3
ふと、何かを感じて、キルリアは突然目を覚ました。まだ、辺りは薄暗いが、窓の外には朝の気配がある。
キルリアは、ベッドの上に起き上がり、じっと、感覚を研ぎ澄ます。今、感じた何かを探り、早朝の静寂に耳をすます。五年間、学院に在籍し、得た直感が、何かの異常を訴えていた。嫌な予感と、焦燥が、何か不吉な事を訴える。そして、キルリアは、その気配にたどり着いた。よく知る、しかし、ここではあり得ない、あってはならない気配。
〝光〟の気配だった。
つまり、なぜだか分からないが、ライトル人、たぶん、ライトリアがこの城に来ているということだ。
キルリアは、焦った。
この気配に、魔王が気付かないはずはない。焦ってベッドから降りたキルリアは、手に触れたそれに気がついた。
黒いローブだった。
あのあと、ヴァツェルが来て置いていったのだろう。キルリアは、熟睡していたのか、全く気付かなかった自分に苦笑する。とにかく、そのローブを手にとり、そのままだった私服の上に着た。袖無しの私服ではいくらなんでも寒い。
ローブを着ると、扉に近付き、駄目もとで開けてみる。しかし、扉は、以外にも素直に開いた。
不審に思いながらも、慎重に外に出て周りを見るが、人の気配はない。
なぜだか分からないが、見張りすらいないのだ。おかしいとは思うものの、今はそれどころではない。
さっきの気配は、眠っていたキルリアですら感じられた。これに気付かない魔王ではないだろう。
焦っている自分に気付き、落ち着くよう言い聞かせる。とにかく、魔王が彼らに接触する前に、彼らをここから逃がさなければ。キルリアは、気配を感じた方に走りだす。
今更ながら、あの牢で、少しでも助けを望んだ自分が嫌になる。
彼らの目的がなんであれ、こんなところにきてはいけないのだ。ましてや、助けなんて無意味だ。ただ、魔王の刃にかかる犠牲者が増えるだけだ。
そうして、キルリアは、気配を感じた広間に急いだ。
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