彼の場合。

僕は思う。この恋をどうしてやろうか。この恋を少しだけ壊してやろうか。

僕は思う。この恋がもし叶わないのであれば、いっそのこと、彼女の近くで、できるだけ彼女の近くにいたいと、そう思った。

彼女の妹に告白されたのは、夏の夜の、少し湿気の多い、実に湿っぽい夜だった。

彼女は極度の恋愛依存症のようで、しかも友達が多いことで有名で、彼女を振ろうものなら、僕の居場所が地球の端っこまで追いやられるような、そんな局地的な状況に陥るのだ。

それはどうしても避けたかった。僕はできるだけ平和に生きたかった。

親は離婚した。兄弟は音信不通。僕だけは幸せに、僕だけは、平凡な人生を送りたかった。

そんな時だった。彼女に会ったのは。まさにこれは運命的な一目惚れだった。

これはどうにかして、この人を手に入れたいと思った。どうしてもこの髪に触れて、その顔を官能的に歪ませてみたかった。

「おめでとう。」

その笑顔はどこまでも美しかった。どこまでも輝いて、どこまでも真っ直ぐだった。

「ありがとうございます。お姉さん。」

その笑顔、もうすぐ、僕のものだね。

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