第8話 女騎士との出会い

「何か用か?」

俺はドアの向こうの大臣に向かって声を掛けると、

「失礼しますぞ。お邪魔でしたかな?」

と言って部屋に入ってきた。


さすがに服や部屋やら提供して貰った人間に対して文句を言うのも失礼かと思い、

「いや、大丈夫だ。」

とだけ答えた。

「おぉそうですか。いやぁ良かった!勇者殿に迷惑を掛けてしまっては

申し訳ありませんからな!」

「で?」

「まぁそう焦らずに。最初に一つお聞きしたいのですが、勇者殿は王と

謁見されてどう思われましたかな?」


「能天気だな。」

率直な意見を言う。

「でしょう!私もそう思うのですよ!いや、決して愚王という訳では

ないのですが、いかんせんおおらかというか、楽観主義というか。」

「いいから結論を言え。」

「つまりその…もし次の王を決めるとしたら?」


言いたいことは大体分かった。

「もちろんタダとは言いませんよ?…ほれ、入って来い。」

大臣がそう言うと一人の女が入ってきた。

「挨拶を。」

「…アリア・ラスティアと申します。」

渋い顔をしながら自己紹介させられた後、大臣が近寄り小声で喋り始めた。


「勇者殿が明日、正式に認められれば騎士のお付きも必要となるでしょう。

そこで、この者などいかがでしょう?なんでも申し付けて頂いて

構わないのですよ?なんでも…です。」

ニタニタと笑いながら喋る。

「…おい「いやいや!いいのです。分かっておりますとも!これは私が

勝手にしたこと!お返事はまた明日にでも、それでは!」」


最後の方は勝手にまくし立てて消えていきやがった。


【交渉術】をラーニングしました。


…あれは交渉だったのか?


【交渉術】

議論を交わす際、優位に進めることができます。


こんなのがスキル扱いか。

やっぱりこの世界のシステムは不明なところが多いな。

しかしラーニングしたって言葉が聞こえたって事は


【ラーニング】

通常スキルを受けた際、10%の確立で同様の通常スキルを覚えることができます。


このユニークスキルが発動したのか。

いろいろ覚える事が出来るのはいいが、上限とかあるのか?

しかもまた確立で発動か…

「あの…」

LUCが999なのは助かった。


【LUC】

運を表します。数値が高いほど回避率やスキルの発動確率が上がります。


ということだから高確率で発動するようになるはず。

「聞いていますか?」

しかし上がりますとだけ分かっても、どの位


「もしも~し!!!!」

うるさいな、なんだ?

「まだいたのか?」

ドアの前で少し顔を赤くして女騎士が立っていた。

「まだいたのかではありません!さっきから何度も呼び掛けていたでは

ありませんか!それを宙を見つめてボーっとして!」


声がデカイ、まったく…?

宙を見つめてボーっと?

「これ見えないのか?」

スキル画面を指差してみる。

「何がです?壁に何かあるんですか?」

そう言って目は指の先 ―――― 壁を見つめていた。


コレは俺にしか認識できない?

「なぁ?お前らは相手の能力値ってどうやって判断してるんだ?」

「能力値??」

この反応は見えてないな。


「じゃあスキルはどうやって覚える?」

「スキル?素質のことでしょうか?それでしたら街の占い師にお願いします。」

また分からん単語が出てきた。

「その素質とやらを覚えるとどうなる?」

「なんていうか、こう…心がフワッっとなってそこに何かがブワァっと降りてきて

ピキーンと閃いた感じがします。」

聞きたい事が微妙に違う上に語彙力が無さ過ぎて何言ってるか全然分からん。


とりあえず明日は占い師にも会うことを決めた。

「今日はもう寝るから出て行ってくれ。」

そう告げると女騎士、アリアといったか…は着ていた鎧を脱ぎだした。

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