CASE 1 新妻の場合
どうして、こんなことになってしまったのかしら……。
清々しい朝の光が差し込むキッチンで、
もう、動くことも出来なかった。
スカートから覗く白い足には、大きく目立つ青痣。しかしそれは、足だけではなかった。多佳子の体の至る所に、無数の内出血の痕がある。それぞれに鈍い痛みはあるが、動けないのは精神的なダメージのせいだ。
今日は、ネクタイだった。
「お前、馬鹿か?」
冷徹な目で、夫・
その手には、今朝多佳子が用意したネクタイを握り締めている。
何が気に入らないのか分からない多佳子は、徐々に過呼吸になりながらも必死に頭の中で考えた。
昨日とは、色もデザインも全く違うものを用意したはずだ。三日前にそのことで博からの怒りを買ったため、細心の注意を払うようになったのだから、間違いない。
「……っ」
その時に蹴られたお腹の痛みが、鈍く疼き出し、多佳子は無意識にお腹を押さえた。
もしかして、嫌いなデザインのネクタイだった?
しかしそのネクタイは、先月、博自身がデパートで気に入って購入したものだ。
何かしら……何がいけなかったの?
怒られる原因を探っていた多佳子だったが、過呼吸に因って次第に手足が痺れ出してきた。それに加え、博からの刺すような視線が、ずっと真上から浴びせられている。
限界だ、そう思った時、身を屈めた博からいきなり頬を引っ叩かれた。
「!」
「部長が同じものしてたんだよ。俺、言ったよな? このネクタイはもうしないって」
ネクタイを突き出し、苛立ちを表すかのように、多佳子の頬に押しつける。
えっ? いつ? いつ言ってたかしら……。
視線を彷徨わせ記憶を探ったが、博のこの言葉は初耳だった。
「俺を会社の笑い者にしたいのか? あぁ?」
立ち上がった博が、持っていたネクタイで多佳子の体を鞭打つ。
ビシッビシッとネクタイで打たれ、多佳子は両腕で顔を覆いながら、その場に蹲った。
「あなた、お願い……やめて」
けれども、か細い多佳子の声は、博に届かない。
散々、ネクタイで体を打たれ、抗う力もなくなった多佳子は、キッチンに横たわった。
「お前、家から一歩も出るなよ」
多佳子に体罰を施した時、必ず言う言葉がこれだ。近所の目に映っている、良い夫としての自分を守るためだろう。
「使えない奴」
気が済んだ博は、荒い息を吐く多佳子に向かって吐き捨てるように言い放ち、会社へ向かった。
博が出社した後、少しずつ落ち着きを取り戻した多佳子は、自分の息を整えるように深呼吸を繰り返した。
こんなはずじゃなかった。幸せになるはずだったのに――。
結婚して三カ月。最初は笑い声の絶えない夫婦生活を送っていた。どこへ行くにもいつも一緒で、手を繋ぐほど仲が良かった。
どこで間違ってしまったのか、多佳子は朦朧としながら考えた。
あの時……あの人を選んでいれば良かったの? そうすれば、こんなに苦しまずにすんだかもしれない。
結婚前、多佳子は、もう一人別の男性からアプローチを受けていた。
高校生の時、同じクラスになった男友達だ。好きなアーティストも同じだったこともあり、少し話をしただけで気が合うことがすぐ分かった。違う大学に行っても、頻回に連絡を取り合ったり、二人で遊びに行ったりもした。正式に付き合っていたわけではないが、自然と恋人同士のような、そんな空気をお互いに感じていた。
「こんなふうに、ずっと仲良くいられたら良いな」
にっこり微笑んだ
それからも二人の関係は変わらなかったが、大学を卒業し、それぞれ別の会社に入社してからというもの、仕事仕事で時間に追われ、会うことが出来ない日々が続いた。
そんな時、会社の同僚だった博と出会ったのだ。
新企画のプロジェクトで、パートナーとして一緒に動いていた二人の距離は、急速に縮まり、結婚に至るまで、そう長い時間は掛らなかった。
『……多佳子が選ぶのは、俺じゃないのか?』
結婚することを電話で報告した時、しばしの沈黙のあと、聞き慣れた秋孝の低い声が響く。
一瞬、迷った自分がいたが、博を選んだのは多佳子自身だった。
「秋孝を選んでいたら……きっと、こんなことにならなかった」
遠い過去に想いを馳せていたら、再び多佳子の頬に涙が伝い落ちた。
止まらない涙を拭う気力もなく、ボーッとした頭のままキッチンの戸棚に寄り掛かる。
すると多佳子の目の前に、どこからともなく、ふと一枚の青い紙が降ってきた。
