でできた建造物の前に一人の黒髪の青年が立っていた。

屋根や壁の塗装がはげていたり、硝子が割れていたりと、とても住める環境ではない。



扉を開くと同時に大量の埃が青年を包む。すぐさま手で取り払い、せき込む。

そんな状況を見ていたここまで案内してくれた国おかかえの兵士は用件は済んだ、と颯爽と帰ってしまった。



「こんな汚い場所なのか……これは骨が折れるなぁ~」



青年——坂崎さかざき大和やまとは心の底から溜息をつく。

なぜこうなったのかは遡る事、一週間前。



大和は何の前触れもなく異世界に召喚された。高校三年生で、大学も決まっておりあと少しで卒業という時期に異世界に召喚された。

クラスメイトとではなく、別の世界から来た大和を含めた勇者候補四人だった。



召喚を行った場所はレーマ王国、行った人物はレーマ王国第一王女。

国王は常識ある人物で勇者召喚に反対していたが、我儘で非常識な第一王女はこちらの都合も考えず強制的に召喚を実行した。



運動が得意ではないヤマトは異世界に来ても同じだった。他の三人もヤマトほど悪くはないものの、大体平均的な能力の持ち主だった。勿論の事、直ぐに勇者にはなれるわけがなく四人は勇者試験に一週間後に臨むことになった。



それから剣術の稽古、槍術、武術、魔法の鍛錬など勇者になるために必要な事を休む暇なく行った。

それから一週間がたち、勇者試験を受けたが見事に失格。

王女は能無しには用がないと言って一文無しで捨てようとしたが、国王が助けてくれて多額の金を持ち、この場に来ている。



この場所は五十年前に一つの冒険者ギルドが使っていた場所だが、そのギルドが解散した後は誰も使わず廃棄されようとしていた場所だ。

勇者試験に失敗したヤマトが立派な宿谷に留まることなど許されるはずもなく、今じゃ王国の恥とも言われている。



300金貨という多額の金を用意し、場所も提供してくれた国王には感謝を心の中で述べる。今じゃ国王には謁見もできない。



不幸中の幸いというべきか、資金には当分困らないだろう。というより一家族が一生遊んで暮らせる金が沢山あるのだ、困るどころか余裕だ。



問題は別にあるのだ。戦いの才能がないがないので冒険者となって戦う事も出来ず、国の兵士になる事も出来ない。

他の仕事と言っても日本ほど安定した職はない。

そこで、ヤマトは一つの案を思いついた。




「奴隷を買って冒険者として育成すればいいんじゃないか?」



そう、この世界には奴隷が存在する。それこそ多種多様だ。戦争の際に使われる戦争奴隷、労働者として使われる犯罪奴隷、貴族たちの玩具にされる性奴隷、そして一般的な一般奴隷。



奴隷市場は少し距離があるがそれほど遠い訳でもない。馬車もあるので三十分もすれば帰ってこれるだろう。

金額は3金貨を目標とする。情報によれば一般奴隷は高い物でも1金貨もあれば十分だそうだ。


予定ではあるが一般奴隷を二名ほど購入、残りの金貨は30日間分の食糧を仕入れる。

そうと決まれば、直ぐに実行だ。




ヤマトは雑草が隙間なく生えている庭の真ん中に止めてある馬車に乗り込み、馬を走らせる。

目指すは王国一番の奴隷繁華街だ。

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