第27話 別れ

「ハックシュン!」

ようやくお目覚めか。

「あれ?ここは?」

あの後、さすがに外に放りっぱなしでは辛いだろうと町長の家に

運びこまれた脳筋は事情が飲み込めていないらしく辺りをキョロキョロしている。


「勇者殿、何をしているんですか?」

「町を出る支度だ。」

向こうも顔を合わせたくはないだろ。

「そんな急がなくても…」

「さっさとしろ。」

自分と脳筋の荷物をまとめていたので渡して出るように言う。


愚痴をこぼしていたが荷物を受け取り、家を出て

馬を連れ町から少しだけ離れたとき、

「待って!」

「ネアちゃん!?」

ネアが追いかけて来た。


「待って、待ってください!」

少し立ち止まり追いついてくるのを待った。

「どうしたの?」

「はぁはぁ…お、お父さん、許して…ヒック…くださ…」


追い付くなり涙声で喋りだし、

「許して…う、うぇぇ…おどうざん、ぎらいにならないで…うわぁぁぁぁ!」

凄い声を上げて泣き出した

「ちょ!どうしたんですかネアちゃん!?」

「おどうざん、やざじいの!いつもネアのごとじんぱいじてぐれて…

だから嫌わないで!!お願い!!!!」


しばらく時間を置いて泣き止ませる事にした。

癇癪を起こすなんて初めて子供らしいところを見た気がする。



「…もしかして朝の会話、聞いてたのか?」

黙って頷く。

「朝の会話って何ですか?」

「お前は気にするな。だから追いかけて来て謝ったのか。」

再び頷いた。


「悪いな。気付ければ良かったんだが…」

「勇者様、悪くないの…知ってるから…」

鼻をすすりながら続ける。

「勇者様、朝早くにお父さんと話したのは皆と私の為でしょ?」

「…」

「昨日あの場所で言っていたら知らない人はショック受けてたと思うから。」

この子は本当に頭が回るんだな。


「もし嫌われたくなかったら頑張れ。」

「?」

キョトンとした顔をするネア。

「またいつか、お前と会うときに町の人間がまともになってたら

許してやるかもしれん。」

「!」

「だからまぁちゃんと生きる事だ。約束できるか?」

「ハイ!」

子供らしい元気な返事だった。


「勇者様~!またいつかお会いしましょうね~!その時は絶対、」

ぜっっっっっったい笑顔でいられるような町を作ってますから~!」

ネアは俺達が見えなくなるまで手を振っていた。

脳筋もそれに答えて見えなくなるまで振り返していたが、

コケるかける事5回、コケる事2回

前を見ろ、前を。



「勇者殿、結局さっきのは何だったんですか?」

「なんでもない。」

「教えてくださいよ~!」

鬱陶しいなコイツ。


思えば、ガナガの時も、スライムの時も、オーク、盗賊、

そして団員との戦闘の時を含めて全て…

「お前が使えないって話だ。」

「え゛!?」

こいつが役に立ったところを見た事がないな。


あの男は好かんが、ネアは立派に…

いや、立派過ぎるんだが育っているのを見ると

きっと父親としては役目を果たしていたんだろう。


親か…俺には親と呼べるのはいなかったな。

産んだだけ、形だけの親だった。

あの世界に未練はない。

それは絶対だ。なのに一瞬、ほんの一瞬だけ確かに


――ネアを少しだけ羨ましいと思っている自分がいた。

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