Episode Ⅹ


「…とにかく俺飯作るわ」

「…うん…」



『桜の舞い散る校庭で出会った君

ニコリと笑った君は

「友達になろう」と言ってくれたね


君と出会って二度目の春

ニコリと笑って僕は

「好きだ」と想いを伝えました


「ごめんね」悲しそうに笑う君

その日から君は僕と話さなくなった


君と出会って三度目の春に

君は悲しそうに笑った


「気づいてないのかな。エイプリールフール だったこと」


「嘘」じゃないのに

「嘘」をつくわけがないのに


君を悲しませてしまったね

本当の気持ちだったのに


「好きです。本当に」

そう伝えると君は

「私も」


そう笑ってくれた』


「…いい曲、なのかな。わかんないや」


…でも、なんだか


口ずさみたくなる。


「エイプリールフールの嘘、か…」


彼女は嘘をつかれたのが悲しかったんだね。


「…お父様…」


私が死んでからあれからどうなったのかな…。


…ハルは三年間一体何を…


「…好きです。本当に…」


…あれ?

涙が勝手に…


「…明日。聞いてみる、かな…」


青木くんに…


「やめろ。それだけは」

「え?あ、美味しそ…」


水魅が両手にオムライスを持ってやってきた。


「嫌な予感がする。アイツには近づくな」

「…別に…あなたの方が危険だと思いますけど…いただきます」


わー、美味しそう。

これ全部水魅が?


意外と家庭的だ。


「…ん、美味しい…!」


お店のオムライスみたい…!


「一人暮らし歴四年だからな」

「…へぇー…」


四年…ってことは十六歳の時から…?

つまり、高校一年生の時…?


「食べ終わったら流しに突っ込んどけ。出掛けてくる」

「えっ?ちょっ、どこ行くの…」


「仕事。俺これでも一応アイドルなんですけど」


…げ。


「じゃあ私も行く。こんな所に一人なんて嫌だ」

「……邪魔すんなよ」


こんなだだっ広い場所に一人なんて有り得ない。


「あ、水魅!遅いじゃないの!遅れる…げ。誰この女」


第二の女かぁ~?

水魅って、そんなに女好きなの?


「清水さんには関係ねぇよ」

「あるわよ~。スキャンダルになっちゃうじゃない~」


「いいから飛ばして。この子も乗せてくから」

「はいはい。名前は?」


「えっ、えっと、神崎初華です」

「あたしは清水陽子。じゃ初華。シートベルトしっかり締めな」


その人はカッコイイ笑顔でそう言った。


「…へ、う、きゃあああ!!」


なにこれ私死ぬぅ~~!!

なんでこんなスピード出すの!?


捕まらないの!?


「な、永瀬これ大丈夫なのぉ!?」

「心配するな」


いやするわ!!


「…着いた。出ろ」

「も、もう…?大丈夫、なの…?」


「ぜーんぜん。捕まる心配もねーし」


スタスタと車を降りて建物の中に入っていく水魅。


「…バケモンだ…」


「ほら。初華、早く入んないと。今回は特別だからね」

「は、はいっ」


すごい。テレビ局って初めて…


「こらこら。水魅の撮影場所はそっちじゃないわよ?」

「は、はい、すみませんっ」


「今日はミュランの収録だからね。blueskyもいるかもよ?」

「ブルー…スカイ…。青木くんの…」


会えるかな。

会えるといいな。


「静かにしててよ。多分収録中」

「はっ、はい…」


『「好きです。本当に」そう伝えると君は』


うわっ、ビックリした。

さっきテレビで聴いてた曲…


……つまり


青木くんがいるっ……!!


「遅れてすみません」

「すぐ準備して。君の出番次だよ」


うわ、歌うんだ水魅…


「…はー、疲れた。今日喉痛いんだよね」

「…あ、あの、のど飴ありますよ?」


「……は?」


…私のバカ。おせっかい。

知らない人にのど飴なんて…


「…君、誰?見かけない顔…」

「……あぁーーーっっ!!青木くん!!」

「コラ初華!!」


「カーット!君、何大声出してんの!」


「す、すみませんっ!!」


…っどうしよう。

私、迷惑になっちゃった。



「き、清水さん。私もう帰りますね、すみませんでした…」

「ちょっ、待って」


「え?あ…えっと…青木、さん…」


ヤベェ、殴られる。



「……ナチ=ハリターナ。アイ王国の姫君」


「…え?」



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