第6話 馴染む違和感

「王国一の占い師であるレリアに素質や実力はあるとの評価を貰ったんだ。

よいではないか!この者を勇者と任命しよう。」


王様の一声でよく分からないことになりかけたので止めて、

「ちょっと待て、俺はまだ勇者どうこうの話を受ける気はないぞ?」

「ぬ?ダメか?」

「当たり前だ。第一、最初から最後までお前らの勝手で話が進んでるし

メリットが何一つ見えない。」

と反論してみる。


「そうだな、勇者になると国を挙げてサポートに回るからいろんなことに

都合が付けやすいぞ?と、まぁ今話しても納得しないだろう。

とりあえず一晩休んで明日にでもまた話し合おうじゃないか。」


こうして俺が勇者かどうかを見極める謁見が終わったが、部屋を出る前に

「そういえば君の名前を聞いていなかったな。」

「普通は最初に聞くんじゃないのか?」

「そう怒らないでくれよ。といいつつ、こちらも自己紹介をしていなかったね。

私が国王のウルム・シエ・アトバルだ。そしてこっちが…」


お姫様が頬を膨らませ横を向く。

「こらこら、怒った顔も可愛いがこういうときはちゃんとしないと。」

お姫様のワガママはコイツのせいじゃないか?

「…王女のフィーナ・メディ・アトバルですわ。」

体中から仕方なくやってるオーラを出しながら名前を言った。

腹が立つ。


「私はレリア。しがない占い師です。」

占い師の自己紹介が終わるや否や

「私は大臣のヨーグ・ビワンです!」

誰だコイツと思うような奴が無駄にでかい声で自己紹介してきた。

「王が忙しいときなどは私が雑務などをこなしておりまして!

それはもう王のために粉骨砕身、日夜頑張っています!」

「そうだな!大臣がいなければ私は過労死してしまうところだ!ハッハッハ!」


正直どうでもいいことを言われても知らん。

名前だけ言って終われよ。

「それで君の名は?」

「俺はく…次哉だ」

俺は死んだんだ。九条の名はもう要らない。


「ん?ん~…ツギャー?」

「誰だそれは。つ・ぐ・やだ。」

「ツグヮー?」

「馬鹿にしてんのか?」

「いやそんなつもりはないんだよ?ただ、何か聞き取りづらいというか…」


聞き取りづらい?

そういえば何で言葉通じているんだ?だってここは異世界だ…

異世界?


「どうかしたかね?ツ…ツギニャ君。」

「…いやなんでもない。というか不愉快な呼ばれ方だな。」

「どうしたものか…ではしばらく勇者殿ということで。」

「俺が勇者やることになってるじゃねぇか。」


その後も少しだけ名前のやり取りをしたけど発音できていなかったので

不本意ながら勇者殿で承諾した。

ちなみに俺は勇者にならなかったら、その時に新しい呼び名を考えるそうだ。

能天気な国王だ。

あいつが王様でほんとにこの国は大丈夫か?


それにしても…洞窟にいた時から違和感はあった。

だが考え事をしているうちに問題がなかったように頭の片隅に

いろんなことが追いやられていった。

俺は昨日この異世界に来て2日目だ。

それなのに昔からこの世界で生きてきたかの様な感覚。

一体これはなんなんだ。


ここに移送される時も思えばよく眠れたな。

あんな異常事態の連続で落ち着いていたって事だし、それに

「俺はこんなに口が悪かったか…?」

いつも丁寧にとかは思ってないが、今まで人にケンカを売るようなことは

したことなかったのに。


「少し考える必要があるかもな。」


そう呟いて、大臣が手を回してくれていた宿泊施設に向かった。

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