あたしは決めた。
「はなちゃん。そろそろ千葉先生とお話しなくちゃいけない時間なの。もう大丈夫かな?」
「やだ。まだまだ。」
「もう、先生今日で最後なんだから、いろいろとお仕事あるの。わかるかな?そろそろね、お願いだから。ね?はなちゃん。」
「いえ、僕はまだ時間ありますから。」
「まだまだ。もう一つ絵本読んでもらうの。約束したもん。」
「約束したの?それならしょうがないわね。千葉先生、よろしくお願いします。まだお母さんお仕事長引くみたいなので。先程電話があったので。」
「わかりました。僕のことは本当に気にしないでください。ほとんど片付けも終わっていますので。」
「そうですか。では、お願いしますね。はなちゃん、もう少しだけ待っててね。もうすぐしたら、お母さんきっと来るからね。」
「うん。待ってる。先生と待ってる。」
「あら、偉いわねー。では、千葉先生お願いします。」
またあなたと二人きり、もう少しだけ、もう少しだけ。
「じゃあ、続き読もうか。えっと、どの辺だったかな。」
「先生は、結婚するの?」
「ん?そうだね。結婚するんだよ。」
「結婚すると、みんないなくなっちゃうの?」
「ん?いなくならないよ。先生はさや…あ、結婚する人と一緒に海外に行くんだよ。」
「かいがい?そこって遠いの?」
「そうだね。遠いね。」
「あたしは行けないの?」
「そうだね。でも、はなちゃんが大きくなって、海外に行きたいって思ったら、僕が案内してあげるね。カナダってところだよ。」
「かなだ?そこって楽しい?」
「そうだね。楽しい場所だよ。」
「じゃあはなも行く!行きたい!」
「大きくなったらね。今でも行けるかもしれないけど、はなちゃんのお母さん忙しそうだからな…」
「じゃあ、大きくなる!あたし大きくなって、かだなに行く!」
「うん。待ってるよ。」
大きくなるんだ。
大きくなって、うんと大きくなって、かだなに行くんだ。
そして、先生と結婚するんだ。あたしはそう決めた。
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