研究員の日記 七月十三日(プロローグ 20/25)

 研究員の日記 七月十三日


 叢雲むらくも博士が帰ってきた。亮次りょうじも連れて。

 驚いたことに、亮次は松葉杖を突きながらも元気な顔を見せてくれた。


「ご心配をかけました」


 と、腹の傷に障るからか、首だけを小さく倒して挨拶した亮次を、我々は心から歓迎した。

 涙を流して亮次に抱きついたのは隊長だった。

 亮次も、「痛いです隊長」と言いながらも、満面の笑みでその抱擁を受けた。

 研究所の医師などは、正直あの傷からここまで快復できるとは思わなかった、と、私にぼそりと本音を漏らした。そして博士に、何という名前の医師が手術したのかと尋ねていたが、答えをはぐらかされたようだ。

 亮次は傷の手当てがあるため、今日は快復した報告だけ行い、このまま帰るのだという。亮次はすぐに所員が運転する車に乗って研究所を後にした。


 昼食を挟んで、博士を交えて会議を行った。一刻も早い錬換れんかんプログラムの量産と、兵士の育成。短い会議で出た結論は、至極当たり前の結論だった。

 博士は夕方には自分の研究室へ戻り、研究を再開するという。博士なしでこちらでできることはやり尽くした感がある。我々にできることは待つことだけなのか。


 隊長がもう一度向こうへ行って偵察をしたいと申し出たが、所長は却下した。

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