機械世界に少年少女

車輪

プロローグ 『出会いの話』

第1話 『不適合者』

 ぼくは、にんげんしっかく、らしい。

 医者や科学者に、そう言われた。


 そしてその日から、町のすみっこにある研究施設の一室に隔離されて、白い壁を見ながら、たいくつな日々を過ごしてきた。

 そんな生活も長きに渡って、ぼくはもう十一歳だ。お父さんもお母さんも、迎えに来たりはしない。

 ぼくにご飯をくれる大人たちは、「お前と同い年の子供は、もう立派に社会に出てる。お前は可哀想なやつだ」なんて口々に言う。

 一つ言っておくけれど、ぼくは別に体に不具合のある人間というわけじゃない。

 歩けるし、喋れるし、考えることもできる。これでも、六歳くらいまでは、科学者のお父さんにも期待されていたんだ。

 だけど、期待通りにはいかなかった。

 ぼくは今現在で、おそらく世界にただ一人の、『不適合者』という貧乏くじを引いてしまったんだ。

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