「?」
名刺ほどの大きさの青い紙は、多佳子の落とした涙の上に舞い落ちても、その文字を滲ますことなく、それどころか濡れることもない。
「……な、に?」
眉間に微かなしわを寄せ、多佳子はその青い紙を手に取った。
【~招待状~】
あなた様の人生の分岐点。
そんな内容の文章と共に、下の方に小さなQRコードが載っていた。
「……なんなの?」
怪訝に思う多佳子の眉間のしわがより一層深くなる。
今の自分の心境を指しているようで、どうにも気持ちが悪い。それでも何となく興味を惹かれた多佳子は、力の入らない体をゆっくりと起こすと、自分の携帯を取り、そのQRコードを読み取ってアクセスしてみた。
【ようこそ、仮想空間へ】
最初に、この世界へご案内するにあたって、注意事項がいくつかございます。
その全てに同意頂けた、あなた様だけを、夢のような世界へお連れ致します。
薄い紫色の背景に、妙に丁寧な言葉で文章が綴られている。多佳子は無意識に画面を下にスクロールしていた。すると少しの空欄の後、【注意事項】と書かれた文字が見えてきた。
【注意事項】
体験して頂く仮想空間は、現実に起こり得る可能性のあったものに限ります。
例えば、お姫様になってみたいや動物になってみたい、などといった絶対に実現することの出来ないものは、体験して頂くことは出来ません。
仮想空間を体験して頂いた後、あなた様の心境の変化に因って起こることに関し、当方は一切の責任を負いません。
例え仮想空間の方が現実よりも良い結果だったとしても、必ず現実世界にお戻り頂きます。
以上の注意事項をご了承される方は、『同意する』を押して下さい。
そんな、にわかには信じられない事がつらつらと書かれており、多佳子の頭の中は少し混乱した。どういうことなのか分からず、画面を上下に何度もスクロールし、読み返す。
心境の変化に因って何が起こるのか? 何より、どうやって体験すると言うのか……?
疑問符だらけの頭の中を整理する余裕もなく、それよりも『もう一つの道』というものに多佳子は強く意識をもっていかれた。
正気であれば、この時点で小馬鹿にしたように鼻で笑い、サイトを閉じていただろう。その前に、アクセスしようとも思わなかったはずだ。
だが今の多佳子の精神状態は、非現実的なこの話を信じてもおかしくない程、正常な思考力が低下していた。
「つまり、あの時、秋孝を選んでいたらどうなっていたか、が分かる……ってこと?」
頭の中でようやく噛み砕いた言葉を声に出してみる。
秋孝は現在も独身だ。
現実の苦しさを思うと、今からでも秋孝の元へ行っても良いのではないかとさえ思ってしまう。
博とは早々に縁を切り、幸せな自分の人生を取り戻したい。秋孝とならそんな暮らしが送れるのではないか?
そんな想いが多佳子の思考を満たす。
例え仮想だとしても、秋孝との生活をほんの少しでも垣間見ることが出来るなら、現在のような失敗はしないはずだ。
そう。こんな間違いは二度とごめんだわ。
多佳子は、意を決したように息を大きく吸い込んだ。そして少し震える指で、『同意する』に決定ボタンを押した。
「! な、に? どこ、ここ?」
決定ボタンを押した途端、多佳子の周りの景色が瞬時に一変した。
今まで自宅のキッチンにいたはずが、今いるところは見慣れた自宅ではなく、自宅の近所でもない。というより、全くの別世界だ。
そこは見渡す限り空色の空間で、多佳子はまるで空中に浮いているかのような錯覚に陥った。
いや、錯覚ではないかもしれない。
恐る恐るその場で足踏みしてみたが、地に足を付けている感覚は全然なく、自分が今どこを向いているのかさえ分からない。どっちが下で、どっちが上なのかすらも分からなかった。
【ようこそ、おいで下さいました。わたくし、仮想空間管理人のシーカと申します。あなた様の人生の分岐点まで、わたくしがご案内致します】
多佳子が恐怖に震えていると、背後から男性の声が聞こえてきた。
「!」
耳元で聞こえた声に、身を竦めた多佳子は反射的に振り返りつつ、すぐさま距離を取るように後退った。
【あぁ、驚かせてしまい、申し訳ありません】
さほど悪びれた様子もなく、謝罪したシーカは、多佳子に向かって丁寧に頭を下げた。
「……」
そんなシーカを、多佳子は眉間にしわを寄せ凝視する。
