第369話: 最終訓練2
意味深な笑みを浮かべる魔王の前に現れたのは、転移門だった。
転移門を潜るとその先にあったのは、何もない不自然なまでに白い世界だ。見渡す限りの真っ白な世界に場違いとも言える風貌の男がそこに佇んでいた。
「何故アイツがここにいるんだ!」
勇者レインが聖剣を抜き構える。
無理もない。あれは間違いなく7大魔王の最後の1人、エドアールだった。姿形は確かにそうだが、気配をまるで感じないのは何故だ?
「安心せい。当然ながら本物ではない。儂の仲間に相手をコピーする異能を持った奴がおってな。能力もある程度はコピー出来る。強さは術者本来のものだがな」
姿格好は俺も間近で見たから分かるがエドアール本人そのものだ。引き締まった体躯に見上げるような大男。背中には長身に映える長刀。
「なによ、アイツと仮想戦闘でもしようっての?」
「そのようだな。セリーヌ、まだ本性は現していないが、相当の強者だ。油断はするなよ」
「本物じゃないなら余裕よ。この人数相手に何が出来るってのよ」
クロが相手に頭を下げる。
仲間ってことは同じ魔族か。知り合いなのかな。
「遠慮することはない。今の奴のレベルは限界突破の100じゃ。勿論複数の魔族たちから数多のバフを掛けてもらっておる故だがな。殺す気で挑むがいい。でなければ訓練の意味がないからの。少なくとも彼奴には殺すつもりで相手をするように言うておる。油断して舐めてかかると本当に死ぬぞ?」
「何故場所を変えたんだ?」
「そんなもの、お主たちが本気で戦えば魔界の大地が変形してしまうからじゃ」
ニヤついた笑みを残し魔王が後方へと下がる。
それを確認した途端、擬似エドアールは抜刀した長刀から横薙ぎの斬撃を放つ。それはあまりにも速く、意識してなければ抜刀すら見えなかっただろう。
「受けずに飛べぇぇっー!」
勇者レインの言葉に反応出来た数人とこの技を知っていた者が即座に反応し、上空へとジャンプし、それを躱す。
対照的に斬撃を受け止めようとアルザスとクロが自らの獲物を構える。
《居合・円月剣》
斬撃の及ぶ範囲は数キロにも及ぶ神速の広範囲斬撃。
予め予見してなければ、躱すことは愚か受けることすら厳しい程だ。並の防具では防ぎきることは叶わず、両断されてしまうだろう。
クロとアルザスは、何とか両断は免れたものの、踏ん張りが利かずに遥か後方へと弾き飛ばされる。
唯一反応出来なかった風神セリーヌはあろうことかその身体を真っ二つにされて⋯⋯その場から消えた。
えっ、一体何が?
「本気でやらねば全滅するぞ」
勇者レインが使役ドールであるミュレイとミュライを召喚する。
剣姫リグとセイリュウが2人並んで特攻する。音速に迫る両名の渾身の突きをエドアールは、抜刀した長刀の柄で難なく受け止める。
攻防の衝撃に堪えきれなくなった辺り一帯の大地がヒビ割れ、爆ぜる。
爆発による粉塵で視界の塞がれたエドアールへと一筋の落雷が落とされた。
《聖剣乱舞》
まるで流星が如く、剣の形に光輝く無数のそれがエドアールを襲う。その数は数えるのも億劫なほどに上空から狙いを定め、一斉に降り注ぐ。
セイリュウの転移によりいつの間にか、後方へと移動していた2人が追撃の攻撃を穿つ。
《
2人の息の合った連携技が炸裂する。
放たれた2つの光の閃撃が絡み合い、その太さ、勢いを倍加させエドアールを射抜く。
そして、少しの間静けさが訪れる。しかし、誰1人これで終わるとは思っていなかった。粉塵が舞い上がり、当の本人の安否は不明は分からない。不気味なまでの静けさが逆に緊張を強いられる。
「右側よっ!」
《居合・閃》
先程の2人の閃撃の数倍はあろうかと言う膨大な威力とサイズの極太の光の線が皆を襲う。
《障壁》
「ユウ殿!」
ここからは参戦させて貰うぜって、結構な威力だな、ゴリゴリとMPが削られていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます