第3話 真相解明!!
「そう……あれは、月のきれいな夜のことだったわ」
怪盗セルアは遠い目をして空を仰いだが、氷でガチガチに固められて地面に転がされているのでどうにも決まらなかった。
「金持ちの屋敷に華麗に潜入したアタシは、貴重なモミジメダルを見事な手口で鮮やかに盗み出したのよ!」
「華麗も何もただのコソ泥でしょ? さっさとメダルを返しなさいよ!」
スリサズが腰に手を当ててセルアを睨み下ろす。
その傍らでは氷から開放されたブリジットとデイジーが今度こそ本物の犯人であってくれと祈るような目で様子を見守り、ホーミィは魔法の探偵杖の効果を褒めてほしげにフリフリしている。
「月の輝くイチョウ林の逃走劇! それはそれは美しかったわ! ……そのデカ犬が出てくるまでは!」
セルアが憎々しげにキャロラインを睨むが、キャロラインは素知らぬ顔でロゼルに撫でられ腹を見せている。
「この犬のせいで……せっかく盗み出したモミジメダルを、イチョウの落ち葉の山の中に落っことしてしまったのよ!」
「ん……? 隠したんじゃなくて落っことしたの?」
「そうよ……そしてそれを探しているうちに追っ手が来たの! だからアタシは思わせぶりな言葉を残して、他の人がメダルを見つけてくれるのを待っていたの! 見つかったらまた盗むつもりで!!」
「じゃあモミジメダルは……」
「まだその辺の葉っぱの下に埋もれたまんまなんじゃないの?」
泥棒を役所に突き出すために、イチョウ林を突っ切り、進む。
先頭のブリジットお嬢様にデイジーが付き従い、氷を解いて縄で縛りなおしたセルアをホーミィが引っ立てて続いて、その後ろをロゼルとキャロラインが見張る。
最後尾のスリサズが、靴の裏に違和感を覚えて足を止めた。
「うげっ!」
犬の糞を踏んでしまっていた。
スリサズの泣き声に、ロゼル一人だけが足を止めて戻ってくる。
そして……
いったい何を思ったのか、ロゼルは犬の糞を木の枝でほぐし始めた。
「ちょっとロゼル? 何やってんのよ?」
「・・・」
犬自体が大きいだけに、その落し物も実に大きい。
ほどなくして、その茶色の塊の中から、黄金色に輝くメダルが出てきた。
「・・・キャロラインは怪盗を追い詰めた時に、怪盗のニオイのついたメダルも見つけていた・・・そしてそれを、人間達が気づかないうちに飲み込んでしまった」
ロゼルはモミジメダルに水筒の水をかけて洗えるだけ洗い、直接触らないように麻袋に入れた。
「・・・これでメダルの発見者への賞金は俺のもの・・・泣くな」
「泣いてないもん!」
叫びながらスリサズは、茶色く汚れてしまった靴で、ロゼルのブーツを思い切り踏んづけた。
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