黒百合とクラムボン

ヤマナシ

おはようのキス

今日もとても綺麗。

白い肌に咲いた無数の赤い華。涙の跡。

昨日は可愛く啼いてくれた、私の大事な大事な花。咲いたばかりの綺麗な花。


「ん…うぅ?」

「あら、起きたの?おはよう花。」

「あっ、おはようございます」


シングルベッドの上、半裸で微笑み合う2人の女の子。毎日やっているようにおはようのキスをする。

異常な光景だろうか、しかし彼女らは愛し合っているのだから、世間がどう思ってようと関係ない。むしろ、なぜいけないのかがわからない。


(男の人だって、オネエとかオカマとかいるじゃない)

花はいつもそう思う。逆はだめなのか。

そしてもう一つ、この先輩はなぜ私を愛してくれるのだろう。


それもそのはず。黒木 小百合というこの少女は、県内一の進学校の生徒会長であり、みんなの憧れの的であり、とにかく、花とは月とすっぽんのようなものだから。


(先輩は本当に私が好きなのだろうか)

毎日、愛してると囁かれても、深くキスをしても、拭えない不安感はそこにある。


「本当に愛されてるのかな。とか思ってるのかしら。」

唇から出た独り言は体をつたってフローリングに転がった。

花が身支度をしてる間に、朝食をつくるのももう慣れた。先週、18の誕生日を迎えた私に彼女がくれたエプロンを着る。

私と彼女は同棲しているのだけれど、それには訳があって。


彼女は一年前の事件の被害者。

彼女以外の家族は殺され、家を燃やされた。

その時、彼女は私といたから助かった。

ちなみに犯人はまだ見つかってない。


親戚との縁もほとんどない花を放って置けなかったので、私が引き取った。

自分で言うのもなんだけど、割とお金持ちな家だったから。


「わぁ、いい匂い。お皿並べますね!」

こうやって笑ってくれると嬉しい、愛おしい。

今日も私たちの日常は始まる。

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