第12話 一息ついて

練兵場はまだザワめいていた。

「ガナガは初級魔法だのと言っていたが、当たっても無傷でいられるものか?」

「さすがに直接食らっては無理ですな。動かなかったので私は弾き落とすもの

かとばかり考えていましたが。」

「やはりあの方は勇者様なのですよ!こうしちゃおれん、出迎えなくては!」

ヨーグ大臣が走り去っていく。


「ウルム王、よろしいのですか?」

「彼が勇者であるのは間違いなさそうだしな。放っておいてもいいのでは

ないか?」

二人は大臣の背中を見ながら話した。



「勇者殿!!」

脳筋が走り寄って来る。

「脳筋か、どうした。」

「どうしたではありません!お怪我は!?」

近い、声がデカイ、暑苦しい。

「無傷だから問題ない、離れろ。」

さらに近付いてくる。

「さすがです!ガナガ団長の魔法が当たっても傷一つ負わないとは

勇者殿の強さは伝説そのものなのですね!」


本当に面倒くさいな。

「そういやさっきの変な踊りはなんだったんだ?」

「変な踊りって、あれはジェスチャーです。」

ジェスチャー?

「こうやって  ガナガ団長・水魔法・得意・気を付けて  です。

どうでしたか!?」

ジェスチャーは解読できないと意味がないと分からんのか?

しかも最初の魔法はお前を見ていたせいで食らったんだが。


「しかしまぁよくも俺に話しかけたり近付いたりできるな。

昨日は泣きそうだったくせに。」

「き、昨日はあれです!いいんです!それに過去は振り返らない事に

しているんです!」

言葉回しをいいように変えやがった。


脳筋と話してると遠くから

「勇者殿~!!!!」

もっと面倒くさいのが…

「信じてましたぞ!信じてましたとも!さすが伝説に違わぬ実力の

持ち主ですな!」

さすがに脳筋は無茶な命令を下した本人の前だったので顔が引きつってる。

とりあえず王に会いに行くからしばらく近寄るなとキツく言い聞かせておく。


さっきまで王がいたと言う場所に向かうと話している最中だったが、

俺に気が付くと相手から話しかけてきた。

「これは勇者殿。先ほど軽く自己紹介をさせていただきましたが、私は

第1騎士団団長を勤めておりますワミと申します。」

確かそんな名前だったな

「お若いのに相当の実力をお持ちで。我が騎士団員達にもお見せしたい

ところです。

よければクアーズ王国との国境警備をしておりますので近くまで来た際は

お声掛けください。では、失礼いたします。」


そういうとワミというのが立ち去っていった。

「よかったのか?」

「大体話は終わってましたので問題ありませんよ。ところでアリアは

どうでしたかな?」


いきなり何を言い出した?


「アリアは騎士団初の女性隊員でしてな。頭の出来はその、まぁ、アレですが、

顔も整ってスタイルもいい。私が現役なら側室に欲しいくらいです。

他の騎士団員にも隠れファンがいるというのに独り占めとは!」


…?今、違和感が


「英雄色を好むと言いますからな。女性の扱いが上手いのも納得と

言うところですか。」


これは


「ここだけの話、娘も先ほどの戦いを見ていましてな。勇者殿が勝ったときに

顔が真っ赤になってましてな。これはもう惚れてることは確実ですな!」


確かめるべきか?


「私としても勇者殿なら嫌とは言えませんし、どうですかな?将来の

国王候補ですぞ、中々悪い話とは思いませんが。」

「なぁ…」

「どうされましたかな?」

「何でアイツが俺のところに来た事を知っている?」

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