第67話 イオネ王国について

とりあえずサーシャと一緒に部屋を出る事にした。

「おはようございます。」

「おはよ~。」

「おはようである。」

「……あぁ。」


脳筋と詐欺師もちょうど部屋を出てきたタイミングだったらしく、

鉢合わせになった。

「どうしたんですか?」

「サーシャに手を出そうとして反撃でも食らったんじゃないでしょうね?」

何かしてやろうと思ったが、そういう気分でもない。


「何よ、本当に元気ないわね。どうしちゃったのよ?」

「気にするな……」

「ご飯食べに行くである。そうすれば元気も出てくるである。」

あまり食欲もないが、食わないわけにもいかないので顔だけ洗って、

外に行く事にした。


「うわ~、一日だけでも結構直るもんなんだね。」

壊れた建物や道路、国境を守る壁までかなり補修されていた。

「夜通し頑張ったからね。」

「アンタは……」

「昨日はよく眠れなかったのかい?」


昨日話した警備責任者だ。

「いや、少し夢見が悪くてな。」

「そうかい。」

「夜通しとはいえ、ここまで直すのは凄いもんだな。」

「みんな、この街を好きだからね。壊れたままなのが許せないし、

悲しくなるのさ。」

誇りを持って仕事しているんだな。


「ねぇねぇ。ここら辺でご飯が美味しいお店ない?」

「ん?美味しいところ……それなら、この道を真っ直ぐ行った突き当たりに

食堂があるよ。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ、我々もそろそろ一度引き上げます。」

「あぁご苦労さん。」

「またである。」

そうして去っていった。


「にしても、さっきの人が補修してる姿があまり想像付かないんだけど。」

「細かい穴の補修とかじゃないですか?」

まさか警備責任者がリスとは誰も思わなかった。

詐欺師より小さいしな。



「いらっしゃい!」

店員に朝食を注文した後、イオネ国について詳しいヤツがいないか質問した。

「ああ、なんなら飯作った後にでも話してやろうか?」

「いいのか?」

「客もほとんどいないし、構わないさ。」

確かに美味い店だと聞いたのだが、人の姿はちらほらとしか見えない。


「この時間はこんなものか?」

「いや、いつもはもっといるんだがね。昨日のゴタゴタで自分の家や店が

壊れたり、 外に出るのが怖いってヤツらがいるからな。」

「なるほど。」

そういえば外も人通りが少なかった気がする。


「んじゃ、ちょいと待ってな。」

そう言って、厨房に消えて待つこと十数分。

「お待ち!」

見た目もそうだが、匂いも美味そうな飯がきた。

ボリュームもかなりある。

「「「「いただきます。」」」」


「ん……美味いな。」

「そうかい、あんがとよ。で、何が聞きたいんだ?」

「イオネ国とはどんなところかかな。」

「イオネ国ねぇ……あそこに住んでるのは魔族って知ってるよな。」

「そうらしいな。」

昔、詐欺師から聞いたな。


「魔族と魔物の違いってのは大きなところで言うと知能の差があるんだ。

見た目も人間に近いしな。だが、やっぱり闇に染まってるというか、

自分の欲望に忠実なんだ。」

「どういう風に?」

「人を騙したり、からかったり……まぁいろいろだな。だから、話は通じるが

あまり好かれにくいというか。別の意味で好きなヤツはいるがね。」

別の意味?


「朝っぱら、女子供がいる中で言えることでもないがね。」

「そういう事か。」

「「「?」」」

残り三人は意味が分かってなかった。ちょうど良かった。


「今はスターナ様が国王をやってらっしゃるが、あそこはしょっちゅう国王が

変わるからな。」

「何故?」

「暗殺だの政権乗っ取りだのが多いね。」

「そんなんでいいのか?」

「欲望に忠実だと言ったろ?みんな楽しけりゃ何でもいいのさ。」

よく国として成り立つな。


「国の内情をもっと知りたきゃ、後は向こう側で聞いたほうが早いな。」

「そうか、すまんな。」

「いいって事よ。」

話してる間に俺以外はほとんど食い終わってた。

俺も残りを胃に納めて、イオネ側に渡る準備をする事にした。

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