第92話 武闘大会 サーシャの場合
昼過ぎになり、そろそろ始まろうかという時間になって、
「ここでレフィカ様から説明をお願いしたいと思います。」
会場の方からデカイ声が聞こえた。
「風魔法で声を拡散させてるみたいね。」
そんな使い方もあるのか。
「はぁ~い。みんな元気~?」
ウオオオオオオォォォォォォォォ!!
……頭の悪そうな声と歓声が聞こえる。あれがこの国のお偉いさんで
合ってるのか?
「この武闘大会は暇だから開催してみたんだけど、手は抜かないでね~。
優勝したら願い事とか叶えられる範囲で叶えてあげるから~!」
オオオオオオオオオオ!!
やる気が削がれる……
「じゃあ、ルール説明ね。一対一の勝負で、武器はなに使ってもOK。
殺しちゃっても罪には問わないわ~。」
何気に恐ろしい事もサラッと言うあたりは、さすが無法地帯の国といった
ところか。
「試合は完全に決着が付いたり、アタシが止めるかした時点で終わり。
向かい合ったら試合を始めていいわ。それ以外のルールは特にない感じで
よろしく~。」
「以上、レフィカ様からのお言葉でした。」
「レフィカとやらが止めた時点で終わりってどういう事だ?」
「そのままじゃない?こんだけ人数多いし、時間見ながら適当に
止めるんじゃないかしら。」
「しかし、まさか殺しがOKとは思わなかった。三人とも危なかったらすぐに
降参しろ。腕試しで参加させただけだし、なんなら今から不参加でも
構わんぞ。」
「大丈夫です。参加するだけはしてみます。」
「そうか。」
何事もなければいいがな。
「最初の試合はサーシャ対ヴェルヴェラ!」
いきなりか。
「サーシャ、気を付けろよ。危なくなったらすぐに降参しろ。いいな?」
「大丈夫である。行ってくるである。」
そうしてサーシャは会場に向かって歩き出した。
参加者も裏から見れるように二階席が用意されていた。
俺と脳筋と詐欺師は二階に行き、試合の様子を観察する。
サーシャが会場に出てきた後に、続いてヴェルヴェラと呼ばれたヤツが
出てくる。
「アレはなんて言う種族だ?」
「人猫ワーキャットですね。動きが素早く鋭い爪や牙を攻撃に使います。」
会場で二人が向かい合う。
「はぁい、おチビちゃん。いきなりなんだけど、弱い者いじめって
したくないのよ。さっさと降参してくれない?」
「嫌である。」
「でもねぇ、おチビちゃんに勝ち目はないわよ?」
「そんな事はないである。猫系の獣人なら古今東西、昔からの必勝法が
あるである。」
「なんですって?」
会場内を見渡してみると、約50×50mの土を敷き詰めて整地された場所が
あるだけ。
その外にレフィカの席があり、さらにその後ろで観客がひしめいてる。
相手とは大体、20mは離れている。
バッグを探しあの薬を探して、と……あった。
「舐めたセリフを吐くじゃない。じゃあやってみなさいよ!」
言い終わった瞬間に凄いスピードでこちらに走ってくるけど、それより先に
ビンに入った薬のふたを開けてあたりにばら撒く。
人猫は構わず突進してくるが、
「ニャッ!?」
薬――マタタビを吸った瞬間、怯んだ。
「ニャニャニャニャ!?にゃにしゅんにょ!!」
さすがおじいちゃんが配合を考えた薬。効き目が速攻だね。
「どうするである?」
「こ、こんにゃみゃけきゃちゃしゅりゅにゃんてぇ……!」
「もう呂律が回ってないであるよ。」
「み……みゃー♪」
人猫がたまらずゴロゴロし始めた。もう完璧にマタタビの虜になったみたい。
「だから必勝法があるって言ったである。」
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