第13話 真夜中の予想外
ひゅーー
スタッ
思ったより短い落下・・あ、そうだわ。途中にゲートを出せたのよね
鏡が用意してくれている足場・・となる小さい岩を使って、下に飛び降りて行く
鏡、訓練ではないのだから、普通に階段状にしても良いのよ?
そんなこんなで、ガナバトスの町と城の間にある森に到着
綺麗に手入れされている森なのだけれど、日差しがないのが残念ね。心地の良い木漏れ日が差し込むと思うのだけれど
ん?
まずお城の方に情報収集と思ったのだけれど、なんだか雰囲気がおかしいわね
この間、お城の名前を教えてくれた町の人も、お城の方を気にして見てる・・
町の人や、衛兵さんに詳しく聞いてみると、どうやら表の世界から来たと思われる人がお城に来たらしい
普通ならそれで終わりなのだが、その人は酷い大火傷を負っていたらしい。その上、ほとんどの装備品が焼けて使い物にならなかったのか、ほぼ何も着けていない状態(半裸)で王様に謁見を申し出たとの事らしい
おいおい、表の人。一国の王様にそれで謁見は失礼でしょ・・表の世界にもお城って一杯あったと思うのだけれど、そういうマナーって無かったのかしら?
そして、必死に「せーぶおせーぶおさせてくれ」?とか何とか言ってたらしいけど・・せーぶおって何かしらね?
「ねぇ、鏡。せーぶおって何だか分かる?」
「はい、王妃様。異世界にあります雑貨店の名前に似ておりますので、恐らくそれではないかと」
「ふーん。と言うことは、その火傷さんも異世界人なのかしら?その、せーぶおと言う雑貨屋さんが城にあると思っているのかしら・・させてくれって言うのだから、お店を開きたいっていうことなのかしらね?んー、よく分からないわ」
この者と言い、火傷さんと言い、なんだか意外と世界は小さいのね
そんな風に感じ入っていた私
・・・・異世界人、異世界人かー・・・・・・
あ、ちょっとこの状況マズイかも
「か、鏡。これ、あまり良い状況では無いわよね?」
「はい、王妃様。この者との繋がりが万が一にでもあれば、大変な騒動になるかと。私としましても、早めの退避をオススメします」
早めに気づいて良かったわ!身体を動かしに来ただけの裏の世界で、そんな騒動とかに時間を割く余裕なんて無いのだから
こうして私と鏡は、早速準備してこの町を出る
ふぅ
あ、準備なんて無かったわね
「鏡、何か買い忘れとかはない?このまま旅立っちゃって大丈夫?」
「はい、王妃様。おやつなども作って保管してありますし、特に何もございません」
「そう?どうせなら、この世界に合わせた旅なんてのも楽しいのかもしれないわね」
「分かりました、王妃様。この世界の基準がお望みであれば、固くて微妙な味の乾パンなどになりま」
「あ、大丈夫よ今のままで。さぁ、いきましょー」
「はい、王妃様」
あぶないあぶない。興味本意で言ってみたけれど、この世界も大分遅れているのね
まったく・・緊急時の非常食がおやつ替わりだなんて、旅の楽しみが減ってしまうわ
町から外に出る
相変わらず薄暗い平原、荒れた海、もやに包まれた大きいお城・・ん?
「鏡、あそこのお城は随分近いわね。何か理由があるのかしら?」
「はい、王妃様。あの城は、町でも話があった大魔王の城との噂です。先日、表の世界から感知できなかった魔物がいる城でもあります。早速向かいますか?」
な、なるほど、あそこに大魔王さんがいるのね。興味はあるけど・・
「いえ、今日は止めておくわ。もうちょっと慣らしてからにしましょう」
「はい、王妃様。ゲートはあの城の手前にも設置しておきますので、いつでもお声掛けください」
「ええ、その時はお願いするわね」
「はい、王妃様」
うん、まずは身体を慣らしていかないとね。どうせこの者の旅は長いのだから、それに合わせてゆっくり旅するのも良いわね
「さて、この町から一番近い町はどこかしら」
「はい、王妃様。このまま南下しますと砂地に囲まれた町がございます。若干遠回りにはなりますが、船でも向かうことは出来ます。どちらになさいますか?」
船かー。船旅も良いのだけれど・・
「やっぱり、陸路で行けるのなら歩いて行きましょう。海上にゲートを設置するのも大変でしょうしね」
「分かりました、王妃様。では、不要な船は回収して参ります。少々お待ちを」
ふぅ。海だとやっぱり魚介類の魔物がいるのよね・・おっきなイカとかいないかな
「お待たせしました、王妃様」
「そこまで待っていないわね。では、出発しましょう」
さぁ、なんだか凄く遠回りしたけれど、ようやく出発ね
街道沿いで強い魔物とかいないかしら?
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