第2話
ぶつくさと文句をぶつけながら朝のコーヒーをお互い楽しむのはここ最近恒例化しているのだった。すると、管制官からのアナウンスが室内に響いた。
「ほら、行くで。アプローチが始まるで」
珈琲をお互い飲み干すと、私は彼女に言われるがまま装備を取り付け、部屋を後にした。
連絡業務、とはいうものの管制業務ではない。管制業務は管制官の仕事である。連絡官である我らはアプローチをかける機との交信は着陸後にしかできない。むしろ、機体が陸上に在るときに私たちは動き回る。機体、乗組員、搭載物資の確認と管理もあれば運輸業者や便乗する業者との折衝もあり、国交省や国防省、外務省との連絡も担当する、それが開拓機構極東支部連絡本部のお仕事であるのだ。
「今日は国防軍士官が3名、国防省の背広組が2名、オーストラリア人が2名、アメリカ人が3名、フィリピン人の技術者が5名。そして、もともとの乗組員がいつも通り5名で、鉱物資源が10キロ。」
「しっかし珍しいですね、人員輸送の機体に鉱物資源積み込むなんて」
「せやなあ。なんや研究機関に持ち込むもんらしくて他のもんとは一緒にしたくないとか」
「モノリスでも見つけたんですかね」
「ほしたら、土星に出発せな」
「私たちはまだ火星までしか行けてないですけどね」
そこをどないかするんが技術者の仕事やろ!としばかれた。そんなことを言っても私は情報系出身なんですが…。だいたい、この人も技術者じゃあないですか。
さて、そんな丁々発止のやり取りをしているといよいよ機体が西の空に見えてきたのであった。成層圏突入を終えればもう航空機と変わらない、そんな宇宙船のアプローチ。というわけで私の仕事が本格化するまであと少しだというわけだ。
現在、私たちはドックの中に在る事務室にてモニタを眺めながら各省、各社の担当者たちにあーだこーだを話し、話され、互いに理解を深めながらその時を待っている。
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