道しるべ
@piropa
出会い
空が赤い…
いつからだろうどこまでも晴れ渡る真青な空の色を見なくなったのは、この世界はもう終わっている。
海、空、大地、全てが瘴気に侵されてしまっている。
何があったか説明するのは難しい、理由を辿れば原因は汚い人間達なのだから、無論僕は違うなんていう気はない全員が原因であり、全員が犯人である。
この世界には統べるものが存在する。
天皇とか総理大臣とかそんな甘っちょろいものではない、独裁者とか魔王なんて言葉が相応しい
「本当に世界がこのまま終わるとしたら何のために生きてんのかわかんねぇな」
こんな事を口走ってみるが、誰も賛同しないこれこそがこの世界がこんな事になった原因になったのかもしれない
自分で動こうとしない、人任せにして何かあれば時代のせい
つまらない世界だ。
「お取り込みのところ悪いけど…あんた痛いわね」
「は?誰だあんた」
人と話すのは何年ぶりだろうか前に話したのは親友だった。
最後の言葉は何だっけな?
まあ、大した事は言ってなかった。
「人に名前聞く時はまず自分から名乗りなさいよ!それに言葉遣い!女の子をもっと丁寧に扱いなさい!」
「ああ、悪い悪い、なんせ人と話すのは久しぶりだったもんでな…俺の名前はアインセット・アスターバインみんなはアインって呼んでる…まあみんななんてのは気がついたらただの呼吸する抜け殻になってたけどな」
「あら…アインね…やっぱりここも同じ感じなのね、私の住んでいた村もこんな感じよ…人は廃人に木々は枯れ果てて海は干上がり空は赤い…」
「君の名前はなんて言うんだ?」
「あ!忘れてたわ、シャーロット・リトルグリーンよ!長いからシャルでも何でもいいわよ」
無愛想だけど気品があり、絵本に出てくるお姫様のような女性と言ったらわかりやすいだろうか。
最近人すら見ていないからそう感じるだけで実際は大したことないのかもしれないが。
「シャルだな、シャルはどこの国から来てどこに向かっているんだ?」
こんなこと聞いて何になるんだ?
昔話の桃太郎のように鬼退治にでも行くから付いてきてくれとでも言われたいのか?
ああ、そうだ言われたいのだ。
この現状を打開したい、気持ちはあるが一人で動く勇気もない
目の前に現れた見ず知らずの女の人にまで自動的に助けを乞う惨めな男に成り下がってしまったのだ。
「私ははるか東の大陸リスパトリシアから海を渡りきた、理由はそうだな…アイン…お前を探していた」
記憶を探る。
ありもしない、覚えてもいないシャルロット・リトルグリーンの記憶を
なぜ彼女は俺を探していたのか?
「不思議そうな顔をしているわね!私の家系は古くから標道術(ひょうどうじゅつ)を使うのよ」
標道術…聞いたことがある。
占術の一種で別名光の道しるべと呼ばれる最古の占術
攻撃には適さないものの探し物を見つけたり、道を切り開く鍵を与えたり、その使い道は多種多様だという。
しかし、標道術は終えたと聞いていた。
あまりの的中率から、悪魔の技などひどい扱いを受け
使用者は国の命令で根絶やしにされた。
「標道術の使い手は先の国の方針で根絶やしにされたのではないのか…?」
女は意外な顔をして話を始める。
「あら?意外と博識なのね、確かに根絶やしにはされたわ標道術を使える人間はほとんどいなくなった、だけど標道術師は先見の明があるのよ?根絶やしにされることも、世界が朽ちていくことも予見されていた」
「でも、予見したのがいけなかったのよね…見てしまった末路を変えようと必死に試行錯誤を重ねた末に辿りついたのがこの世界に私を召喚することだったみたいね」
いよいよ話が分からなくなってきた。
初めからわからなかったがこれ以上は頭がパンクしそうだった。
「世界には何人もの神様が居たって話は聞いたことないかしら?意味のなさそうな神様から人知を上回る神様まで、たくさんの神様がいたのよ」
「神様…確かに文献では読んだことはあるが見たこともなければ噂話も聞いたことないな」
「それはもちろん当たり前のことよ廃れた風習なのよ…祈ることも、崇めることもやめた者達に神様は見えるはずないわよ」
あたかも神様は存在していた。
そのような話し方をする彼女を心のどこかで胡散臭く思ったが、今は神様にすらすがりたい。
「祈れば、崇めれば神様とやらがこの状況を打開してくれるのか?」
馬鹿な質問だ。
居ないものにすがるだなんて我ながら無様だった。
「それは無理ね…神様なんていないもの…いや、もういないもの…」
「何だか引っかかる言い回しだな?まるで昔はいたかのような言い方じゃないか」
「信仰をされていた頃は居たわよ!確かにそこにいた!何処にでも居たわよ!感謝を忘れて、自分達だけで生きてきたみたいな人間達が社を壊すまでわね…」
ああ、聞いたことがある。
土地を開発するために社を潰して回り神様を悪霊呼ばわりしているもの達の話を
道しるべ @piropa
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