長身でモデルスタイルなシーカと名乗る男は、どう見ても格好が変だったのだ。
シーカは、パーティーにでも出席するかのような黒の燕尾服を身に纏っていた。その左ポケットから、少し垂れ下がっている銀の鎖が見える。この格好からして、たぶん懐中時計の鎖だろう。そして頭にはシルクハット、手にはステッキ、右目には銀縁のモノクルを装着している。全体的な格好としては、まるでヨーロッパの貴族のようないでたちだった。
多佳子から胡散臭げな視線を投げられているにも関わらず、シーカは全く動じない。
【注意事項に同意頂きまして、誠にありがとうございます。あなた様にこの世界をご満足していただけるよう、精一杯務めさせて頂きます。ですが、その前に、突然の出来事に驚かれていることと存じます。まずは、あなた様のご質問にお答え致しましょう。どうぞ、何なりとお聞き下さい】
「……」
空いた口が塞がらない多佳子は、瞬きを繰り返しながらシーカを見つめた。
自分の置かれている状況や、話の展開についていけない上に、何をどう質問すれば良いのかもよく分からない。頭の中の混乱が、更に大きくなっていくのが分かった。
そんな多佳子の心中を察したかのように、シーカが優美な微笑を浮かべる。
【全てのことに一つ一つご説明させて頂くことも出来ますが、ご理解頂くには相当な時間が必要になると思います。この世界は……そうですね、夢の世界とでも申しておきましょう。ただ、寝ている時に見る夢とは違い、五感は全てリアルなものになっております。ですが、それが現実世界に反映されることはございませんのでご安心下さい】
「夢、の世界?」
すらすらと説明するシーカに、多佳子は怪訝気な眼差しを向けた。
【これから現在の記憶をお持ちのまま、あなた様のお望みの時間まで遡ります。そこで、あなた様がお選びにならなかった道を選択し、体験して頂きます】
「……」
この状態も夢なのではないか? そう思ったが、多佳子の口から出た言葉は別のものだった。
「そんなことが、本当に出来るの?」
不安気な色を帯びながらも多佳子の真剣な眼差しに、シーカは更に笑みを濃くした。
【はい、本当でございます】
そして自信満々に答える。
【そもそも仮想空間への招待状は、選ばれた方にしか届きません。あなた様は過去に相当な後悔がお有りのご様子。その後悔の念が強い方だけに、それも無作為に送られるのが招待状です。ですが、招待状をご利用なさるもなさらないも、手にされた方の自由でございます。注意事項に同意なさった今でも、キャンセルして頂くことも出来ます。その場合は、仮想空間の記憶は全て消去させて頂きます】
「……」
多佳子は深慮した。
秋孝を選んだとしたら――その答えを見てみたい。今のような過ちは繰り返したくない。そう思えば、仮想空間を利用しない手はなかった。
そう思ったが、頷きそうになる頭を多佳子はピタリと止めた。
この世界のことを知らない以上、取り返しのつかない事態に陥る可能性も十分にある。
何か、危険なことになったらどうしよう。
多佳子が、不安気な表情を滲ませる。
【あぁ、もう一つ言い忘れていました】
突然、間延びしたような口調で、シーカが口を開いた。
【招待状はその方に対し、一通しか送られません。キャンセルされた場合、二度とこの世界にお越し頂くことは出来ませんので、そのことも併せてご考慮下さい】
多佳子は目を見開き、息を呑んだ。
二度とない。そう言われてしまえば、深慮していた思考も、あっという間にどこかへ吹き飛んでいってしまった。
「……お願いします。もう一つの道、見せて下さい」
多佳子の出した答えに、シーカが優美な微笑を浮かべる。
【承知致しました。では、あなた様のお望みの時間へ、これからご案内致します】
そう言うと、シーカはそっと多佳子の手を取り、右手でパチンと指を鳴らした。
「!」
その瞬間、二人の周りの景色は、再び一変した。
見渡す限り空色だった景色から、今度はどこか見覚えのある建物の中に立っている。そしていつの間にか、多佳子の服装がワンピースにエプロンから、黒のフォーマルスーツに変わっていた。心なしか顔立ちまで若返っているようだ。
【ここは、あなた様がお勤めになられていた会社の社内でございます】
多佳子から手を離したシーカが、説明をする……が、説明はそれだけだった。
