第一章 夜の市場の章
第1話〈水子の怨念〉
それですか? その蛍みたいにふわふわ浮いてる弱い光。あぁ、お客さんの周りに集まってきましたね。 懐かれてるのかって? そうかもしれませんね、それは水子の怨念です。水子って分かりますか。望まない妊娠の末に殺された赤ちゃんですよ。あぁ、知ってる。お客さんの周り、水子の怨念でいっぱいですね。……何を驚いてるんですか。商品の話ですよ。ほら、うちの商品があなたの周りに飛び交っているでしょう。……ホッとしたって? 心当たりでもあるんですか。
…………。
……水子の怨念、ひきとりましょうか? ええ、 商品の方ではなく、あなたに憑いている方です。 よろしく頼むって? 分かりました。それでは頂きます。ところで、この商品が何に使えるかまだ話していませんでしたね。聞きたくないですか、呪いです。呪いをかける時、このような怨念を用意しておくことで効果が上乗せされます。……この子たちは親に殺された怨みを晴らせず、長い間過ごしていた子が多いですからね。鬱憤でも溜まっているのか、術者によく従ってくれます。特に、呪いをかける相手が水子を作ったことがある人なら尚更ね。
ちなみに、怨念を浄化するサービスもやっております。商品を10個まとめてお買い上げ頂いた方限定ですが。あ、水子の怨念10個お買い上げ? 毎度ありがとうございます。あなたの水子12体、それと今お買い上げになった水子の怨念も浄化しておきますね。またのお越しを。
……え、なに? お兄ちゃん。あんなサービスやってたのかって。やってないよ。さっきの商品に並べてた水子の怨念は、全部あの人の。あの子たちが直接お願いしに来たの。自分たちを水子にした父親が来るからって。だから、今日だけ商品にしてあげたの。
別に、買って行かなくたって全員浄化してあげたよ。そもそも、あの子たち怨念じゃなかったし。
え、じゃああの子たちは何をお願いしに来たのかって? あー。お父さんに、少しでも自分たちのこと思い出してほしかったんだって。
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