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時計の針が12時をまわり

お昼の休憩時間にはいる


「美加さん、今日はお弁当?」


早紀は隣のデスクでパソコンに向かっている美加に声をかけた


「ううん、今日は作って来なかったから

マス屋の日替り定食食べたい!

でもちょっとだけ待って!

これだけ入力しちゃうから!」


パソコンから目を離さずに答えた美加は

手が忙しそうにキーボードの上を動いている



「OK~マス屋ね。

私ちょっとお手洗いに行ってるね」



早紀は席を立つとロッカーから

財布とスマホを出すとトイレに向かった


歩きながらスマホの画面を開くと

1件のメールが届いていた


昨日問い合わせをしたいたことへの返答メールだった



「…やった!在庫あった~よかった♪」



ドカっ!



「キャっ」


メール内容を一読して喜んだ瞬間

男性トイレから出てきた人と

思いきり肩がぶつかった


その拍子に持っていたスマホが

男性の足元に落ちた



「おっ…と、悪いっ!

…大丈夫?」



この声

この香り


早紀は軽いデジャヴを感じた


「悪い、大丈夫?」


もう一度声がした


声の主は渡瀬。渡瀬孝久だった。



「すいません私の方こそ前見てなくて」


早紀が落ちたスマホを拾おうと手を伸ばすと

紙一重で渡瀬が拾い上げ

早紀の前に差し出した


「あ、ありがとうございます」


受け取ろうとスマホに手をかけた時


「好きなの?」


渡瀬の口元が笑い

まったく予期しない質問が飛んできた


「へっ?」


早紀は間の抜けた声を出すほど面食らった


いきなり何?何が好きだって?

この質問の主語は何だ?


早紀の頭は返答にパニックになった


「俺も ー 」


渡瀬が何か言いかけたところで


「すいませんお待たせしました!

メシどこいきます?!」


勢いよく林田が男性トイレから出てきた


「おっそいよお前。

マス屋の刺身定食終わったら

どうしてくれるんだよっ」


渡瀬は笑いながら

林田の足に軽く蹴りを入れた


「ちょっ!すいませんって…!

…ってあれ?間野ぢゃん何やってんの?」


渡瀬の蹴りをよけたところで

そのやり取りを驚いた顔で見ている

早紀に気づいた林田は

早紀と渡瀬の顔を交互に見た


「あぁ俺がトイレから出たら勢い余って

ぶつかっちゃったんだよ。

それより急ごうぜ、俺の刺身が終わる」


渡瀬はそう言うと林田の肩をバンっ!と叩いてエレベーターの方に早足で歩き出した


「いってぇ!ちょっと待ってくださぃよ~

…あ、じゃあな間野!」


林田は叩かれた肩をおさえながら渡瀬の後を追った



その場に取り残された早紀は

嵐が去ったような感覚で2人が乗ったエレベーターの方を見ていた


「ごめんね~おまたせ!いこ?」


急いでやってきた美加が早紀の顔を覗き込んだ美加の顔を見て我に返る


「あ、うん!えーと、どこ行くんだっけ?」


「マス屋だよマス屋♪日替り!」


美加が楽しそうに笑った


「あぁ、そぅだった、マス…」


ー マス屋? さっき確か… ー


「!!!」


早紀はあることを思い出した


「美加さん!ちょっとマス屋はまた今度に!

パスタにしよ!ねっ?!」


「へ??」


早紀はポカンとしている美加の手を引き

エレベーターに乗せた



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