【それでは、わたくしはここで。終着点までお着きになりましたら、またお迎えに上がりますので、それまでごゆっくり仮想空間をお楽しみ下さい】
優美な微笑を浮かべたまま、シーカの体が徐々に透けていく。
「えっ! ちょっ、ちょっと待っ……」
慌ててシーカを掴もうと手を伸ばすが、その手に触れるものはなく、ただ空を切っただけだった。
「お楽しみください、って言われても……」
多佳子は困惑した状態のまま、その場に立ち尽くしてしまった。
いくら自分が勤めていた会社とはいえ、これからどう動けばいいのか分かるはずがない。
「
そんなおろおろしていた多佳子に、突然声が掛けられた。
旧姓を呼ばれて、すぐ振り返ることが出来たのは、多佳子がまだ新妻だからだろう。
「早く会議室に行くぞ」
多佳子を呼んだのは、現実世界での夫・博だった。
大股で歩きながら多佳子に近寄ってきた博は、いきなり多佳子の手を掴むと、そのまま足早に歩き出した。
「この企画が通ったら、河原に伝えたいことがある。後で時間作ってもらえるか?」
「……!」
何かこの会話、聞いたことがある。
博に手を引かれつつ、多佳子は記憶の中を探り始めた。そしてすぐに気付く。この後、企画が通って、会社帰りに博にプロポーズされたことを――。
ダメだ、ここは断らなきゃいけない。
「ご、ごめんなさい。今日は用事があって……その、ちょっと」
そう言いながら、会議室へと引かれる手を、多佳子はそっと振り解いた。
「えっ……そ、うか」
振り解かれた自分の手を見つめながら、博が少し落胆したように呟く。
断られるとは思わなかったはずだ。
この頃はお互いにそんな雰囲気を出していたし、この後何を言われるか、その当時の多佳子にも容易に想像出来たのだから。
「と、取り敢えず、企画のプレゼン……頑張ろうな」
博は気を取り戻したように笑顔を作っていたが、その表情はぎこちなかった。
二人で発案した企画のプレゼンは成功した。
これは現実世界と同じだ。
「プロポーズを受けて、この後すぐ秋孝に電話したんだった」
会社からの帰り道、多佳子は自分が辿った過去を思い出しつつ、自宅へと歩を進めていた。
『……多佳子が選ぶのは、俺じゃないのか?』
同時に、秋孝のひどく沈んだ声の響きさえも、昨日のことのように思い出される。
この時の秋孝はまだ自分を好きだったはずだ。そう口に出してはいなかったが、受話器越しの声音は明らかに寂しそうだった。
「秋孝に電話してみよう」
ここからは、自分が歩んだ過去とは違う道を歩まなければならない。秋孝と人生を歩んだらどうなるのか、それを体験しなければ。
そう決意した多佳子は、バッグに入れていた携帯を取り出し画面を開いた。秋孝で登録してあるため、電話番号を検索すると一番最初に名前が出てくる。
鼓動が早くなるのを感じつつ、多佳子は通話ボタンを押した。
『はい』
呼び出ししてすぐ、受話器越しから懐かしい声が聞こえる。
忙しさのあまり、当時のこの頃も連絡を取っていなかったが、電話番号は変わっていなかったようだ。
「……えっと、久し振り」
現実世界でもずっと疎遠になっていたため、どんな会話をすればいいのか迷ってしまう。
どこか気まずい。
すると受話器から、くすくすと忍び笑いするような声が聞こえてきた。
『うん、久し振り。仕事どう? 忙しい?』
秋孝もその気まずさを感じ取ったらしい。笑いを堪えるような口調で、優しく聞き返された。
「……」
そんな秋孝の声に、胸が締め付けられた多佳子は、言葉に詰まってしまった。わけもなく泣きたくなってくる。
『多佳子? どうかした?』
無言のままの多佳子を秋孝が気遣う。
こんな優しさ、今までもらったことない。
今、博との違いがはっきりと分かった。
どうしてこの人をフッてしまったのか、と過去の自分に憤りを感じてしまうほどだ。
『多佳子? ほんとに何かあったのか?』
本気で心配し始めた秋孝に、「ご、ごめん」と即座に返事をする。
「ちょっと、いろいろ考え事があって」
『考え事? ……悩み事なら俺で良ければ、相談にのるけど?』
「……うん。ありがと」
秋孝は高校の時から変わらない。
多佳子が落ち込んでいる時は笑って励ましてくれたり、悲しいことがあれば慰めてくれたり、相談にも真面目にのってくれた。
秋孝の良さをこれだけ知っているのに、博と結婚してしまったのは何故なのだろう?
