第93話 武闘大会 リュリュの場合

サーシャが俺達のところに戻ってきた。

「お帰り~。」

「ただいまである。」

「一回戦突破ですね!」

「弱点がある種族であったからね。運が良かったである。」

むしろサーシャの薬で弱点を突けないのはいないんじゃないか?


「どうだったであるか?」

サーシャが見上げながら尋ねてきたので、頭をなでてやった。

「ああ、よくやったな。」

「むふ~。」


「次の試合は……ザン対ボウ!」

「あ、アイツらって。」

詐欺師の声に会場を見てみるとミノタウロスとオーガがいた。

「因縁の対決ってやつですかね。」

しょうもない因縁だな。しかしオーガの拳は砕いたと思ったが、根性だけは

あったらしい。


風魔法で声が届いた。

「辞退したかと思ったぜ。雑魚のくせにプライドでもあったのか?」

「ハッ!抜かせよ!ステーキにして食ってやろうか、クソ牛が。」

「んだとぉ!」

その言葉を皮切りに殴る、避けるの繰り返す。

だが、どうやら強さは互角らしく、しばらくすると睨み合いが続いた。


「はい、終了~。」

「「!?」」

いきなりレフィカとやらが終わりを告げた。

「ちょっと待て!まだこのステーキ野郎との決着は付いてねぇんだぞ!」

「言い草は気にいらねぇがその通りだ!」

「だって、睨み合うだけとかつまんないんだも~ん。両者しっか~く。」


アイツが止めたらってのは単に気分の問題か……

「テメェ……!ぶち殺してやろうか、アァ!?」

オーガとミノタウロスがレフィカに迫るが、

「雑魚のくせにうっとうしいわね。」

そう言って指を鳴らした瞬間。


「ガァァァァァァ!!」「ブモォォォォォォ!!」

二人の全身が炎に包まれた。

「まったく……私が楽しみたくて開催してるんだから、つまんない試合したら

失格だって分かるでしょう?」

いや、わからんな。自己中にもほどがあるだろ。


「はい、次の試合行っちゃって~。」

「次の試合は……ヴァブ対ディックス!」

二人が関係者だかに連れられてどこかへ行った。進行のやつも

何事もなかったかのように試合を進める。こういう状況に慣れてるのか?


そして、試合は進んでいき、

「次の試合は……オーベル対リュリュ!」

「思ったよりもすぐだったわね。行ってきま~す。」

「無理はしないでくださいね。」

「頑張るである。」




「あんまりこういうのは得意でもないんだけどな。」

食堂でヅガァに

”「自分の強さを測るためにいい機会だろ。まぁ全員思ってるよりも強いし

案外、いいところまで行くんじゃないか?」”

とか言われちゃあね~


ドドドドドドド……

考え事をしてたら変な音が響くわねと思って、そちらを向くと、

鳥の身体と翼にシカの頭と脚を持ったペリュトンが突進してきていた!?


「ひゅわおぅ!?」

「チッ!」

「ちょっと!試合開始もしてないのに攻撃してくるなんて卑怯じゃない!」

「何言ってんだ、お前?向かい合ったら試合を始めていいって言われた

じゃねぇか。」


レフィカ様の方を見ると、

「いい試合になるなら、何でもいいわよ~。」

って言ってる……あの人、ホントに自由奔放ね……


「オラァ!行くぞ!」

ぺリュトンが空を飛びながら突進してくる。

「我、尊き神に願い奉る。目の前にいる者の動きを封じたまえ!」

地面の土がぺリュトンめがけて絡み付こうとするが、動きが早くて

捕まえられない。


「どうした、当たんねぇぞ!」

「くっそ~!」

私も避けながら魔法を使ってるけど、このままだとジリ貧ね。

ベルは威力があり過ぎるからって使用を控えろって言われたし……

そうして飛んでると目の端にレフィカ様が見える。

……あの人なら許してくれるよね?


「こっちよ、こっち!」

「オオオォォォ!!」

ぺリュトンを狙ってる場所に誘導して、今だ!!


チリィン……

ドオオォォォォン!!


地面に向けて打ったからもの凄い音が鳴って土煙が上がってる。

「うぉ、前が見えねぇ!?」

狙いバッチリ!

「こっちよ!」

「そこかぁ!!」

声のする方に馬鹿正直に突っ込んでくれるなんて、ありがたいわね。


「でぇりゃあ!」

バキャ!

「……何してくれてんの?」

「へ?」


壊れる机、かすってる角、ぶち切れてるレフィカ様、青ざめるぺリュトン。

「あ、あのこれは「問答無用よ。」」

あ、燃やされてる。


「リュリュちゃん、だったかしら?」

「あ、ハイ。」

「今回は大目に見てあげるけど、もしもまた私を利用しようとしたら殺すわ?」

「肝に銘じておきます……」

ヤバイ橋を渡ったけど、どうやら勝ったみたい……で、いいのよね?

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