第65話 魔都に漂う者 黒衣と漆黒

 マリア達が黒ずくめの集団と遭遇た同じ時刻、魔都城下町の屋根伝いで二つのシルエットが飛び交う。


「にげ、にぎ、逃げるな」


 カラスを彷彿させるような衣装を身に纏った男がトワに向かって駆ける、トワは面倒とばかりに距離を取るがカラス男は何処までも追いかけてくる、ウェーバーの邸で感じた殺気を辿るとこのカラス男が出していたのであしらってから情報収集を始めようとした時にマリア達の方に動きを感知したが危機的状況まで陥っていない様だ、もしもの時は仕掛けが作動するのが置かれている状況だけに駆け付けないといけないと思いつつ目の前の敵に集中する。


「し、死ね」


 カラス男の攻撃を捌きながら考える、カラス男は力量以上の敵に対峙していると解っているはずにもかかわらず撤退や降参の意思を示さない。


「はあ」


 カラス男の使用している鉤爪を壁に当てて抜けなく成った所を横から衝撃を加えて破壊する、これで始めてカラス男は距離を取ると鉤爪の残骸を外し腰からナイフを引き抜き再び距離を詰めて来る。


「こ、殺す」


 空の明かりが雲に隠れた瞬間、カラス男は姿を消す。


「!?」


 眼前にいたカラス男が一瞬で消え去る、トワは周囲を警戒する、雲が晴れ夜の明かりが照らされるとカラス男はトワの後に立ちナイフを降り下ろす。


「ぐっ」


 トワの背中から夥しい出血する、それを見たカラス男は低い声で笑う。


「き、きれいな、あ、あかだ、ぐふぇ、ぐふぇ」


 カラス男はもう動けないトワに近付き再びナイフを降り下ろす、トワはびっくんと痙攣すると動かなくなった、カラス男はトワが動かなくなるのを確認すると満足した様な声をあげるトワの身体を持ち上げて闇夜に紛れてこの場から去った。






──────────────────────


 

 深夜の林の中からガキィーと金属音が響き渡る、金髪に相応の身分だと想像させる衣服、装飾の施された剣を手にしたショパンは黒衣の切り伏せていく、足元には切り伏せた黒衣達それを囲むように周囲には半分ほど迄減った黒衣の集団が取り囲んでいるがしかし。


「はぁはぁ」


 状況は芳しくなくショパンは疲労で肩で息をしている、返り血を浴び服は血生臭く鼻を刺激してくる、華やかだった元の色合いは失われただ一色どす黒色彩が服を染めていた、深呼吸をしながら周囲を警戒する集中を切らせれば黒衣の集団が一瞬で飛び掛かって来ると解っている、重くなった剣を歯を食いしばって八相に構え出方を待ちながら息を整える。


 バサバサと音がする夜鳥が飛び立った音に反応してしまい注意をそらしてしまった、黒衣の集団がこの隙を見逃すはずもなく飛び掛かって来た、最初の三人ほどを切り伏るが疲労で絶命迄いたらかった一人がショパンの足を掴む、不意を突かれてショパンは転倒してしまった。


「し、しまった!!」


 黒衣の集団が殺到して来て絶体絶命と思ったその瞬間、一陣の風が吹いく、飛び掛かっていた黒衣の集団は力無く地面倒れる、何事かと辺りを見渡すと黒衣の集団とは異なった漆黒の出立ちの人物がいつの間にか立っていた。

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