今思えば、過去の自分の行動が不可解なことばかりに思えた。
「ね、秋孝」
『ん?』
「……私のこと、好き?」
『うん』
冗談に取られるかとも思ったが、秋孝は真剣な口調で即答した。
そのことに、訊ねた多佳子の方が驚いてしまう。
『今さら訊くの?』
「……」
気恥かしさから、多佳子の顔は急激に赤く染まった。
秋孝の気持ちは分かっていたが、こう真正面から直球で言われるとやはり照れてしまうものだ。
『ちゃんと付き合ってよ、多佳子。そしたら多佳子が悩んでる時も辛い時も、ずっとそばにいてあげられる』
そう言う秋孝の声は穏やかで、多佳子が抱えている負の感情を全て溶かしてくれた。
間違いない。秋孝を選べば絶対に失敗しない。
「うん」
『…………えっ? ほんとに?』
長い沈黙の後、信じられないといった様子で、秋孝が聞き返す。
「うん。ほんとに」
『マジで! ほんとに? やった!』
嬉しそうな叫び声が、痛いほど多佳子の耳に響いてくる。受話器越しの秋孝の満面の笑みが目に浮かぶようだ。
そんな反応に、多佳子は幸せそうに微笑んだ。
――その時、不意に目の前が真っ暗になった。
「! な、何?」
【ご満足して頂けているでしょうか?】
動揺する多佳子に、柔らかな声が掛けられる。それは聞き覚えのある声と口調だった。そして目の前の暗闇が、一瞬にして周り一面、空色に変化した。
その景色の中に、会った時と同じ格好をしたシーカが、優美な微笑を浮かべて立っている。
「驚かさないでよ」
安堵の息を吐いた多佳子は、苦笑しながら軽く抗議した。
「もう迎えに来たの?」
【いいえ。途中経過を確認しに来ただけでございます】
途中経過ということは、ここが折り返し地点なのか。
しかし前半を体験した多佳子は、気が急いていた。
早く現実世界に戻り、博との離婚を進めたい。そして独身の秋孝に、自分からプロポーズしたい。そうしないと、秋孝の心が自分から離れてしまう。
現実世界で、秋孝に結婚を報告したのが一年ほど前。独身であることは共通の知人から聞いて知ってはいるが、彼女がいるかどうかまでは分からなかった。
もしかしたら、もう遅いかもしれない。でも、まだ間に合うかもしれない。
多佳子は焦っていた。
「ね、途中で帰ることは出来ないの?」
シーカに詰め寄るように訊ねる。
懇願する多佳子に、シーカは少し困惑したような表情を浮かべた。
【出来ないことはございませんが、わたくしと致しましては、全て体験していかれた方がよろしいかと存じます】
「どうして?」
【この時点でご満足して頂けたのは何よりなのですが、あなた様の本当のお望みは、彼との結婚生活にあるのでは?】
「……そう、よ?」
【それでしたら、彼との結婚生活というものも体験された方が、良いかと思われるのですが?】
「……」
確かにシーカの言う通りだ。秋孝との結婚生活を体験し、自分が幸せになれるかどうかを確認しなければ、この仮想空間に来た意味が全くない。しかし離婚話を早く進めたい、という自分の急いた気持ちも払拭出来なかった。
「なら、早送りみたいにして、体験することは出来ない?」
【早送り、でございますか……あなた様がそれをお望みなら】
少し考える素振りを見せたシーカだったが、その要求をあっさり承諾すると、再び多佳子の手を取り、右手でパチンと指を鳴らした。
【彼との結婚生活から始めさせて頂きますが、早送りをご所望でしたので、一日が早く経過していきます。彼の一挙一動をお見逃しなきよう、ご堪能下さい。それでは】
少し深めた笑みでそう言ったシーカは、その場から姿を消した。
意味深なシーカの言葉が気になった多佳子だったが、目の前の一変した景色に意識を引き戻された。
そこは白と緑を基調とした、爽やかな印象の家のリビングだった。周りを見回すと、洗濯機や冷蔵庫、大型の液晶テレビやタンスなど、生活に必要な家具類なども全て揃っている。
しかしどこを見ても、現実世界の自宅とは明らかに違う内装だった。どうやらシーカが言った通り、秋孝との結婚生活の場に自分はいる、らしい。
時計を見ると、針は午後五時を指そうとしていた。
「この時間に家にいるということは、私は仕事を辞めたことになっているのかしら?」
会社に勤めていた頃は、どんなに早くても家に帰り着くのは六時半だった。ここが会社に近い場所なのかもしれないが、それでも、仕事をしていたらこの時間に家にいることは不可能だ。
「どうも情報がなさ過ぎて、混乱してしまうわ」
多佳子は溜息を吐いた。
だが、自分がエプロンをつけているところを見ると、夕飯の準備をしているだろうことは推測できた。急いで夕食の準備を済ませていると、あっと言う間に七時になる。
「ただいま、多佳子」
「お帰りなさい」
そして帰ってきた秋孝と、明るい夕食を楽しんだ。
その次の日も、その次の日も、同じことの繰り返しではあったが、多佳子は秋孝との結婚生活に幸せを感じていた。
毎日暴力に怯えることもない。自分のやりたいことや言いたいことも、素直に言える。他人から見れば、この生活は当り前なのかもしれない。しかし多佳子にとっては、とても幸せなことだった。それは、現実世界では絶対に有り得ないものだったから――。
