風の又三郎

@doz

第1話

今から100年も前の話だそうだ


田舎の尋常小学校に一人の男児が転入してきた

年は11歳6年の教室に入る事になった

前日にその男児の祖父が学校に来ていた

「内気な子なので目を掛けて欲しい」

そう言っていた

祖父は70近くに見え、粗末な着物を着て腰が大きく曲がっていた

しかし、前日は休みで校長しかおらず

祖父を見た人は校長しかいなかった

転校のいきさつなどは一切話さなかった


担任は朝から男児を待っていた

30歳男の先生だ

男児はなかなか来ない

職員室の時計を見ながらさらに待つ

時間ぎりぎりまで待ったが来ない

仕方が無いので教室に行く事にする

木造校舎の階段を上がると廊下には生徒はいなかった

もう、授業の時間直前だった


教室の引き戸を開けようとした瞬間

グイッーーーー

もの凄い力で腕が後ろ側に引かれたのだ

慌てて体勢を立て直す


驚いた男児が居たのだ

腕は掴まれたままだ


驚いた顔で「転校生か?」と聞いた

男児は何も言わない

「どうしたんだ」

ギュッツツ

大人でも出さないような力で腕を握ってきた


おかしい・・・



「又三郎」

男児が口を開いた

小6にしては低い声だった

体も大きく背丈も担任とさほど変わらない

丸坊主でつぎはぎだらけのボロボロの着物をきていた

風呂に入って無いのか体は汚れていた


「教室に入ろう」と担任に言われ教室に入っていった


担任教師が紹介をした

名前をみんなに言ってくれと言われ「又三郎」とだけ言った

どうしようもなく不恰好な自己紹介の時間だった


担任はその日の朝、気になる事を聞いていた

「ウサギ小屋のウサギが一羽血を流して死んでいた」

校長から朝一番にそう聞かされていたのだ

校長が朝一人で掃除したらしい

担任はウサギの事は子供達に話さなかった


又三郎はいつも穏やかな顔をしていた

自分から口を開く事は無かった

しばらくするとイジメッ子集団にからかわれる様になっていった

勉強はまったくできなった

運動も苦手だった

帰り道、殴られる蹴られるのイジメを受け始めていた

学校では教師がいるためが受ける事は少なかった

転校してきて10日ほどが過ぎていた


次の日、担任教師が学校に着くと校長に呼ばれた

ウサギ小屋に来るようにとの事だった

校長は慌てた様子で小走りにウサギ小屋まで行った

担任も小走りに後を追った

「これを見てくれ」

そこには10羽近いウサギが血を流して死んでいた

「これは・・・」

それ以上言葉が出なかった

中に入って行く校長の後から担任も中に入る

おかしい・・・

動物などの仕業ではない事はすぐに分った

頭と胴体が完全に切り離されて目玉に木の枝が刺さっている

耳は力づくで引き千切られ

股は引き裂かれて内臓がはみ出していた


校長は鍵はかかっていたと言っていた

ふたりでウサギ小屋を急いで片付けた

子供達には小屋が壊れ逃げてしまったと話しておいた




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