第3話

 僕は家に帰ると、ポケットのなかから彼女の骨を取り出す。その骨は乱暴に掴んだ為か、崩れてしまっていた。僕は慌ててポケットをひっくり返して、骨の欠片を集める。

 小さな欠片になった骨。改めて観察すると彼女の骨はすごく綺麗だった。まるで砂浜の砂みたいな白い、白い骨だった。

 食べよう。そう思う。

 なぜなら、僕は彼女を愛していたから。

 だから、これを食べたら、僕は彼女と一つになれる。

 ずっと一緒に居られるんだ。

 意を決して、僕は小さな彼女の欠片を口に運んだ。石が口に入ってしまったときのようなじゃりじゃりとした口当たり。僕はそれを一気に呑み込む。

 瞬間、むせかえり、僕はごほごほと大きな咳を飛ばす。それでも、彼女の骨はしっかりと胃に押し込んだ。

 彼女が僕のなかに入ってくる。彼女が今僕のなかにいる。これで、僕達は一つになり、ずっと一緒に居られる。

「あいちゃん……」

 僕は彼女の名前を呼ぶ。

「ずっと一緒だよ……」

 僕は一人、暗い部屋の中にうずくまる。これで、すべてうまくいったはずなんだ。お肉じゃなかったけれど、骨でも食べたことには変わらない。だから、これでよかった。よかったはずなのだ。

 気がついたら、僕はだらだらと流した涙と鼻水で、顔を汚していた。彼女が死んでしまったと聞いたときも、彼女が燃やされてしまったときも、流さなかった涙だった。どうして、僕は泣いているんだろう。

 それはきっと彼女の可愛らしい八重歯をもう二度と見られないということに、気づいたからだと思った。

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