それに
博との違いをまざまざと見せつけられ、焦りに拍車が掛る。
早く終着点にならないかしら。
そう思っていた多佳子だったが、それは突然訪れた。
結婚して一カ月を少し過ぎた頃、秋孝の帰りが遅くなりだしたのだ。ひどい時は、朝方まで帰ってこない。
「今までどこにいたの?」
「会社の上司から呑みに誘われて、さ」
帰ってきた秋孝を問い詰めても、事務的な答えが返ってくるだけ。
「こんな時間まで何してたの?」
「今、仕事が立て込んでるんだ」
イラついたような口調で言い返される。
しかも同僚と上手く口裏を合わせているらしく、多佳子が電話などで確かめても、真相が全く分からなかった。
これまでの秋孝との生活を思えば、信じたい気持ちもある。博以上の優しさや思いやりを持っていることを知っているからだ。だが、最近の秋孝の行動は不自然なことばかりで、どうしても疑念を抱いてしまう。
そんな鬱々とした日々を過ごしていた多佳子のもとに、ある日、一本の電話が入った。電話の相手は友達の
真奈は以前勤めていた会社の同僚で、多佳子の一番親しい友人である。
『もしもし、多佳子? 今ちょっと出て来れる?』
どこか急いでいるような口調に、妙な胸騒ぎを感じた多佳子は、すぐさま「行く!」と返事をし、真奈の待つ喫茶店へと向かった。
カランカラン
店の出入り口に付けられている鐘が、来客を店内に告げる。
「あ、こっち」
多佳子に気付いた真奈が、声のトーンを落とし、少し腰を上げた状態で手招きしていた。
店はテーブルごとに観葉植物やおしゃれなスクリーンなどで仕切られており、半個室のような空間が作られている。それでも、ちゃんと店の照明が行き渡るように計算されており、変な圧迫感はない。植物が多く清潔感もあり、店全体が癒しの雰囲気を醸し出していた。
真奈はその店の一番奥に座っていた。
「どうしたの?」
真奈の向かい側に座りながら、はやる気持ちを抑えつつ多佳子が訊ねる。
「うん。ちょっと……いや、かなり言い辛いことなんだけど……」
歯切れの悪い真奈に、嫌な予感が強くなり、多佳子の表情も自然と険しくなった。
「……あそこの角のテーブル見て」
少し逡巡した後、真奈は多佳子の右斜め後ろの角の席を指で指した。
店内に置いてある観葉植物が死角になってよく見えなかったが、そこには仲良さ気に話をするカップルがいた。
「!」
しかし、次の瞬間、多佳子は自分の目を疑った。そこにいたのが、今の自分の夫である秋孝だったからだ。
「ここ数日、ずっとあんな感じでこの店に通ってるの」
凝視したまま言葉が出ない多佳子に、躊躇いがちに真奈の声が聞こえた。
「多佳子に教えるべきかどうか、ずっと悩んでて……。でも、やっぱり多佳子を裏切ってるのが許せなくて」
真奈は多佳子の結婚式に出席しているため、秋孝の顔を知っている。それに加え、現在、真奈はこの喫茶店の店長だ。必然的に秋孝の不倫を、目にしてしまっていた。
「結婚式の時の、幸せそうな多佳子の笑顔を思い出したら、だんだん腹が立ってきて……。ねぇ、秋孝さんと何かあったの?」
心配気に訊ねてくる真奈の言葉も耳に入らないほど、多佳子は頭が真っ白になっていた。
目に映るのは、親密そうに腕を絡め、楽しそうに顔を寄せ合っている秋孝と知らない女性だ。どこからどう見ても恋人同士にしか見えない。
「ど、うして……?」
信じられない気持ちが心を支配し、声が震えた。
どういうこと? どうして、こんなことになってるの?
「多佳子。秋孝さんとちゃんと話した方が良いよ」
テーブルに乗っている多佳子の手に、真奈がそっと自分の手を重ねる。
「!」
多佳子の手は小刻みに震えていた。
結婚して、まだ一カ月だ。この事実は多佳子にとって、相当なショックだったはずだろう。
辛そうに目を伏せた真奈は、多佳子に教えたことを後悔した。しかし、このままでは多佳子は幸せになれない。今回のことは、友達を思っての苦渋の選択でもあった。
「もしかしたら、何か理由があるのかもしれない。それは話をしてみないと分からないことだよ?」
しばらく無言のままだった多佳子は、ハッと我に返ると、真奈に向かって小さく頷き返した。
そして泣きそうな顔で……それでもぎこちない笑顔を作る。
「ごめん。教えてくれてありがとう。帰って話してみる」
多佳子は、真奈の気持ちをちゃんと察していた。
何でも言い合える親友だし、お互いに性格も熟知している。故にこのことを知ってから、すごく葛藤しただろうことも、容易に察することが出来た。
「何かあったら相談にのるから、言いなよ?」
フラフラと立ち上がり、店の出入り口に向かう多佳子に真奈が声を掛ける。
「うん……ありがとう」
心配してくれる親友に礼を言い、秋孝を一瞥した後、多佳子は家路に着いた。
喫茶店を出てから真っ直ぐ帰宅した多佳子は、リビングのソファーに座り、まだざわついている気持ちを落ち着けるように目を閉じた。
言いたいこと、聞きたいことを頭の中で整理する。
返ってくる答えが、納得出来ることなのかどうなのか。出来なければ、今後どうするのか?
