うちの社長がわざわざネットに炎上ネタを書き込むわけがないハートフル物語

かわんご

第1話 →ここが編集できることに気づく

 今日、富士見にある第三本社ビルの会議室でカクヨムという新サイトの報告を受けた。

 カクヨムとはネットユーザーが自分で書いた小説を投稿できるサイトだ。

「なんだか、順調なスタートみたいじゃん」

「おかげさまで、いろんな意味で話題になっています」 

 そう、カクヨムはスタートした日から、さっそくネットで話題になっていた。実はぼくもサービスの開始は、はてなブックマークのホットエントリで知ったのだ。

「あの小説だか暴露記事だかなんだか分からないやつ、あれ、面白かったよねえ」

「ええ・・・」

 報告に来た担当者たちは気まずそうに黙り込んだ。

「いや、あれはよかったんじゃないかな。小説サイトにあんな可能性があるとは思わなかった。ああいうのが流行るのも面白いんじゃないかな」

「暴露サイトとかになる可能性いうことなんですかね」

 担当者は、嫌々そうながらも話を合わせてきた。

「そうだよ。暴露サイトとか、ふつうの日記とかブログとかもありえると思ったよ」

「そうですか・・・」と元気のない相づち。

「作者のかたには昨日もご連絡をさしあげて、なんとか円満に解決できるようにお話をさせていただいています」

「へー」

「何年も前の話ですが、いま契約していただいている他の先生方を不安にさせるわけにもいきませんから」

「なるほど」

「来週にはランキング機能がスタートするのですが、このままだとホラー部門のランキングにぶっちぎりの1位で表示されてしまいます。そのまえに解決して、できれば先方さまが自主的に消していただければいいのですが」

「えー、いまさら遅いよ。むしろ残すべきでしょ。堂々としたほうがかっこいいと思うけどな」

「K社は懐が深い、ということを見せるということでしょうか?」

「いや、懐が深い、という見方もあるかもしれないけど、単純にそっちのほうが面白いと思うんだよね。あの文章が小説投稿サイトに載ったということに、ぼくは本当に感動したし、可能性を感じたんだよ。消されるのはもったいない。」

「そういう意味ではカクヨムに投稿されている小説は、本当に多様性があります。ファンタジーだけじゃなく、実用書やドキュメンタリーみたいなものもたくさん投稿があってぼくらも驚きました」

「ブログのかわりみたいな使い方もありえるよね。あ、そうだ、ランキングには表示しないぐらいがちょうどいいかも」

 話が突然とんだことに面くらいながらもちゃんと返事があった。

「例の小説はランキングにはでてこないようにするということですか。可能かもしれませんが」

「そうそう、そういう機能があるかどうかしらないけど、ランキングに表示しないぐらいがちょうどいいんじゃないかな。ネットユーザーもなにも反応しないのも、やっぱり期待を裏切ると思うんだよね。大丈夫だよ、ランキングに載ってなくても、”やっぱりな”、”さすがに載せられないか” みたいな反応で、たぶん、むしろそっちのほうが予定調和っぽい気がする」

「やったほうがいいでしょうか?」

「いや、やんなくてもいいけど、やってもいいし、どっちでもいいんじゃないってこと」

「はあ」

 そんな無責任な会話をした今日の午前、きっと担当者は困っていたことだろう。





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