第357話: ナターシャとの死闘
身体をバラバラにされて死んだはずの私は邪神の加護を受けて再び復活を遂げる。
なんてね、自分で言ってて変な感じ。
「何故、お前は生きている」
「バラバラにされたのも戻っている⋯まさか、不死か?」
声が聞こえたかと思えば、目蓋の隙間から僅かに光が差し込む。どうやら、魂だけの真っ暗な世界から現実の世界へと戻って来たみたい。
ゆっくりと目蓋を開けると眼前の光景に一瞬言葉を失うも、すぐに陥っている事態を受け入れた。だって、目の前の世界が色素のないものに様変わりしていたのだから。
目が変になったのではなく、私自身が全く別の存在になったのだと理解した。自分で言うのもあれだけど、私は割と冷静な方だと自負してる。だけど、この落ち着き用はいつもとは違う気がする。まるで自分が自分ではないみたいに。
一度死んだ私は文字通り、邪神により全く別物の私へと造り替えられたのだろう。
物思いに耽っていた私へと魔王が飛び掛かり、その剛腕の拳を振り下ろす様をゆっくりと凝視する。
目の前の光景がまるでスローモーションのように流れている。
ゆっくりと振り下ろされるそれをするりと避けると、そのまま少しだけ離れていたナターシャに近寄り、いつの間にか忍ばせていた毒ナイフをそのキレイな額へと突き立てる。
先程の魔王の速度から想定するに相当なスピードが出ているはず。
案の定、さしものナターシャもそれを防ぐことは叶わず、突き刺さる⋯⋯はずだった。
毒ナイフはナターシャが事前に張っていた障壁に阻まれてしまった。
ふうん、あれは物理攻撃をある程度無効化してくれる物理障壁ね⋯って、なんで、そんなこと分かるのだろうか。眼を凝らすと相手が発動している魔術の類の情報が頭の中へと入って来る。
更に目を凝らせば、障壁の行き届いていない場所を見つけた。
そこを目掛け、ピンポイントで首の裏筋へと毒ナイフを突き立てた。
多少抵抗はあったものの、今度は障壁に邪魔されることなく、突き刺さる。
背後から魔王が放った地雷震が遅い来るも、フワリと躱すと、跳躍し、胸元目掛け渾身の正拳突きをお見舞いする。
魔王は、その衝撃で背後の岩肌を破壊しながらもスピードを落とす事なくやがて見えなくなった。
圧倒的なまでのパワーにスピード。それに状況把握能力。もはや化け物だね。だけど、魔術は全く使えなくなっている。でもこれだけデタラメな強さなら魔術は必要ないのか。
「グッ⋯化け物か」
ナターシャは毒ナイフを抜き取ると、すぐに傷の手当てを始める。同時に四方に四体の炎の化身を召喚する。
《
流石に首を刺しただけじゃ死なないか。
あの周りの暑そうなのは何だろう。
なになに、近付く輩全てを灰燼に帰す
現状、魔術の使えない私は近接攻撃しか手立てがない。だけど、近付くと一瞬で灰にされる。あの様子だと飛び道具もすぐに溶解されそうだしね。一見して今の私には攻略不可能に思えるけど、その化身には致命的な弱点があるみたい。術者なら知ってるのかな?
術者の四方を守る化身。だけど、一箇所だけその範疇にない場所がある。
ナターシャの頭上へと移動する。
ナターシャは相変わらず、私の動きに対して遅れて反応している。そんなんじゃ遅過ぎだよ。
脳天から、先程の強烈な正拳突きをお見舞いする。もう邪魔者はいない。確実に首の骨を折れるであろう私の一撃は、見事に狙い通りの場所へと命中した。
《
ナターシャに攻撃を浴びせた瞬間、凄まじい力の反撃を喰らい、今度は私が飛ばされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます