第95話 武闘大会 次哉の場合

「ただいま戻りました。」

「やったであるな。」

「凄いじゃないアリア。やっぱり、やればできる子よね。」

詐欺師のそれは褒めてるのか?


「どうでしたか?勇者殿。」

「普段は頭が回らないのに、戦闘だと賢くなるんだな。」

「それ褒めてませんね。」

脳筋がむくれる。

「悪かった、おめでとう。」

「最初からそう素直に言ってくれればいいんです!」

これで試合をしてないのは俺だけか。


脳筋の試合からさらに経過して、

「え~、これは……ヂュギャ対カゾ!」

……多分、あれ俺の事だよな?何回か思ったが、文字を読めなくなるって

どういう事だよ?

「まぁいい。行ってくる。」



「戻ったぞ。」

「「「……」」」

三人がこっちを何とも言えないような表情で見てくる。


「不満でもあったか?」

「武器屋に行ったのは常識内の戦い方をして欲しかったからですよ?」

「棍棒は殴る用の武器でしょ。投げてどうすんの。」

「5mはあるサイクロプスの頭に当てて一発で倒さないで欲しいである。」

できたんだからしょうがないだろ。


俺が終わった後も何組か戦って一回戦がすべて終了した。その時、

「つ~ま~ん~な~い!」

レフィカとやらが叫んだ。


「レ、レフィカ様?」

「この大会はアタシが暇だから開催したって言ったでしょ?なんかもっとこう、

バッと派手な魔法を使って町ごとふっ飛ばすみたいな事をして楽しませてよ!」

お前も死ぬだろ。


「このままじゃつまんないわね。似たり寄ったりの戦いを見させられる

こっちの身にもなってくれない?」

お前が願いを叶えるとか宣言したせいで、どれだけ集まったと思ってるんだ。


「ルール変更。アタシと戦って勝った人を優勝者にしま~す。」

「レフィカ様!?」

「マジか!?」「え、どうするの?」「あの人に勝てるのかよ……」

ザワザワと騒がしくなる中、レフィカが会場裏を見ながら指を鳴らした。

「ぎゃあ!」

「ひっ!?」「うお、マジかよ!?」


選手の一人が火達磨にされている。

「じゃあいきま~す。」

「逃げろ!」「助けて!」「聞いてねぇよ!」


次々と逃げ出す選手と観客。目線が――マズい!?

「あれ、今のヤツ避けた?」

「俺が掴んで逃げただけだがな。」

後ろから声を掛けると少し驚いたように振り向く。

「へぇ。凄いわね。」

「お前なんぞに褒められても嬉しくないし、ムカつくだけだ。」

俺が抱えた三人に目をやるレフィカ。棍棒は邪魔だから置いてきた。


「そこのリュリュちゃんは試合で利用されたから、ついでに殺そうしたんだけど

運がよかったわね。」

「私狙いだったの!?」

「ふふ、とっさに庇うなんて彼女だったりした?ごめんね。一緒じゃなきゃ

寂しいわよね。」

いろんな意味で痛い目に遭わせた方がよさそうだ。


ステータスは……


レフィカ Lv38

HP:897  MP:571  ATK:21  DEF:46

INT:133  MGR:130  DEX:82  LUC:103

スキル

【四属性の加護】【魔法ダメージ半減】【MP自動回復】


【四属性の加護】

土・水・火・風を操り、無詠唱で攻撃できます。

相手からの四属性に関するダメージも半減させます。


さっきから指を鳴らしただけで燃やしてたのは、このスキルのせいか。

ユニークスキルっぽいから覚えられるかどうかは怪しいな。


「どうしたの固まっちゃって?来ないならこっちから行くわよ?」

レフィカが指を鳴らすが、直前に視界から外れて蹴りをカウンターで叩き込む。

「危ないわね!」

こちらの攻撃も寸前で空中に浮かんで避けられた。よく避けたな。


「うっとうしいわ!死になさい!」

今度は風がレフィカを中心とした半径十数mを唸りながら切り刻んでいく。

「風の刃、お味はどうかしら?」

「不味いな。」

「嘘!どうして!?」

無傷の俺達を見て驚いてるが、こっちは風の補助魔法を張っただけだ。


「これなら!」

次は土が波のように襲ってきた。重量で潰す気か。

3mほどある土の波に覆いかぶさられる前にジャンプしてかわす。

「俺が許す。詐欺師、手加減してベルを使え。」

「でりゃあ!!」


辺り一面にベルの音が鳴り響いて、


バァン!

「ぎゃん!!」


レフィカが吹っ飛んで地面に叩きつけられる。


「た、倒した?死んでないよね?」

「大丈夫だ、安心しろ。」

死んでないのはステータス画面で確認したから、後は起こして

けじめを付けさせないと。

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