無頼の帝国~帝政アメリカ短編集~
筑前助広
第一回 ジェシーは最速の銃士(ガンマン)
<あらすじ>
俺は、ジェシー・クランス。西部一の早撃ち
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
奴の右腕が動こうとした時、俺は撃鉄を起こしていた。
耳を
歓声が挙がる。街の住人だった。
口々に、俺の名を呼び称える。
「ジェシー最高だ」
「ジェシー・クランスこそ、最速の
俺は相棒のオリヴィア二世を掌で弄んでホルスターに収めると、観衆に向かって肩を竦めた。
よせやい、本当の事を言っちゃ冗談にはならねぇもんだ。
倒れた男は、
歳は五十二。死んだ親父と同じ歳だ。だからとて、何の感慨も無いが。
それも、これからは過去形で語られる。この三日で、二十五人の全員撃ち殺したのだ。
仕事だった。子分一人で金貨五枚。カーストンは、金貨五十枚。依頼者は、この街の住人で、わざわざ俺を探し出し、依頼したのである。
「あんたしかいない。街を救ってくれ」
殺し文句だった。男を
「まだ、勝負は決しちゃいねぇぜ、街の衆」
俺は、
元首領は、赤い髭面を俺に向けた。鳩尾を押さえ、苦痛に顔を歪めている。
葉巻の煙を吐く。甘ったるい臭い。南部ディナン産の煙草だ。この匂いを嫌う奴もいるが、俺にはこれが堪らない。
「腹か。胸を狙ったのだが」
呟き舌打ちをすると、カーストンが微かに笑った。
「まぁ、笑われても仕方ねぇわな」
オリヴィア二世を抜き、カーストンの眉間に突き付けた。
「言い残す事は?」
俺は訊いた。
「
「他には?」
「
「上等だぜ、悪党」
俺は低く笑うと、撃鉄を起こし、引き金を引いた。
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