防人達の邂逅(かいこう)

月夜野出雲

序章

第01話 始まりの前

 『君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。きっと非難とか叱咤ばかりの一生かもしれない。御苦労だと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。言葉を換えれば、君達が日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい。』


 第45・48~51代内閣総理大臣 吉田茂


 防衛大学校第一期生卒業アルバム編集者に対して。吉田邸にて。


(出展:Wikipedia 『吉田茂』の項より)



 自衛隊の事を話す時に、欠かせないのでは?と思われる吉田茂氏の言葉。

 災害派遣や人命救助の時には陸上・海上・航空の各自衛隊は『最後の砦』とも呼ばれ、そういった時に注目される存在。


 今日もまた、日本国内の災害や救助の現場、国外への復興支援や海賊対処などへ派遣されていく、自衛隊とその自衛官。


 そして、いつものように架橋の訓練する陸上自衛官もいれば、いつものように機体の整備に責任を持つ航空自衛官もいるし、いつものように入港の準備に気を張る海上自衛官もいる。


 『その日』も、いつものように『いつも通り』過ぎるはずだった。

 どこの基地・駐屯地・分屯基地も、艦艇・戦闘機・戦車等に異常も無く、弾薬や備品が無くなるような事もなかった。

 日本の周辺国も特に異常はなく、在日米軍にも全く動きはなかった。


 しかし、その異変は日本国内で、水面下で深く静かに、進行していた。


 この事が、日本のみならず世界中に衝撃を与えることになるとは、当事者である、防衛省・自衛隊、警察庁、海上保安庁、消防庁はもとより、大きなくくりの当事者・日本国民の誰もが思うことはなく、静かにいつも通りに日付の変更を待っていた。

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