夜魔

SIN

第1話

 デビルバスターと呼ばれる職業が存在している。

 勤務内容は町の安全を守る事。

 警察とは違った視点から町を守るのが仕事。

 まぁ、読んで名の通り、デビルバスターとは悪魔退治を専門としている。

 少し前までなら悪魔とかは一種の都市伝説として片付けられていた筈のモノだったと言うのに、最近はいる事が普通で、厄介な問題を起こすモノとして恐れられている。

 厄介な問題とは具体的に言うと人食行動と、人間をゾンビにしてしまう事。そのゾンビ達も人間を襲って食べるので、退治するべき悪魔になってしまう。

 法律で“ゾンビは人と認めず”なんてのも出る位悪魔問題は拡大していた。

 そんな悪魔を退治する職業、デビルバスターとして俺は働いている。

 俺の担当はゾンビ退治と “夜魔”と言う悪魔退治。

 夜魔を初めて退治したのは今から半年前の事で、研修期間が終わり、先輩に付いて初めてパトロールに出た時だった。

 その日はチラチラと雪が降っている鬱陶しい日で、ゾンビが町中で暴れているという最悪な日だった。

 先輩と俺はゾンビがいると連絡を受けた路地裏に急行し、そこで1体のゾンビを退治した。そして現れた2体目のゾンビ。撃ってみろと言われて悪魔退治専用の銃、デビルガンを構えた。

 パンッ!パンッ!

 ユラユラと動き回るゾンビ、全く命中しない銃弾。徐々に近付いて来るゾンビは、俺を食べようと歯を剥き出しにしながら手を伸ばしてくる。

 パァン!

 目の前で崩れ落ちるゾンビは、先輩の放った弾を額に受けて動かなくなり、少ししてシューと言う蒸発音と共に消えていった。

 もう少し腕を上げなきゃ駄目だ。

 そう言って笑った先輩は、2体のゾンビを退治したと連絡を入れる為に車を止めている場所まで歩き出し、俺も後に続いて歩きながら、何気なく空を見上げた。

 俺達を見下ろしている1人の美しい女がいた。

 夜魔だ、そんな単純な事ですらスグには出て来ないほどの美しさ、フワフワと浮かぶ美しい女を、この時の俺は天使か何かと勘違いしてしまった。

 気付いた時には女は牙を露にして、凄まじい勢いで先輩に向かって飛んで……。

 咄嗟に構えたデビルガン。ありったけの弾を女に撃ち込んだ。

 シューと言う音をたてて消えて行く女、その下には動かない先輩の姿があって、女が完全に消えてからユラリと立ち上がった。

 弾は、もうない。

 本当なら、俺の人生はそこで終わっていた筈だった。けど、そうにはならなかった。

 先輩は、足元に落ちていた自分のデビルガンを俺の方に向かって蹴ってきた。偶然だったのか、そこに先輩の意思があったのかは分からない。だけど、先輩のデビルガンを構えた俺の前に立った先輩は、両手を広げたまま立ち止まり、動かずにジッとしていたんだ。

 パァン!

 先輩、俺は今、立派なデビルバスターですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る