第12話 光の者最大の秘密を求めて

 トマトレッドたち五人は、死体の流刑地に着陸した。辺りには死体しかなく、死体が大地を形づくっているかのような錯覚を覚えた。その死体の大群の中に、小さな小惑星が一個あった。

 スカイグレイの緊張感は嫌がおうにも高まっていった。今、ひょっとしたら、光に従うものたちにとって最大の秘密が暴露されるかもしれないのだ。自分には、はたして、そこまでの忠誠心が黒の帝国に対してあっただろうか。スカイグレイは悩んだのだった。

 小さな小惑星に着陸した五人は、さっそく小惑星の上に出てみたのだった。

 そこには二本の剣があった。どちらの剣も、人を斬ることにかけては遅れをとることのない鍛え上げられた剣だった。

「スターホワイト」

 トマトレッドが声を発した。

「スターホワイトに忠誠を誓うべく、五人の者がただいま参上いたしました」

 トマトレッドがいった。

 その声は、十五歳の一人の少女の耳に届いた。

「まあ、またあたしのために死のうとする人がやってきたのね。みんな、そうやって来ては、空しく死んでいった。あたしには、どうすることもできないのね」

 スターホワイトと呼ばれる少女が姿を現した。それは間違いもなく、十五年前から黒の帝国と血で血を洗う闘争を続けて生きのびてきた女の子だった。黒の帝国で最も有名な光の者だった。

 そこには、少しでも光を発せようとする健気な努力のあとが見られた。その小惑星には、光輝く松明が灯されていた。光の者として戦うものにとっての、命がけで守るべき象徴となる光だった。

 黒の帝国のスパイとしては、これ以上ない秘密をかぎつけたところだった。死んだ星を生き返らせることのできる能力者を、黒の帝国は全軍をあげて探しているところだった。その位置を知ることができたのは、千金の価値のある大成功だといえた。

 スカイグレイは大急ぎで、黒の帝国の上官に連絡をとった。

「隊長、隊長、ただいま、光の者の指導者を発見いたしました。急いで応援をお願いします。場所は104の304。くり返します。光の者の指導者を発見いたしました」

 スカイグレイの通信は即座に、黒の帝国空軍特選隊のもとに届いた。それがどんな重要な報告であるのか、スカイグレイにはわかっていた。今、自分は、黒の帝国全軍を動かしかねない重要な情報を上官に報告しているところなのだ。

「バカな。スカイグレイ。あんた、いったいどういうつもりだ。なぜ、黒の帝国と連絡をとっている」

 トマトレッドがスカイグレイを問いただした。

 とうとうバレたのだ。しかし、バレるだけの価値のある諜報ができた。光の者の指導者をスカイグレイは発見したのだ。

「スカイグレイ、どういうことだ。ことと次第によっては、生かしては帰さないぞ」

 トマトレッドがいう。

 もう、知ったことか。

「あははははっ、とんだ失敗を犯したな、トマトレッド。おれは実は黒の帝国の派遣したスパイだったのさ。そして、死ね。自分の愚かさを身をもって知るがいい」

 スカイグレイは近くにあった剣の一本を手にとった。どっしりとして、重量のある重たい剣だ。これで斬れば、人など一発で真っ二つになることだろう。

 そして、トマトレッドも、もう一本の剣を手にとった。これまた、どっしりとして重たい剣だ。

 それぞれ一本の剣を手に、光の戦士と、裏切り者のスパイは死を賭けて向かい合ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る