第12話 暗闇
……レイ。
戸惑いながらも、マリアはレイの名を呼んだ。
倉庫のドアが閉まると、そこは真っ暗になった。
閉じ込められる瞬間、この倉庫には子供たちが押し詰められているのを確認した。おそらく、連れ去られた子供たちだろう。きっと、レイもこのなかにいるはずだ。マリアが手探りであたりのようすを伺う。たくさんの子供たちの感触がした。しかし、体温を感じるもののマリアの手に反応するものはいなかった。どうやら、かなり衰弱しているようだ。何日もこんなところで監禁されているのだ。むりもない。
いくら目を凝らしても、そのなかにレイがいるかどうかはわからなかった。ここには全く光がないのだ。これでは、どんなに目を凝らしたところで、何も見えないだろう。
それにしても、猫男なんて生き物が本当にいるなんて。抱きかかえられたときに体毛を通して、しっかりと体温が感じられた。あきらかに生き物だった。
こんなことになるなら新田にいわれた通りラチのもとでおとなしく待っているんだった……。なにか自分にもできることがあれば。レイを助ける役にたてれば。そう思って新田たちのあとを追いかけてきたが、邪魔になっただけだった。
自分がいなければ、新田も猫男を倒していたかもしれない……。
暗闇に子供たちの姿が浮かんできた。
どうして? マリアが驚く。光なんて全くないのに……。
不思議に思っていたマリアは目が暗闇に慣れてきたのだということに気づいた。胸をなでおろしながら、ふたたびレイを探し始める。
「あっ」マリアは思わず声をあげた。
うなだれている子供たちのなかに見慣れた顔を発見したのだ。
トラッシュマウンテンの仲間だ。
マリアは彼らに駆けよったが、すでに衰弱していてマリアに気づいたようすはなかった。
間違いない。きっと、このなかにレイもいる。
「レイ!」マリアが声をあげた瞬間、マリアは腹部に痛みを感じた。
何者かに腹部を蹴られたのだ。
膝から崩れ落ちたマリアがうめき声をもらす。
どうやら、騒いでいるマリアをうっとうしく思ったらしい。
何日間もこんな暗闇に閉じ込められているのだ、気も荒くなるだろう。
このなかにレイはいるだろうか……。
「お姉ちゃん?」レイの声だ。やはり、レイはここにいたのだ。
「……レイ」のたうちまわっていたマリアは起き上がろうとしたが、体がいうことをきかない。
「お姉ちゃん!」ふたたびレイの声がする。
……どこ? ……どこにいるの? ……せっかく、ここまできたのに……。……助けてあげられないなんて……。
レイの声が遠ざかっていく。
どこにいくの?
必死にレイを呼び止めようとしたが、マリアの口から声がでることはなかった。
薄れゆく意識のなか、マリアの脳裏にはレイの声が響き続けた。
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