第53話 魔都に漂う者 7 ツペェシュ
館の中にギシ、キン、ドカ、ギシと音が鳴り響く、その音で目が覚めたキティが不審な音を確める為に部屋から出る、耳を澄まして聞くと音は玄関ホールの方からしている。
不安になってトワを探すが、割り当てられた部屋には居らず、まさかと思ってマリアの寝室を覗く、寝室にはマリアが寝息を立てて眠っている。
ギィーと音を鳴らし扉が開く、キティはトワが来たのかと思い扉の方を振り返るが、そこに立っていたのはツペェシュ男爵だった。
「ツペェシュ男爵、こんな真夜中に淑女の寝室に訪れるのは、マナー違反ですよ」
キティが警告するがツペェシュは聞こえていないかの如く歩を進める。
「止まりなさい、そして出ていきなさい、これ以上近付くなら武力行使しますよ」
「う~ん・・・キティさん?」
キティの警告する声にマリアが目を覚ます。
「ご就寝中に申し訳ありませんマリア様、寝室に非礼者が」
「え~と、・・・ツペェシュ男爵?」
マリアは寝惚けながら光源で照らす、光源で照らされたツペェシュは目は血走って、呼吸も荒く、口から涎と血が服を汚していた。
「しよ、しょ処女が二人、ふた、ふた二人も喰えるかな、ああ、柔らかそうな肉だ」
「きゃーー」
マリアはパニックになって叫ぶ、キティは危険を感じスローイングナイフを手足に投てきする、ツペェシュは避けもせずナイフが体に刺さるが気にも留めないで歩みを進める。
「い、痛い、痛い、お、お嬢さん、暴れたら、た、ダメだよ」
「マリア様、こちらに」
キティはマリアの手を取り駆け出す。
二人は廊下から玄関ホールまで出ると鼻を突く臭いに顔を顰める、そこには天井からぶら下がった赤い血肉と床に書かれた血の魔方陣が有った。
「お、お助けくださいマリア様」
「に、逃げてください」
男性達の声が聞こえて来て、マリアとキティは声がする方を恐る恐る見ると、吊るされていたのは今回の旅に従事している者達だった、彼等は生きたまま皮を剥がされてそのまま吊るされ、幾人かは未だに生きていたるのだが、その惨状を見たマリアとキティは腰が砕けしまったが、キティは壁を伝いながらどうにか屋敷の出入り口に到着するが、ドアノブを回しても扉は頑なに開こうとしなかった。
「な、なんで、なんで開かないの!?」
「お、鬼、鬼ごっこはおしまいだ?」
振り返るといつの間にかツペェシュ男爵が玄関ホールに来ていた。
「こ、来ないで!!」
キティとマリアの二人は後退りながら這う、二人の衣服は従者達の血に塗れていた。
「わ、私が狙いなら何故、この人達を傷つけるのですか!?」
マリアは気丈に振る舞うがキティと繋いだ手は止めどなく震えていた、キティは震えていた手を握り返して、どうにか正気を保っている。
「こ、これは贄、美味しく、いた、頂くためのスパイス」
マリアはツペェシュの返答に顔色が悪くなっていく、マリアは微かな望みで囁く。
「助けて、助けてくださいトワ」
ツペェシュはマリアとキティに近付いて、後は手を伸ばせば届く距離で手を動かした時に屋敷の扉を蹴破って入って来たトワがマリアとキティの前に立ち、ツペェシュを吹き飛ばす。
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