様々なことを思案していると、玄関を開く音が聞こえた。いつものように「ただいま」と言いながら、秋孝がリビングに顔を出す。
「お帰りなさい。ね、ここに座って? 少し話がしたいの」
姿勢を正した多佳子は、出来るだけ平静を装い、穏やかな表情で自分の前のソファーに秋孝を促した。
「な、何? ど、どうしたの? 改まって……」
明らかに動揺している。
「聞きたいことがあるの。今日のこと」
「あ、あのさ、今ちょっと疲れてて。先に風呂に入りたいな」
促されたソファーに座ることなく、慌てながら食い気味に話を切り上げようとする秋孝に、多佳子は呆れたような溜息を吐いた。こう激しく動揺されては、事実だと肯定しているようなものだ。逆に怒りも冷めてしまった。
「話はすぐ終わるわ。今日喫茶店で会ってた女の子、誰?」
「! えっ……な、何? 何の話?」
ジッと見つめてくる多佳子の視線に、秋孝は顔を引きつらせながら、しどろもどろになる。視線を忙しなく宙に彷徨わせていた。
「私が納得できる説明をしてくれないの?」
徐々に涙が溢れて声が少し震えたが、多佳子は否定してくれるのを待った。
否定してくれれば、まだ続けることが出来ると思ったから――。
「……はぁ~あ」
だが、そんな多佳子の切な願いとは裏腹に、頭上から聞こえてきたのは、秋孝の大きな溜息だった。
恐る恐る視線を上げると、面倒くさそうな表情で秋孝が頭を掻いていた。
「じゃあさ、どう言えば多佳子は納得するの? ただの友達だよ、って言えば納得する? それとも、会社の子の相談にのってたって言えばいいわけ?」
開き直った秋孝の言葉は、氷の刃のように多佳子の胸に突き刺さった。そして、さらに追い打ちを掛けるように言葉を続ける。
「いや、嘘はいけないよね? 多佳子は嘘が嫌いだから。じゃあ、ちゃんと説明する。あの子は、俺の愛人。これで良い? 納得したでしょ?」
決定的な言葉を告げられ、多佳子は愕然とした。何の悪びれもなく言い放たれ、多佳子は返す言葉がない。
幸せになれると思って選んだ相手が、こんな裏切り方をするなんて――。
「正直、ウザいんだよね。上から目線でいちいち文句つけてくるし、何か窮屈。ちょっと可愛いから、結婚したら周りに自慢出来るかも……って思ったけど何か違ったし。もう別れてくれる?」
「じゃあ、何であの時、付き合ってくれなんて言ったのよ」
一瞬、怪訝そうな表情をした秋孝だったが、「あぁ~」と思い出したような声を上げた。
「あれは大変だった。お前学生の頃から全く俺に靡かなかったから、裏から手を回すの、結構骨が折れたんだよ。お前の好きなアーティスト調べたり、趣味調べたりしてさ。違う大学行った時はもうダメかと思ったけど、俺さ、自分からフるのは良いけど、女からフられるのは我慢ならないんだよね」
自分のプライドを守るために、多佳子と結婚したことを冷めた態度で言い放つ。
心ない自分勝手な秋孝の言葉は、多佳子の心をズタズタに引き裂いた。怒りで震える手で顔を覆う。
溢れ出した涙は、多佳子の両手を瞬く間に濡らした。
【お疲れ様でございました。仮想空間は如何でございましたか?】
不意に聞こえた明るい声に、顔を覆っていた手を離し視線を上げると、いつの間にか景色が空色に変化していた。
【おや? どうされました?】
多佳子が泣いていることに、さほど驚くこともなく、シーカがさらりと訊ねる。
「どうしたもこうしたもないわ。一体どういうこと? どうしてこうなるの!」
多佳子は声を荒げた。秋孝に裏切られた行き場のない怒りを、目の前にいるシーカにぶつける。
「秋孝となら幸せになれると思ったのよ? それがどうしてこんな結果になるの? こんなの変よ。絶対におかしいわ。もう一度やり直させて!」
多佳子はシーカの服を掴みつつ、濡れた目で睨み上げた。
【申し訳ございませんが、やり直すことは出来ません。仮想空間を体験して頂くには、招待状が必要になります。最初にご説明致しました通り、招待状はお一人様に一通しか送られません。つまり、この仮想空間を体験して頂けるのは、一回だけということになります】
「こんなの私が望んだ結果じゃないわ。約束が違うじゃない!」
多佳子の言葉に、モノクル越しのシーカの目が細められる。そしてその口元に意味深な微笑を浮かべた。
【あなた様は少し勘違いなさっています。この仮想空間は、あなた様が望んだ結末を体験して頂くことではございません。人生の分岐点で、現実にあなた様がお選びにならなかった、もう一つの道を、体験して頂くことが出来るだけでございます】
