第8話 離脱2
『離脱1』でも書いたが、私の2回目の幽体離脱体験である。
高校卒業間近の冬、深夜就寝中に突然起こされた。
私の、こめかみに強烈な圧力が掛かったのである。
ビクッとなって、目を開けるとナニモイナイ。
金縛りにもなってない。
ただ、こめかみに痛いくらいの圧力が掛かっている。
片手で、こめかみをギリギリと締め付けられているのだ。
こめかみに感じる感覚は、大きく力強い手で掴まれているような感覚だ。
私は、しばらく布団のうえで転がり回った。
鈍く痛むこめかみより、ナニカに掴まれている感覚は、ひどく不快である。
顔の前で、見えない手を振り払おうとするが、私の両手は、空を切るばかりである。
私は、うつ伏せになり布団にうずくまった。
しばらく呻いていると、
突然、グルンと身体をひっくり返された。
仰向けにされた私の身体の上には、確実にナニカが乗っかっている。
格闘技で言うところのマウントを取られたような感じなのだ。
必死に、叫びながら、両手で見えないナニカをどかそうとするが、やはり両手は空を切るばかり。
少しすると額を、ものすごい力で、布団に押し付けられる。
布団に沈めるように、全体重を私の頭に押し付けてくるのである。
苦しく、恐ろしく、私はいつしか抵抗を諦めていた。
ふいに、押し付けられていた頭がスッと軽くなった。
瞬間、ふたたび、こめかみを掴まれる。
幾度か頭を揺さぶられる。
(やめてくれ……)
私は、すでに言葉を発することができなかった。
ズルリという感覚が頭を襲う。
私は、胸のあたりまで上体を起こしていた。
何だか、自分で支えられないような不自然な角度である。
こめかみは相変わらず、力強い手で掴まれている。
一瞬、こめかみから手が外れたように感じた直後、
今度は、頭を両手で、左右から押さえつけられる。
ふたたび、身体を左右に振り回される。
木に打ち付けた釘を手で外そうとグリグリと揺さぶるような感じである。
ここで気づいたのだが、私の身体は仰向けで、布団で寝たままなのである。
何と言うか、上半身だけ霊体を引っこ抜かれたような状態で、今まさに下半身を引き剥がそうと身体を揺すられているようなのである。
(もうダメだ……)
そんなことを考え始めていた。
死を覚悟したのだ。
私は、ただただ、見えないナニカに身体を預けていた。
揺さぶられたり、上から引っ張られたり、どのくらいそうされていたのか解らない、
ずいぶん長い時間のように思える。
身体の揺さぶりが収まった。
私の上半身は、突然、顔面を蹴飛ばされるように、
ガンッと飛ばされたように感じた。
反射的に、後頭部を両手で庇ったように思う。
目を開けると、天井が見える。
ものすごい汗をかいている、なにより、身体中に押さえつけられていた感覚、鈍い痛みも、まだ残っている。
ひどく疲れた。
(生きてる…のか?)
私は、仰向けのまま、目だけを左右に動かす。
ナニモイナイ。
起き上がろうと、両手に力を入れたとき、
右手首を掴まれた、反射的に右手を見ると、左の耳元に
「……」
ほんの一言であったと思う。
ボソリと男の声がした。
聞き取れなかったが、私には
『ザンネン』
と聞こえたような気がした。
生臭い口臭が鼻に残っていた。
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