3

5Fの数字が点滅し

エレベーターの扉が開く

早紀たち3人を含め数人がこの階で降りた


「じゃあな」


林田は降りてすぐ

早紀と美加に向かって軽く手をあげて

エレベーター前に左右に通る廊下を

右に歩いて行った

林田が歩いていった先は突き当りが

ガラス張りのスモーキングルームになっている


仕事前の一服は林田の日課なのだ


早紀と美加は林田とは逆方向 左へ歩きだした

こちらの突き当たりはオフィスになる


ロッカーに荷物をしまい

化粧直しをかねてトイレに行くのが

早紀と美加の毎日の習慣だ


エレベーターとオフィスの中間にあるトイレは

給湯室を挟んで左右に男女分かれている

男性用に比べ女性用トイレは

パウダールームが設置されていて広い



「そういえば、

今日から債権管理部の課長が

新しくくるんだっけ?」


美加がパウダールームの大きな鏡の前で

ファンデーションのスポンジをおでこにあて

洗面台で手を洗う早紀に鏡越しに話しかけた


「あー。そうだったね」


早紀も手を拭きながら

美加の隣にたって鏡を見た


「管理部も大変だよね…

カードの未払い多くて。

なかなか回収出来ないから目標数字い

かないからすぐ責任者が変わって…。

林田も大変だ」


「そうだね。

私たち審査部とは全然違うもんね」


「誰が来るかわからないけど

同じ空間で仕事してる以上

あんまり変な人だったらいやだなぁ」


美加は前髪の癖を直しながら口を尖らせた

早紀は鎖骨にかかるダークブラウンの髪を後ろでひとつにまとめながら


「そーだなー…

社歴が長いベテランで

すっごく怖い人だったりして…」


と鏡越しにニヤっと笑う


「え~やだ~ 空気がビリビリするじゃ~ん」


早紀の予想に美加は両方の頬に手を当てて

大げさに頭を振って見せた


「ほらもう時間 いこっ!」


早紀は笑いながらスマホに表示されてる時計の数字を見せた


二人は目の前の大きな鏡に向かって

身なりを確認し

パウダールームを後にした

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