第82話 野宿
ナイフに付着した血を振り払って鞘に仕舞い、ドラゴンハートを肩に担いでミリアに近寄ると、ミリアは顔をしかめたのでトワは何かあったのかを聞く。
「どうかしたか?」
「どうしたでは無いですよトワさん、全身血塗れですよ」
ミリアに言われてトワは自分の身体を観ると真っ赤な血が全身にベットリ付いていた、トワはどうするかと周囲を見渡すと丁度よく水場が有った、身体を洗い流す為にミリアと水場に行きこれからの事を話す。
「今日はもう暗くなったな、野宿をして日が上ってからこの辺りを探索するとしよう」
「そうですねそれがいいと思います」
身体に付着した血を洗い流しながら話をしているが、ミリアは近くで野営の準備をしていたが決してトワの方を見ようとしない。
「どうしてこっちを見ないんだミリアさん?」
「トワさん・・・わざと言ってます?」
「?」
トワの今の格好は外套と上半身の服を全部脱いでいる状態で、つまり上半身裸状態である、普段は外さない装備品もメンテナンスをするために可能な限り外している、それをミリア指摘しているが、トワは男女差別の無い軍隊で生活していた為に、こういう事には無頓着なのだ。
水辺から上がってナイフ等の装備品の状態を確認していくトワ、ミリアは辺りから拾い集めた木々で焚き火を起こして野宿の準備をしていく、ミリアは携行用の調理器具でスープ料理を仕込んでいく。
「そう言えばこの蜥蜴は食べられるのか?」
トワはドラゴンを指しながらミリアに聞く。
「食べることは出来ると思いますが、基本的にドラゴンの肉は固く特定の部位は非常に美味と聞きますが、特殊な技能が必要なため、今回は諦めて下さい」
「確かに食べる気はしないな、体内にこんな物が入っているのだからな」
トワはドラゴンハートを持ち上げて皮肉めいた事を言いながらメンテナンスを続ける。
「それにしてもドラゴンの体内に剣が有るなんて聞いたことがありません、竜心剣ドラゴンハート、竜の心の臓に刺さりし剣、まるで英雄譚に登場する剣の様ですね」
そう言えばエリーが持っていた本の中にもその様な物語有ったなとトワは思いながらドラゴンハートを眺める。
ドラゴンハートは両刃で140センチ程の長さで重力は3キロほどで、鋭く切るや突くよりも断ち切る事を想定されて作られてある、鍔元には装飾が施されてあり、業物と思わせる存在感あるが鍔元に大きな窪みが有り、そこは何かが嵌まっていた形跡が有った。
「はい、どうぞ、温かい内に食べてくださいね」
ドラゴンハートを眺めていたトワにミリアは出来上がったばかりのスープをよそった木の器を差し出す、トワはドラゴンハートを置きスープが注がれた器を受け取り礼を言う、トワはミリアから渡されたスプーンでスープを掬い口に入れる、ミリアはトワの表情を伺いながらも自分もスープを口に運ぶ。
「いかがですか、お味は?」
「ん、悪くない」
トワはスプーンを止めることなく口に運ぶ、ミリアはそれを見て安堵する。
食事が終わると辺りは日も落ちて暗くなり焚き火が際立ち空には星が輝いていた、トワは夜空を見上げて自身が知っている星羅針盤を思い出しながら眺めいるとミリアが声を掛けてくる。
「ここは王都より綺麗な星が見えますね」
「この地は何処で空を見上げて綺麗に見えるな」
「トワさんの故郷では星空が見えないのですか、トワさんの故郷は何処なのでしょうか?」
「星はそうだね余り見えないかもしれないな、故郷は遠くさ、詳細はまあ、いいじゃないか、それよりも夜もふけてきたから寝よう」
トワは曖昧に濁して近くの木に体を預けて目を閉じる、ミリアはトワが自身の事を語りがたらないと思いながら焚き火の近くで寝具にくるまり眠りに入る。
眠りに就いてから暫くして、夜もふけて、トワが寝具から出る、もう一人の同行者を覗き込む、ミリアが熟睡している事を確認して、ドラゴンの遺体を通り抜けドラゴンが守っていた財宝等には目もくれず歩み進む。
壁際まで進み岩盤の前で立ち止まり岩盤に手を当てる、トワが手を当てた辺りが光だす。
「認証確認中・・・確認、部隊長トワ・レイブンと認証」
「扉を開放」
「扉を開放します」
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「情報項目を」
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