第10話
結局は、僕は全てを語った。それはあいのことを含めて、全てだった。
あいの死体を食べたという秘密を語ったのは、初めてのことだった。流石の彼女も僕のその言葉には息をのんでいたようだったが、彼女は何も言わず、僕の告解を聞いていた。
おさまっていた筈の雪が再び強くなり始めていた。
「あいさんとクロを食べたとき、幸助君はどう思ったの?」
そう問われ、僕は言葉に窮した。そのときの気持ちを言語化することが、この日までの僕にはどうしてもできなかった。正負両方の感情が渦巻いていた事は確かだったが、何か一つの言葉をそれに与えれば、あの経験は一挙に陳腐な出来事になり下がる様な気がしていた。
僕は無言をもって彼女の問いに応じた。
「ごめん……」
彼女は一言謝罪の言葉を口にする。
そして、そのまま彼女は黙り込んでしまった。多弁な彼女には珍しいことだった。
彼女は何か迷っている様だった。遠くを見つめ、顔を伏せ、口を開いては閉じ、手で身体を摩り続けていた。
雪が強い。帰ろう。
僕がそう言おうとした時、彼女は漸く僕に向きなおって言った。
「ノワールを殺すとき、一緒に来て……」
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