惰性図書館-a deadly space-

雨皿

p1. 本は適当に突っ込んでおきなさい

         ***

 一日目  おっきなうんこの出た日曜日

         ***


「あの、この本を探しているんですが…」

「そんな本、ここにはありません」

「ですが…ボクは、どうしてもこの本が読みたいんです」

「許しません。あなたがこの本を読むことを私は許しません」

「どうしてですか」

「その本を読まなくても、あなたは死なないからです」

「読みたい本をリクエストするのに、生死は関係ないんじゃないですか?」

「あなたのリクエストが、あなた以外の本読みを満足させる可能性は一縷に満たないことが、予測されますので、リクエストを受け付けることはできません」

「なんだこいつ」

「こいつとはなんです?こいつとは。これでも私、立派な司書なんです」


 マジでなんだこの図書館。マジでふざけんなよ図書館。真面目に業務しろや図書館。適当に机叩いて脅しちゃってもいいんだぜ。そこのおねぇさん。


「ちゃんとさんを付ける所に(ちっちゃな)男気を…感じます」

「そこは童貞じゃないんですか?」

「童貞って言って欲しかったんですか?お兄さん」

「ボクはまだ高校生じゃボケェ」

「あなたの名前はなんていうんですか?」

「アルル」

「可愛くない名前ですね。それではブラックリストに入れておきましたので、二度とこの図書館に来ないでください。来たらぶっ殺します」

「おねぇさん、きんもい」


 というわけでボクは図書館から追い出された。

 一般庶民が借りたい本を所望することも、っていうか探すこともできないこの図書館は一変潰れた方がいいと思った。のだが、こんな感じの経営(笑)で80年くらい続いているから驚きだ。なんか、戦中くらいにできたっぽい。貴重な資料も沢山あるらしいが、あんまり整理だとか調査みたいなのは進んでないっぽいそうだ。って、なんでボクがこんなこと喋らなくちゃいけないんだ。

 




           ***

二日目 考えたらこの町にはこの図書館しかなかった。

           ***


「ボクを中に入れてください」

「いやです」

「お菓子を持ってきました」

「どうぞ、お入りください」


 噂どおりちょろかった。

 お姉さんの名前は聞いたが忘れたので、これからもお姉さんにしておく。本当はおばさんであり、おばあさんであるが、時折ナイフがリアルに飛んでくるので、間をとっておねぇさんにしておく。これで皆ご機嫌ですね。

 

「リクエストしておいた本が新着図書のコーナーにおいてあった」

「アルル君じゃないアルル君が本を頼んでくれたみたいにょ」

「そうなんですにょ?」

「それで、何の本が読みたかったにょ?」

「世界中の、色んな所の場所が載った写真です」

「そんなもん見てどうするの?」

「色々な風に使います。例えば、コラージュだとか」

「●●●●とか?」

「なんすかそれ、汚いっすよおねぇさん」

「検閲よ」

「検閲じゃないっすよ」

「自己規制よ」

「なんでも規制すりゃいいって話じゃないですよ?」

「ついったらー面白いもんね」

「本より面白いっすね」

「じゃぁもう永久に図書館に来ちゃダメ」


 こうしてボクは図書館を出禁になりました。

 全く以てよくないです。

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