第6話 真夜中の旅立ち

先の見通せない未来に軽く絶望しかけたけど・・


はぁ、落ち込んでもいられないわね



「鏡。この者の召喚理由である魔王の軍勢はどれくらいなの?」


「はい、王妃様。魔王をトップに据える魔王軍ですが、各エリアごとに魔物の強さを変えており、基本的に魔王の居城に近付くほど強い傾向に有ります」


「まぁ、当然ね。居城に向かうに当たって注意事項はある?」


「はい、王妃様。溶岩の流れる河に阻まれ、舟も浮かべられないほど荒れた湖の孤島に築かれた巨城ではありますが、王妃様であれば大した障害とは言えませんね。」



「鏡・・この者の魔力では、溶岩の河を凍らせたり湖を干からびさせたりなんて出来ないわよ?」



「王妃様、そのような事もあろうかと魔王の巨城の地下一階、玉座の間にゲートを設置しております」



・・・・え?



「これで暗殺も出来ますね」



「か、鏡・・・・相変わらず良い仕事するわね。ところで、鏡。この世界の人間では、その場に辿り着くのにどれ程の困難が立ち塞がるの?」


「そうですね。一般的な・・と言いますか、この者の辿るべき物語ですと、まずは船を手に入れ、世界中を行ったり来たりして6つのオーブと呼ばれる宝珠を集めます。そして宝珠をとある祠に捧げますと大きな鳥が甦り、それに乗って魔王の居城に辿り着きます。まぁ、月日に換算しますと・・目的を果たしつつ、魔王と対等に渡り合える強さになるよう鍛えながらですので・・・・おおよそ4年8ヶ月と249日といったところでしょうか」


「相変わらず細かいわね・・」


しかも、ほぼ外れないのよね・・


「王妃様、いかがいたしますか?今でしたら、この者の身体を操れている今でしたら、ゲートを使ってターゲットを直接消せます」


うーん、魅力的な案ではあるんだけど・・・・


「鏡。凄く魅力的な考えですが、不確定要素があります。万が一、倒したのが《私》と見られた場合、送還魔法が不発になる可能性も考えられます。ですから却下です」



「そうですか・・分かりました、王妃様」



残念そうに俯く鏡


んー、折角のゲート・・勿体無いわね



「鏡。ゲートの先にいる魔物の強さは?あ、魔王とやらは除いてよ」


「はいっ、王妃様!王妃様の意識のある今でしたら、準備体操に良いレベルだと思います。早速向かいますか?」


・・準備体操って・・元の世界の一般兵士レベルかしら


「では、この身体の調子を確かめるためにも、少し運動しましょうか」



「はい、王妃様。では、ゲートを開きます」



目の前に黒いもやが現れる



こうして私は、この異世界への一歩を踏み出した



・・一歩目から魔王城と言う、とんでもない歩き方だけれども




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る