確かに間違ってない。最初からシーカはそう言っていた。
ボー然と納得した多佳子は、シーカの服を掴んでいた手を離した。
【あなた様がこの道を選んでいたら、こうなった――。何度体験して頂いたとしても、同じ結末が待っているだけでございます】
がっくりと肩を落とし、膝を突いた多佳子の頬に再び涙が流れる。
「幸せに……なれると思ったのよ? 秋孝なら私を大事にしてくれる、ずっと愛してくれるって。それがどうしてこうなるの? 私の何がいけないの?」
打ちひしがれている多佳子の前に腰を下ろしたシーカは、そっとその手を取った。泣く多佳子に、特に同情することもなく、相変わらずその顔には優美な微笑を浮かべている。
【それでは、現実世界へご案内致します】
そう言ったシーカは指をパチンと鳴らし、空色の景色を瞬時に一変させた。
一瞬暗闇になり、次に多佳子の目に映ったのは、現実世界での家のリビング。今朝、博にネクタイで殴られたキッチンだ。
立っていることが出来ない多佳子は、先程と同じように膝から崩れるようにして座り込む。
返事をする気力もないような多佳子を、シーカは見下ろす形で見つめた。
握っている多佳子の手にも、ほとんど力はない。仮想空間でのことが、精神的に強いダメージを与えていることが、ありありと窺える。
しかしそんなことにはお構いなしのシーカは、多佳子の手を離すと、すっと丁寧に頭を下げた。
【あなた様が真実の愛を手に入れられることを、わたくしも心より祈っております】
意味深な言葉を多佳子に送ると、シーカは一瞬にしてその場から姿を消した。
「…………」
現実世界に戻ってきても、また博に殴られる日々が続く。博と離婚して秋孝と一緒になり幸せになろうとした自分の計画は、仮想空間を体験したことで、ことごとく潰されてしまった。
「ふっ……ふふっ」
エプロン姿のまま、今朝と同じようにキッチンで泣き崩れている自分を、多佳子は自嘲的に笑った。
自分に幸せな道はないんだ――。
ピンポーン。
そんな絶望感に浸っていた多佳子の耳に、玄関のインターホンの音が響いた。
「!」
我に返った多佳子が時計を見ると、針は六時を少し過ぎた位置を指していた。隣の窓に視線を移すと、そこから差し込む陽の光がオレンジ色を帯びている。
しまった! 夕飯の準備が何も出来てない!
博に殴られる自分を想像し、多佳子は身震いした。
今度は何で殴られる? またネクタイ? それともカバン? 玄関にある傘?
涙を流しながら、多佳子の頭の中は激しく混乱していた。頭を抱え、徐々に荒くなる呼吸を抑えようと必死になる。
ピンポーン。
「!」
再び鳴らされるインターホンに、多佳子の体もビクつく。
ど、どうしよう……殴られる。
動揺して忙しなく動かしていた多佳子の視線の先に、きらりと光るものが目に入った。キッチンに出しっ放しにしてあった包丁だ。
何を思ったか、気付くと多佳子はその包丁をおもむろに握っていた。
妖しく光る包丁に自分が反射して映り、自分のひどく怯えている表情が目に入る。
こんなに不幸な顔で、この先ずっと過ごさなきゃならないの……?
「おい? 多佳子! ったく、使えねぇ~な」
「!」
玄関のドア越しに小さくぼやく夫の言葉が耳に届き、多佳子の精神は限界点を超えてしまった。
両手で包丁を持ったまま、よろよろと玄関先に向かう。
そしてガチャッと自分で鍵を開けてドアを開いた夫に、多佳子は思いっ切り包丁を振りかざしていた―――。
改めまして、シーカでございます。
最初のお話としては、少し後味が悪かったかもしれませんね。
多佳子様には、もう少し広い視野を持って頂きたかったのですが、精神の方が先にやられてしまったようです。
さて、皆さまは真実の愛がどのようなものか、お考えになったことはございますか?
一人一人、愛情というものの価値観は違うものです。
愛情の形は人それぞれ、十人十色でございます。ですがその本質は変わらない、とわたくしは思っております。
それが家族でも友達でも、恋人でも夫婦でも、その他の誰に向けられたものだとしても……。
―――見返りを求めず、自分以外の誰かの幸せを願うこと。
それこそが真実の愛、なのではないでしょうか?
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