インコのある生活
@ishiyaki-imo
第1話 カクカクブンブン
うちには5人の家族がいる。
お父さん、お母さん、弟に私。それともう一人というかもう一羽。セキセイインコのピッポくん。
大きさはジュースの缶と同じくらい。古い自動販売機とかで売ってそうな細長いやつ。体重は32グラム。色はパステルカラー。黄色い頭と淡い水色のボディー。今年で2歳の男の子。
インコの寿命は6~8年。だから2歳でも人間で言うとこの三十路
男の子っていうよりかはおっさんに近い
彼の友達はマウスとテニスボール
うちには赤いマウスと青いマウスがあるが、赤いマウスは嫌いなようでよく蹴とばしている。お友達は青いマウス。今はお友達だがちょっと前は恋人だった。
青いマウス。うちではブルマと呼ぶ(ブルーのマウスだから。命名 弟 )彼女に御執心で、パソコンを使っている時も手の動きに合わせてちょこまかと追っかけてくる。気分は囚われのお姫様を助け出す
ブルマを追っかける
うちの場合、ピッポくんが噛んできたときはゲージの中へ閉まってしまう。人を噛むと仕舞われると何度も覚えさせることで、そのうちやめると本に書いてあったからだ。だから彼はブルマを奪われても噛まなくなった。
代わりにゲロを吐かれるようになった。最初はよっぽど姫を奪われたことがショックで吐いてしまったのかと思って焦ったが、調べてみたら求愛行動と書かれてありホッとした。私の手に、というかおそらくは手の中の姫にデロっと吐く。そしてそれを自分で食べる。我が愛しのペットでありながら、最初はうわぁ...と引いてしまった。
でも、さすがに求愛行動を阻止するのは可哀想という弟の意見から、デロっと出すのは黙認されているが家のあっちこっちにティッシュ箱が置かれるようになった。
でも私にはデロっ、よりもビビったことがある。それがカクカクブンブンだ。ピッポくんは大変お勉強熱心で、ゲージの隅でよく言葉を練習している。だいたいが何を言っているか最初は分からない。グジュグジュとしか聞こえないし。でもそのうちなんとなーく何を練習しているのか分かるようになってくる。「おはよう」とか、「かわいい」とか。
彼の中で私がどういう位置づけなのかは分からないけど、彼の中で納得のいくまでに言葉が仕上がると私の肩に乗ってきてお披露目してくれる。一番最初に披露するのは私と決めているようで初「おはよう」も初「かわいい」も私だった。私はそんな彼が可愛くて仕方が無かった。
その日も、母親が毎日ゲージに向かって歌っていた〈小鳥の歌〉を私に披露してくれていた。今までで一番長いフレーズだったのもあって随分と長い間練習していたがやっと納得いったのか披露することにしたらしい。
『ことりーは、とって、も、うた、すきー。かーさんー。よぶー』と音程もズレているし、色々抜けてはいるが。一生懸命耳元で歌う姿がとてもとても可愛くて
「そうなのー?うたすきなのー?」と彼をナデナデした。それが彼の気を良くしたのかどんどん歌ってくれる。私もすごいねー、上手だねーと褒めていた
すると突然彼は首をカクカクブンブンと振り出したのだ。おいおいそんな振っていいのかいというぐらいカクカクとブンブンと。
私は初めて見る彼の荒ぶる姿に、ひぇーとなった。首をカクカクブンブンしながら「とって、も、すきー」「ことり、よぶー」と歌い続ける。どうした、おい、どうした
しばらく、ひぇーとなっていたが彼は初のお披露目会に満足したようで、ドヤ顔をしてゲージのなかへと戻っていった。
後で調べたらセキセイインコは興奮したときや嬉しいときにカクカクブンブンするらしい。褒められたのが嬉しかったのだろう。かわいいやつめ
その後、弟が帰ってきたので
「ピッポくんが歌えるようになったよー」と教えてあげた
「うそ!まじで!」と言いながらピッポくんをゲージから出していたが、歌いながらカクカクブンブンする彼を見て
「きもいー!かわいいー!」と興奮していた。
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